エピソードIX エンデュランス・ホール強襲夜行作戦 後編
ブリッツはもっとも洗練された最先端の機体として名をはせた。そしていまでは白き死神と呼ばれるほどにまでなった。
しかし、今度重なるほかの機体の進化、二社連盟による機体の量産などにより、相対的に見たブリッツの力というものはどんどん低迷している。
いったいこの後に待ち受ける試練とは何なのだろうか。ブリッツはいったいどこまで生き続ける伝説なのだろうか。
それは誰も知らない。ただ、今はその伝説はすたれることのないものだった。
その後も順調に防衛部隊を破壊し、残るは施設のみとなったようだ。いったんここで仮設キャンプを開き、皆とまとまった。
「フォーデン、サム、今日はどうでした?」
「もうため口でいい。今まで長らく一緒にやってきたじゃないか。まあ、言うとしたらマーキュリーはほんとに近接の操縦がうまいな。」
「サムもそう思うか?奇遇だな。私もそう思う。」
「いやぁ、ありがとうございます。剣とかランスとかを餓鬼の頃によくやってたんですよ。」
「そうか。さすがだな。」
和気藹々とした中飲むココアは最高だ。そしてフロストバイトと、マーキュリーのブリッツの見ていると、マーキュリーが続けた。
「ところで、エースはあの三人と面識が?」
そうだった。まったく説明していないどころか、あれはトラファルガーと私しか知らない。それくらい前のことだ。
「あれは私が配属されて一年くらいの頃だったな。今はやっていないが、運動祭というものがあってな。そこでいろいろな競技をするわけだが、その日に限って反企業勢力がきやがった。
それでトラブルを一緒に乗り越えたのがあの三人なわけ。その後もバイクレースとかをしてたさ。あの頃の原子力光線銃が今私の寮の屋根裏にある。」
「原子力光線銃って何があった?」
「運動祭の前に拾ったのさ。それでそれが何かに役立つかもともっていったわけなんだが、まさかこんなことになるなんて想像が全くつかなかったよ。」
「そうだったのか。そいつは初耳だな。」
そうして運動祭について話していると、キャリアー部隊が機体を四機連れてきた。ガローニ、セレヴェ、エリシアの機体と、改修されたブリッツだった。ガトリングではなく箱が四つついてるのだが。なんだあれ。
『キャリアー部隊現着!』
私の無線に声が入った。
「ご苦労。キャリアー部隊は機体を置いて帰ってくれ。ところで、なんであの三人を連れてきた?あとブリッツの後ろのあの箱は何だ?」
『一応兵力にはなるということでこの三人を連れてきました。機体は修復済みです。それと、あの箱の中にガトリングが入ってるんですよ。あと、言い忘れてましたが、緊急でアルテミス、ローマ、セイレンが
くるみたいです。』
驚いた。セイレンは今回来ないのでは?まあいい。来るだけにぎやかになるな。
「了解した。待機しておく。」
『それでは帰還します。』
そういってキャリアー部隊は撤退していった。
純白の機体は美しい。もともとの形がよくわかる。前のオプション付きもよかったが、なかなかにいい。
「おーい!エース!」
「ガローニ!こっちだ!!」
ガローニが手を振ってくれた。私も振り返しながら片手でココアを飲む。
つるっ…
あっ…
一瞬でココアが私のつま先に命中した。
入れたてだった。もったいないよりももっと大きな問題があった。
ビシャッ!!
「アッツ!!!!!!くそがっ!!!!!!」
「おいエース大丈夫か!?」
「言ってられるか!!!!早く水持ってきてくれ!!!!」
マーキュリーは手に持ってる水をかけてくれた。ああ、ましになった。ギリギリやけどは免れたが、こんな思いは二度とごめんだ。ながらスマホなんかよりもずっとやばい。ながらココアは。
「まあ気を付けておけよ。こんなことはそうそうない。」
「そりゃそうでしょうね。」
苦笑を浮かべていると、もうガローニがすぐ目の前にいた。
「さっき叫び声が聞こえたが大丈夫か?」
「全く大丈夫じゃなかったよ。ココアが手から滑り落ちて足にかかってやけどしかけた。」
「そいつは気の毒に。」
「まあギリギリやけどは免れたが、気を付けたいものだな。」
私はガローニと雑談しながら、あの三人を待った。そしてしばらくすると、またキャリアーが到着した。
『キャリアー部隊現着!』
「ご苦労様!」
その後アルテミス、ローマ、セイレンと合流し、私はフォーデンと見張りについて、機体に乗って警備していた。
「エース君、君には何か特別な才能があると思う。この機体をそこまで短時間で使いこなすとは。」
「言えたまたまですよ。相性が良かっただけです。」
夜空に輝く星を見ながら、二機のブレードはまぶしく光る。
「ところで、何でブリッツで警備をしないんだ?あいつの方がスペックがいいのだろう?」
ストラディヴァリウスは銃を持っていない左手で指をさした。私のブリッツに向けて。
「万が一ですよ。あの機体がやられたら作戦の続行は厳しくなります。」
「そうか。確かにな。」
明日あたりには完全な満月となるであろう月がそこには浮かんでいた。青く緑の淵がきれいに輪をなすものだった。フロストバイト。こいつはいったい何なんだ?果たしてこいつは第二世代なのか?
「ところでこの機体の詳細って知ってたりします?」
「え?新型機じゃないのか?私は知らないぞ?」
「本当ですか…」
まさかフロストバイトは本当に極秘に開発されたに違いない。だが何かが合わない。それは何だ?
謎の機体は未だに謎のままだった。
そして翌日。もう朝日はのぼり、明るく輝いていた。
「無事何事もなかったですね。」
「そうだな。一応点検はしておけよ。」
私はキャリアー部隊を呼んでブリッツの点検を始めた。
スタビライザー、サスペンション系統はいいのだが、どうやら電気系統が何か問題があるみたいだ。見てみよう。
私は機体の頭部にある集積回路を確認してみた。すると、普通じゃ考えられないものがそこにへばりついていた。
パラサイトモジュールだ。サイクロン社の製品だな。ガローニの仕業とは思えない。それに、ほかの二名のやり方でもない。おそらくレーダーに映らないようにこっそりテントに侵入して付けたんだな。
ここに付いているとしたなら他のところに付いている可能性も否めない。急いで調べよう。でないと期待が動かなくなる可能性がある。
とりあえず落ち着いて、導電する箇所をすべて調べてみた結果、腰の部分にもついていた。やはりかなり奥のヒューズボックスに放り込んだんだな。
ほかにも冷却系統も異常があるようで、調べたが、どうやらラジエーターフィンにモジュールが張り付いていた、そして全部はいでいると、もうボックス満杯になるほどついていた。これはかなり面倒なことになったかもしれない。
急いで期待に乗り込み、上空に上昇して機体をオーバーロードさせた。機体温度を二万度まで上げると、中からどろどろと解けた金属が出てきた。そして五分後、異常個所が消えたことを確認できた。
ガトリング装備にもこびりついていたかもしれないものもこれで落ちただろう。さて、今日はまだ時間がある、急いで機体を整備をしよう。
そして道具箱を取り、整備していると、後ろに銃口が当たった感覚があった。
「わりぃな。これも依頼なんでねぇ。」
どうやら刺客が来たようだ。ほかのメンツは何をしてるんだ?ブリッツのミラーを確認すると、麻酔銃でやられている。
落ち着け。
まずは相手の銃を奪うぞ。
私は振り返ると見せかけて制服を翻した。
相手が銃を撃つが、制服は防弾だ。私は急いで相手のピストルの上の部分を取ってそのまま手をはたいてピストルを落とさせ、そのままマガジンを抜いた。
相手は私を蹴り飛ばした。足の裏が肩に当たる。しかし、マガジンを蹴り飛ばしておいたおかげで、相手はどこに行ったかを探している。
今だ。私は横にある工具箱の中からネイルガンを出し、相手が背を向けているところに十発くらい放った。今使っているのは金属も貫通して固定するようのものだ。無論、相手の背中に深く刺さった。
とどめだ。私はすねを蹴り飛ばし、振り向いてきたと同時に脳天に向けてネイルガンを放った。
バチン!!
制服が汚い血で汚れてしまった。あとできれいにしないとな。まったく、パイロットを殺そうなんてどうかしてるな。
私はすぐにネイルガンを掃除し、ブリッツの脚部に収納されている救急パックの中にある麻酔覚ましを人数分取り出して全員に注射した。みんな何かをしゃべろうとしているが、まだろれつが回っていないようだった。
「jyguyf$#&%tr%&fty6$56!(なにがあったんだ?!エース!)」
「え?ナン食べてたかって?食ってるわけないだろ。」
「"#ug&'TR67'T67F&('&%67T6%HG&t(違うって、なにがあったんだって聞いたんだ!)」
「アルテミス頼むぞ。私はナンを食ってないって。」
「nu'7y7y()Y71t6'(T!&'6R'&!'FQjop…」
これが何時間か続いた。そうしてだんだんまともになる皆を見ながら私はブリッツの点検をした。
そしてみんなのろれつが治るころに私はあの”スーパーウルトラハイパーガチマジ本気でデンジャラスなココア”を入れて、机に座って、マニュアル片手に飲んでいた。今度はこぼせない。
そしてしばらくしていると、セイレンが私の前の席に座った。
「エース!大丈夫だった?」
「ああセイレン。なんとか大丈夫だった
「制服が血だらけね。いったい何をしたの?私はみんなと話していたら突然みんなが倒れ始めて…」
「そうだったのか。おそらくそれをやった奴は私が殺した。」
あっ…やべっ。かたずけるのを忘れてた。あんな釘打ちされまくった死体をだれが見たい?誰も見たくないだろう。
「そうだったんだ。その遺体は?もう片付けた?」
「まだだ。あんなの見たら君の妹かそのお連れさんもひっくり返るぞ?」
「そうね。エリシアは昔人身事故に死体を見たことあるから大丈夫だと思うけど、セレヴェさんはね…どうかわからないな。」
「そうだな。人身事故って電車の?」
「そう。三回も見ててもう慣れたって本人も言ってたし、それにほかにもいろいろあったと思うし。」
「そいつは興味深いな。」
そういって少々苦笑が浮かぶ中、考えていた。あれどうしようか。
「片づけ手伝おうか?」
「ホントか?なら一緒にやるか。」
私達は臨時で置いてた折り畳みの机に手をついて立ち上がり、よっこらせと背中を伸ばした。そしてブリッツの点検中のブリッツの裏に言って死体を片付けようとしたら…
死体がなく、その代わりにスコップ持ったローマ、エリシア、アルテミス、ホークモンが立っていた。
「ここにおいてた死体はどうした?」
「これのことか?」
ローマは地面に指をさした。ありがとう。埋めたんだな。
「そうだ。中の大事そうなものはすべて調べたか?」
「もちろんさ。大事そうなものはホークモンが避けてくれた。」
ホークモンの足元を見ると、何やら箱があった。おそらくこの中にまとめたのだろう。
「それが遺品箱か?」
「まあそうだな。こいつの中に金目のものと、どこの雇われかがわかるものを入れておいた。サイクロン社の裏幹部のお雇いだとよ。それに、いつ行くんだ?
もうそろそろエンデュランス・ホールに行ったほうがいいんじゃないのか?」
「夜に奇襲をかける。もう少し待っててくれ。」
「ところでエースさん、私達ってこの後何するんですか?」
「エリシア達には道案内をしてもらいたい。施設内の情報は私たちは持っているものの、定かかといわれると口を紡がざるを得ない。そこで君たちにお願いしたい。」
「私はあまり知りませんが、上層部の案内ならできますよ。」
「私は元幹部だった。管理システムの会場と、下層部の案内は任せろ。」
話を聞いたガローニが出てきた。なかなか頼りになる。
「私は中層の案内ならできるわ。防衛システムの場所と、敵の出る場所は知ってるわ。」
その横からセレヴェさんも出てきた。
「これで案内はそろったな!あとはいくだけだな!」
「そうだなローマ。私のキャノンも唸るころだろう。」
「敵の把握なら私に任せろ。このカメラがあればどこにいるかはわかる。」
そして盛り上がっていると、サムとフォーデンも来た。
「シンガリは俺らに任せてくれ。フォーデンとは長い仲だ。」
「私は前衛をやらせてもらう。そのためのランスさ。全員焼き鳥にしてやんよ。」
マーキュリーもあの”スーパーウルトラハイパーガチマジ本気でデンジャラスなココア”を片手に来た。なかなかご機嫌なようだな。
「私はセイレンとともにメインで施設の破壊をする。火力勝負なら十六問のガトリングに任せてくれ。」
さて、チームメンバーが全員揃ったところで、円陣でも組むか。
「さあ円陣くんで盛り上げていこう。」
私は声を上げた。
「今日!私たちは勝って帰るぞ!!」
『たとえそれが絶望の淵でも!』
「いぃぃくぞぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
『オォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!』
チームワークばっちりな円陣には迫力がある。これで何でも乗り切れそうだ。さあ急いで準備を済ませるとしよう。私とマーキュリーは急いでブリッツの調整及びランディングギア油圧点検を行い、
ホークモン、サム、フォーデンは旧式マキシマムランカーの点検、エリシア、セレヴェ、ガローニは共同でテントの片づけと期待の点検。そしてアルテミス、ローマ、セイレンは全機体のチェックを行った。
そして私たち全員の作業が終わるころ、作戦開始にはもってこいの時間となった。行くとしようか。全員のそろったファルコンズ。はじめての出撃だ。この光景をトラファルガーにも見せてやりたいものだ。
「全員無線の準備はいいか?」
『問題ないよ!!』
『もちろんよ!任せとけ!』
『スタンバイオッケーだ!!』
『キャノン出力よし。無線よし。問題ない!!いけるぞ!!』
『こちらフォーデン。サム、ホークモンの準備は整った。ブレードのキックをお見舞いしてやる。』
『なんの!私のパルスブレードで一刀両断よぉ!!』
『二人とも調子が良くて何よりだ。コーマットV3、エンゲージ!!』
『こちらエリシア。問題なし。』
『セレヴェ、行けるわ。』
『いつでも突っ切れるぞ!』
全員よさそうだ。行くとしよう。
「こちらエース!本部に伝達!作戦行動開始!!」
『こちら本部。了解。手数を活かして戦え。こんだけ贅沢な舞台はほかにないぞ?』
「了解!!」
私はスラスターを吹かした。それに続いて、皆、スラスターを吹かした。
ブリッツの甲高くも美しい高出力ジェネレーターの響きや、
ソーラーナイトやストラディヴァリウスのような奥深くも美しい瞬発型ジェネレーターの音、
更にはこの世の生んだ最も美しい音を放つといわれるコーマットのニュークリアガスタービンジェネレーターの音など、多くの音が響く。
「それじゃあこの空へはばたくとしようか!」
『いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!』
そして一気に飛び立ち、編隊を組んだ。旧式から社外製まで、多くの機体が並ぶ豪華な部隊はこれが世界初だろう。
そして飛ぶこと数十分、そこには大きな穴があった。あとはこの施設を破壊するだけだ。
さあ、メインの道に入る。ここからは彼、彼女らの案内が頼みだ。
「エリシア、案内を頼む。」
私達はライトを照らし、歩きながら中を進んでいった。横に三機、たてはギリギリコーマットが入れるくらいの大きさだ。
『分かった。今ナビゲーションをもとに主要の発電、バリア展開装置をマークしたよ。』
『こちらセレヴェ。敵の出てくると思われるハッチと防衛システムの場所、システム監督所とここの統合管理用データサーバーの場所をマークしたわ。』
「仕事が速くて助かる。ガローニは何を今している?」
『今防衛システムと監視カメラ、データ等の乗っ取りを行った。全部すり替えておいたから、護衛兵器に見つかりさえしなければ問題ない。』
「ナイスだ。」
そしてナビゲーションに沿って進んでいると、ホークモンが何かを発見したようだ。
『こんなところにオイルの漏れて焼けた跡がある。何があるんだ?今カメラで確認する。』
いやな予感がする。
『今確認した。どうやらガトリング式防衛システムがあるようだ。このままいっていたら、粉砕されていたかもな。』
「ありがとう。別のルートから迂回する。」
危なかった。一歩ミスればアウトレイジと合金の特性あらびきが完成するところだった。
私達はまるで洞窟探検家のように、施設のあちらこちらに爆弾を仕掛けた。いつでも一斉起爆できるように。
そして統合管理システムがあるところまですんなり歩いてきた。こんなのはお散歩レベルでしかない。しかし、ここからが勝負ともいえる。これが終わったら敵が来る。その時にはもう落下し終わって
中層部に居なければならない。ミスしたら大変なことになる。今度こそ例のあいびきが完成してしまうだろう。
「ここが統合管理システムの場所だ。ここに爆弾を仕掛けたら、向こうにあるホール内部への入り口に飛び込んで急降下。そして高度マイナス五十キロメートルにある三番口に入る。オッケーか?」
『一応大丈夫だ。問題ない。』
『私らも問題ないわ。』
「ならよし。やるとしよう。エリシア、扉を開けてくれ。」
『分かった。』
そして扉を開けると、中にはずらりとアームドスーツ並みの大きさのサーバーが並んでいた。多すぎる。こうなればガトリングを使ったほうがよさそうだ。
「みんな下がっててくれ。これは多すぎる。ガトリングで粉砕する。だからもう向こうの入り口で待機してくれ。ただ、絶対に警報が鳴るまでに下りないでくれ。頼んだ。」
『了解!』
そして私は設定画面からガトリングの入っていたケースをパージした。
ガラン!と大きな音を立てて金属製のケースは落ち、中からは高威力ガトリングを十六問装備した鬼畜なものが出てきた。
展開するとまるで天使の翼だ。破壊天使だが。
「いくぞ!!」
私はトリガーを引いた。
そして通路一面に響く轟音とともにサーバーがバラバラになる。
ドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!
そして一面が更地になったところで、元に戻していた時、警報が鳴った。
「いまだ降りろ!!」
彼らは一斉に飛び降りた。私もフルスロットルで向かう。ただ、入り口の扉が閉まりそうだ!急げ!!
そしてスロットル全開で扉を潜り抜けた。
ギリギリだった。
装備と装備がかすれる音がした。そしてそのまま一気に急降下し、高度を着々と下げた。
そして高度四十五キロで減速し、そのまま三番口に侵入した。そこにはみんなが待っていた。
『大丈夫か?』
「ああ。なんとか。五十キロって意外とすぐだな。」
『そりゃあスラスター付きですから。ロケットの逆だよ。ほとんど。』
「そうだな。それじゃあ続けるとしよう。」
機体装備を自動点検し、異常がないことを確認。問題なく行けそうだ。
『次は私が案内する。中層部では敵の監督所がある。そこをつぶせば無防備になる。こっちだ。付いてきてくれ。』
『私はとりあえずまた敵の出てくる場所をメモしておくわね。さっき警報が鳴ったから警戒したほうがいいわ。』
「二人とも助かる。とりあえず、ナビゲーションに沿って進むぞ。」
私達はもうスラスターを吹かして進み始めた。もう警報が鳴ってしまったら後はこのまま急いで破壊しなければならない。今おそらく場所の把握に精一杯だろう。
そしてひたすらに進んでいると、発電所らしき場所に到着した。エネルギーの充填に関する施設に違いない。一応爆弾を設置していこう。
「ガローニ、ここは何だ?」
『おっ!こいつはでかいな!これを破壊すればホールのセキュリティー及びシステム全般がいかれる。もちろん下の防衛兵器もだ。こんなところにあったとは。』
『ならちゃっちゃと破壊しちゃいましょうや!』
「そうだな。」
私はまたガトリングを起動して、ここの発電所を薙ぎ払った。火花を散らしながら燃えて落ちた。そして破壊した瞬間、ブレーカーが全て落ちた。真っ暗だ。
「ホークモン、ここからはあなたに頼るほかなさそうだ。ブリッツのカメラにも限界がある。」
『任せてくれ。私がこの先のナビゲートをする。』
そして先頭を交代し、また進み始めた。エンジン音が響く中、炎がきらめく。隔壁をぶち破りながらひたすら進んだ。ここまで来て敵とすれ違わないとは。さすがだな。システムの乗っ取りがしっかりできている。
そして最短安全なルートをたどり、監督所に到着した。
「隔壁を開けてくれ。」
『了解!』
そしてガトリングを構えながら額壁が開くと、驚きの光景が広がっていた。
なんと、人の代わりにアームドスーツがやっているのだ。少し意外だったが、まあいい。作戦には関係ない。
ガトリングで監督所を薙ぎ払った。敵のアームドスーツごと。そして重要な設備等はすべて破壊した。すると、警報は止み、防衛システムが死んだようだった。
そして今度は来た道を戻り、三番口から出て、垂直降下カタパルトで一気に降りた。
高度百五十キロをたった三分未満で下るこのカタパルトは恐ろしい。本当にロケットの逆版だな。こりゃあ。
そして下に下っていると下に例の護衛システムが見えてきた。全高十二キロメートルの巨大砲台だ。これのせいで核爆弾が打ち込めない。これを破壊すればこのミッションは終わりだ。
「着いたようだ。このまま砲台のジョイント部を狙って倒す。そうすればこの任務もおしまいだ。」
『それにしてもおかしいな。こんだけやってて誰も敵が出ないなんてことあるか?』
『普通はねえな。何かがおかしい。』
『二人もそう思うか。まあ過去の体験談かもしれないが、これは嫌な予感がする。』
『マキシマムランカー全員がこれだけ言うとは。何かあるかもな。』
『まあでも破壊しちゃいましょうや!』
『やらなきゃ終わらねぇからな。』
『ならやりましょうよ!』
「そうだな。ならやるか。」
私はガトリングを展開し、ジョイント部まで飛んだ。そしてそこで滞空し、ガトリングを構えた。
「いくぞ!!」
そしてトリガーとともに空を裂くガトリングの音とともにジョイント部を破壊した。なかなか固いが、もうそろそろ内部に届きそうだ。
『ガトリングの残弾数は大丈夫か?』
「足りそうだ。」
『こっちは壊滅砲チャージできたけど、どうする?』
「本当か?アルテミス?ならぶっ放してくれ。」
『巻き込まれて死ぬなよ。』
「任せとけ。」
そうして私はガトリングを少し離れて売っていると、残弾がなくなった。しかし、十分ともいえるほどに傾いた。そこにとどめを刺すように、壊滅砲が砲台に向いている。
『いくぞ!!発射ァ!!』
そしてアルテミスとローマが同時に壊滅砲を放った。
青い閃光が交わり、ジョイントに命中する。
ドゴーーーン!!!!!!
大きな土埃とともに砲台は落ちた。
「ミッション完了だ。今核爆弾の合図をする。全員順番にカタパルトに乗ってくれ。」
『了解だ。』
そしてガローニ、エリシア、セレヴェ、フォーデン、サム、ホークモンをそれぞれ地上に送り、私たちは残ってビーコンの準備をした。そして準備できて、起動した。
そして、ローマを垂直カタパルトに乗せ、射出したその時だった。
上から機体が落ちてきた。敵の防衛システムだ。
『排除対象を確認。執行する。』
まずいことになった。アレスだ。重量機の中で最も強いとされる護衛システムだ。生半可な攻撃は効かない。しかも武装は高エネルギー兵器だらけだ。
「くそっ!面倒なことになった!あと五分で脱出しなければならない!!」
『くそが、どえらい惨事になったな。やるぞ!』
『やるしかなさそうだな。やるとしよう。』
私はガトリングをパージし、ハンガーからライフルを持ち出した。
そして構えた瞬間、相手はもう動き出した。鋭いレーザーランスの突きが来た。
「なに!?」
危なかった。しかし隙ができたようだ。そこに一気に飛び込み、後ろに灼熱の鉄拳をぶち込んだ。
ガンッ!!
カッチカチだ。少しの装甲は破壊したが、こいつは固い。そしてまた相手はこちらに振り返ってくる。そしてエネルギー兵器を放ってくる。
私はそれらをかわして、ライフルをカメラアイに向けてはなった。
パリン!
どうやら命中したようだ。そして私がひきつけている間に、マーキュリーは鋭い突きをお見舞いした。
すると相手の右腕部は零れ落ちた。今のうちに畳み込もうとしたその時…
敵はアサルトブラストを起動し、私たちを吹き飛ばした。
「くそっ!まずい、機関部が損傷した!機動力が落ちた!」
『こっちもだ!サブジェネレーター破損!腕部の出力が切れた!!』
『二人そろって満身創痍か。私がとどめを刺す。その間に急いで出力復元をしろ!!』
「何をする気だ!」
『君らの援護をする!』
そうしてアルテミスは近接格闘に持ち込み、至近距離でレーザーライフルをお見舞いした。そして原子力光線砲もお見舞いした。
そして相手がひるみ、畳みかけようとしたその時だった…
ガコン…バラバラ…
相手は何と外部の装甲をパージした。そして中からは高機動型と思われる機体が出てきた。
『何だあいつは!?』
「チャンスだ!攻撃を当てれば倒せる!!」
『分かっているが当たらない!それどころかアルテミスがピンチだ!!近接ではあいつは勝てない!!』
「まずい!!アルテミス!!引け!!」
私は急いでライフルを相手に向かって撃つが、すさまじい機動性が相手にはあるようで当たらない。これはまずい。
脱出まで残り一分となった。もう逃げなければ。
「時間がまずい!急げ!!」
『言っても仕方ない!こうなったら…』
アルテミスは近接を挑みこんだ。そして一気にパルスフィールドを展開し、トラファルガーと同じく怠慢に持ち込んだ。
「アルテミス!!何をしている!!このままじゃ死ぬぞ!!」
『眩く輝き、桜の如く散る。それが人生だ!私が今引き寄せてる間に逃げろ!!』
くそっつ!!私は機体のエレベーターに乗り、一気に射出した。そしてマーキュリーも続いた。そしてアルテミスの無線がまだ私の無線に入る。
地上に上がった。アルテミスの無線はもう聞こえない。
そして地上に出た瞬間、上から核爆弾が落ちていった。
「逃げろ!!マーキュリー!!」
そして私たちはオーバードライブを起動し急いで離脱した。
ドッゴーーーーーーン!!!!!!!!!!!!
そして私たちは押し寄せる爆風の中を突き進み、みんなのいるセーフティーゾーンに到着した。そして次の瞬間、頭上を爆風が通過していった。
『もう一人はどうした?』
「分からない。だが、彼は残って最後まで防衛システムと戦った。」
『そうか。』
「だがもしかしたらパルスフィールドを展開してたから、生き残っているかもしれない。」
『絶望的だがな。』
「だがわからない。」
そうもしている間に爆風が収まったようだ。私はすぐにホールに向かい、急いで最下層まで降下した。そして五分後、最下層に到着した。
そこには焼け焦げて、ばらばらになった防衛システムと、焦げたブリッツがあった。私は急いでコックピットをこじ開けた。するとそこには頭から血を流しているアルテミスがいた。
私はコックピットを開けて、シートの横にある救急キットを出してアルテミスの方に乗り移りすぐに止血しようと試みた。
「エース…今までありがとよ…ちょっと厳しそうだ。」
「アルテミス!まだ死ぬなよ!!持ちこたえろ!!」
「そいつはどうかな…」
アルテミスは自分の足に指をさした。ジェネレーターを仕切る装甲部分が割れて足に刺さって出血していた。それもかなりだ。
「それにしても楽しかったな…今まで一緒に過ごした日々は…」
「まだ遺言を言うには早い!!」
そうして一生懸命止血していると、上からみんなが下りてきた。そしてマーキュリーとローマ、セイレンはコックピットからすぐに下りて私達のもとに来た。
「持ちこたえてください!アルテミス!」
「ああ…セイレン…今後のエースはよろしく頼んだ…」
「戯言言ってんじゃねぇ!!生きるぞ!!」
「そうだ。まだ死ぬには早い!」
「ローマにマーキュリー…いつもお前らは面白かったな…」
アルテミスは和やかの表情だった。私の手をまだ握っている。
「すまないな…皆…ああ…意識が…」
だんだん瞳に明かりがなくなってゆく。頼む、まだ死なないでくれ…!
「ごめん…な…またいつ…」
手を握る力が抜けた…う、嘘だろう…?アルテミス…
「アルテミス!アルテミス!!」
返事が返ってこない。目の明かりはもう灯っていない。
私はコックピットのディスプレイに膝をついた。一気に全身から力が抜けた。
「あ、ああ…」
またあの頃に感じた無力感を感じた。
…すまない。
「誰も悪くはない。彼は自分の任務を全うしたんだ…」
「だが、また彼も逝ってしまった。」
「…」
しばらくは重い沈黙が続いた。
『こちらキャリアー部隊。現在エンデュランス・ホールに向かっている。セーフティーゾーンにて合流せよ。』
「こちらエース。了解した。」
『何があった?』
「アトラス・シード・アルテミス、ブリッツ二号機とともに落ちました。」
『…っ。それは気の毒に。今回収班を向かわせる。』
「了解。」
私とローマで協力してアルテミスを運び出した。二十分以上かけて無事に上に運び出した。
また私たちは大事な仲間を一人失った。そして、満月が光っているころだった。今ちょうど真上にある。
そして、重い空気に包まれていたその時…
ガコン!!キュィーーーン!!
運び出して寝かせておいたブリッツが動き出した。一体全体どういうことだ!?
「アルテミスは死んだはずでは?!」
『死んだことは確認したはずだ!脈も脳波も二十分間止まったままだったぞ!』
「じゃあなんで動いているんだ!?」
『乗っ取られたか!?』
『んなわけあるか!』
『噓でしょ…!アルテミスさっき死んでましたよね!?』
『不謹慎だなぁ!だがそうだ!なんで今あいつは動いているんだ!?』
『ジェネレーターは破損している。メイン出力も死んでいるというのになぜ動く?』
「知るか!」
そうして動揺していると、落ちていた鉄板と石をブリッツは拾った。どうやら何かを伝えたいようだ。
そして数秒後、ブリッツは書き終えた。
"上昇してみてくれ”
それだけだった。
『空に上昇しろってか?エース、やってみてくれよ。私はごめんだが。』
「マーキュリーめ、ふざけたこと言いやがって、仕方ない、私がやってみる。」
私はスラスターを吹かしてひたすら上昇した。するとアウトレイジが共鳴し始めた。上がるにつれてだんだんと強く共鳴していった。
『よぉ!!エース!!また会えたな!!』
急にトラファルガーの声がコックピットから聞こえた。
「お前はトラファルガーなのか!?」
『そうだよ。今アルテミスが死んでこっちに来てるところだよ。』
「何でそれを知ってる?」
『上の世界で見てたぜ。なかなか無茶な作戦だったな。お疲れさん。』
「これは一体どういうことだ?」
『よくわからねぇ。でも周期的にアウトレイジが若干光る日があるらしいぜ。その翌日あたりには満月になる。そこでおんなじ現象が起こるらしいぜ?知らんけどこっちの科学者に聞いた。』
そして不思議な時を過ごすこと十分、もう時間のようだ。
『もうそろそろ時間みたいだぜ。それじゃあな!元気に頑張れよ!!』
「ありがとう。トラファルガー。」
そうして私は急降下し、みんなの元に戻った。そして戻った瞬間、ブリッツはまた倒れた。何だったんだ?あれは?
『何があった?』
「分からない。だがアウトレイジが関連してるのは間違いないようだ。」
『それで?誰かと話していたようだな。それは誰だ?』
「トラファルガーだ。あの死んだな。あいつ曰くアウトレジが若干光る翌日の満月に同じ現象が起こるとさ。一応コックピット内の共鳴と音声は録音できた。」
『マジか。ならあとで聞いてるとしよう。』
その後、本部にこのことを話したのち、キャリアーに乗って支部ではなく久しぶりに本部に帰った。フロストバイトも持ち帰り、本部はまた少しにぎやかになった。
ブリッツは今回の件で二機もやられたことをきっかけに、IPX-MK.IIへの移行を図ることが決定した。ブリッツMK.IIだ。
そしてトラファルガーと会ってから半年後…
改修が終了し、新しいブリッツへと変わった。耐久度を上げるための増加装甲に増設したスラスター。そして大幅強化されたジェネレーターを搭載。装甲可変機構を用いることで空気抵抗を減らした。
さらには耐熱性を高めるために開発されたコーティング、リーパーコートを施したことで、機体は少し灰色となった。また、リアスカートも延長され、より強そうな印象を与える気体となった。
冷却版の数も増え、対アサルトアーマー、アサルトブラスト機構を用いることも決定した。また新しい兆しをこの機体は表した。
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