エピソードVII ファルコンズの悲劇

ブリッツ。それは間違いなく最強のアームドスーツといっても間違いないだろう。

しかし、その最強が恐竜が敗れるように、いつ敗れるかは誰も知らない。それどころか誰一人として予測などできない。

しかし予兆というのは不思議である。いつか来る危機を事前に察知することができるのだから。


無事基地に到着し、セイレンも起きて、フォーデンも順調にしていた。しかし気がかりといえば気がかりなことが今回のこの戦いでは起こった。私を完全に封じ込めるために作ったと思われる武装。

そして今までにはない高威力のパイルバンカー。すべてが今まではないものだった。しかしそんなことは偶然出会ったと言いたいところであるが、事実としてそのような対策が練られているということには変わりない。

今後が心配である。それに最近はアルテミスたちとも話せていない。それもそのはず、現在彼は別支部にそれぞれいるのだから。マキシマムランカーのパイロットたちや、セイレンといるのももちろん退屈なわけではない。

しかし、幼いころから戯れてきた彼らがいないのもなんともさみしいのである。ああ。それにしてもブリッツは不変の美しさがある。何か可能性にあふれるような、そんな何かがこの機体にはある。これは何だろうか。

次戦の計画書を前に私はボケっとたたずむ。何とも言えない気持ちだ。これでも大佐か?まあいい。またこなしてはまたこなす。ただそれだけの話だ。終わることがあるのだろうか。

いや、いつかきっとあるさ。何かの糸口が。それが見つかるまでは考えるんだ。何がどうあろうとも。たとえそれがいばらの道だとしても。

できるできないじゃない。やるかやらないかだ。

「エース、私たちそろそろ行かなきゃいけないんじゃない?」

私は手に持っていた一枚の計画表を見ながら彼女と話した。

「そうだな。だが、何か嫌なことが起こる予感がする。」

「それって?」

私は計画表から目を放し、彼女の眼を見る。

「なんでもない。」

再び私はブリッツに向かって歩みだした。それにしても今回の作戦はアルテミス、トラファルガーが来るそうだ。何か大きなことが必ず起こる。このメンツの時は。よりによって敵陣の工場及び資源プラントの強襲とは。

とてつもなく面倒な任務を押し付けられたことだ。大体守りも硬かろう。それに、ブリッツ三機で行ったとしても勝てる確率は低い、それに、相手が対策を打っていないはずがない。つまり、結構まずいということだ。

さらに遠方に位置しているため、支援にも期待できない。だがやると決まってはやるしかない。あとは計画表に倣って進めるだけだ。

まず初めに私は別の支部に移る必要があるようで、二人のいる別支部へ一時的に移ることとなった。

そうしてボケっと次の支部について考えていて、書類から目を離した時、何かの違和感を覚えた。そして私は彼女のデッキをふと見上げた。

というかなんだあれは。なんかセイレンの機体であろう物が入れ替わっているのだが。カラーリングが私の部隊になっているんだが。ってちょっと待てよ、あれは…

私の大佐のメダルと同じメダル章じゃないか!

「じゃーん!これエースとまた会えたからブリッツのカラーとそろえようと思って。」

横に来たセイレンに驚いた。

「そうだったのか。だけどごめんな。今回の作戦は一緒にはなれない。」

「いいのよ。また今度。」

彼女は優しい。いつも思ってくれる。それなのに私は忙しいという首輪に縛られている。悲しいものである。

「気にしなくていい。私は待っているよ。」

暖かい表情になごんだ。

「ありがとう。行ってくる」

私は自分の機体のラダーを上った。仕事の時間だ。ブリッツ。行くとしよう。

またハイパーカタパルトに乗り、二人のいる支部へ向かった。

「ハイパーパーパス起動!」

そのまま超高速で移動した。そして数秒後、数万キロ先の支部の手前に到着した。本部と比べて最新設備に恵まれている。

『A-3、三番入場カタパルト、電磁ロック起動。入場及び接合許可を待て。』

「カタパルト管制塔、こちらIPX-MK.I、セーヴェル・ブリッツバイエース、A-3入場する。」

「IPX-MK.I、セーヴェル・ブリッツバイエース、入場を許可する。」

私は脚部の足の裏の電磁ロックを起動し、着陸フォーメーションを整えそのまま入場の準備をした。

そして足先のロックを順番にカタパルトに着陸させた。だが、驚いたのはそのあとだ。インディバル・パーシュート本社とは違い、完全な統合化が図られている。デッキからカタパルトまではすべて自動輸送になっていた。

明らかな近代化が図られており、大違いだった。そしてアルテミスの隣のデッキに移動させた。地下にも拠点があるようで、鉄壁の要塞になっていた。

『第三、第四デッキに整備班入ってください。』

『第三予備デッキに他部署の機体を収納。各員は注意せよ。』

私の機体についてようだ。私はそのままカタパルトレールに移動させられ、そのデッキに到着した。が、驚くことに機体が見えない。どういうことだ?そう思った次の瞬間、床の四角い部分が昇ってきて、私の機体が入った。

なんと、機体は床下格納となっていたのだ。しかも、何段にも重なっているようで、何十、いや、何百もの機体が収納されているようだった。

「よう!エース!元気だったか?俺は元気いっぱいだぜ。」

「私もだ。ところで、今回の作戦はだいぶ大規模な作戦のようだ。ブリーフィングがあるから、この後会議室に来てくれ。」

彼がまた計画書を渡してきた。同じものだった。私は今のうちに機体の荷物をまとめておいた。しかしそれにしても支部は活気に満ちている。それに、情報の統合化が本格的に進められている。

大佐として言うが、これは素晴らしい。統合管理システムの試験運用もここで行い、成功している。その成果がここに現れているといっても過言ではないほどに統合化がきっちりと進められている。

さて、会議室へと向かうか。広々としていていいが、ちょっと私には広すぎる。狭いところが好きな私には向かない。でも全面的にきれいである。そこからさらに歩いていくと会議室についた。

そしてそこにはすでにアルテミスとトラファルガーが座っていた。

「まもなくブリーフィングが始まる。電源を付けておいたほうがいい。」

何の電源かと思ったが、机を見るとそこにはブリーフィング用のPCが置いてあった。電源を入れると、数秒後、ほかのPCと同時に自動的に音声が流れ始めた。

『作戦概要を説明します。今回の作戦では二社同盟の保有する、資源プラント及び本部工場を破壊することが第一目標となっています。よって、今作戦においては、ハイパーパーパスを利用できる高性能機、ブリッツ

三機を用いて、相手の基地を強襲、および破壊を行います。この時、留意しておくべき点は二点あり、相手は高威力エレクトリックキャノンを保有しているため、回避を優先してください。さらに、

相手に防壁内にある発電ジェネレーターを破壊するには外部シールドごと破壊する必要があるため、アサルトアーマーでの撃破が有効となっています。今回の作戦は大きなリスクが伴います。

各員、奮闘して作戦行動に臨んでください。』

『ブリーフィング終了。』

今回は私を拘束したほどの威力を持つエレクトリックキャノンよりもさらに強いものだと思われる。苦戦を強いられるかもしれない。

そう思っていた時、横からトラファルガーが来て私の肩に手を置いた。

「やってみねぇとわかんねぇーな。な、アルテミス。」

そういうと座っていたアルテミスも立ち上がった。

「エレクトリックキャノンは君を拘束したと聞いたが、必ずしも当たるわけではない。一緒に頑張るか。」

彼もうなずき、私を見た。頼れるような鋭い目で。

「生きて帰るぞ。エース。」

「フラグはやめておけ。回収するのは私になるぞ。」

だが彼は笑いながらこう言う。

「アニメの見過ぎだ。眩く輝き、桜の如く散る。それが人生だ。」

言ってくれる。ろくにアニメなど見ていないが。というよりは仕事だ。やるしかないが、フラグを立てて生き残ったのは私以外いなかったはずだ。アルテミス。それが今回の犠牲者かもしれない。

「白けた顔してねぇで、そろそろ行く時間だぞ。仕事を始めようぜ。」

「そうだなトラファルガー。備品を整えておくとしようか。」

私達はまたデッキに歩き出し、自分の機体を整備した。特に問題はなさそうだ。霞掛かった白いバイザーもなんだか不満気だ。今日はがんあって仕事してもらおう。

いつもの仕事場になってきているこのコックピットももう慣れてきた。そのうちここで寝泊まりもしそうだ。それくらい快適なのだ。さてと、行くとするか。

『ブリッツのデッキ全出撃。電磁誘導カタパルトスタンバイ。A-1、2、3を開放。』

そのアナウンスの後、機体はレールに沿って自動で動き出し、そのまま各カタパルトに向かっていった。そしてトンネルを抜けて、表の本部出口へ出た。

『ブリッツ各機はブーストトランスミッションをニュートラルに移行。そのまま待機せよ。』

ミッションをニュートラルにしてそのまま待機した。そして横のカウントダウンバーを見た。

『ミッションを巡行に移行。5..4...3...2...1』

行くぞぉっ!!

『...0!!』

次の瞬間、すごい速度で打ち出され、相手の方向に風の矢となって向かっていった。その後、ハイパーパーパスを起動して、そのまま一直線に飛んで行った。

そして数秒後、敵の基地の百キロ前に到着した。

「エース、今回の作戦は大変なことになりそうだ。」

「そうだな。でも、やるしかない。」

そのままスラスターを吹かして相手のプラントに向かった。しかし…

金色の閃光が見えた。そして一瞬の間に私の腕に命中。機動不全に陥った。

「くそっ!右手がやられた!復旧にはあと数分かかる!」

「エース!隠れてろ!俺が行く!」

そういってトラファルガーは速度を上げるが、機体がエレクトリックキャノンに直撃した。

「くそがぁっ!動かねぇ!!」

「待ってろ!今援護に行く!」

幸いにもすでに右腕は復旧して、大型パルスシールドの展開ができるようになった。そして一気にトラファルガーのところへ向かい、シールドを構えた。すると電撃はシールドに当たって光を出して散った。

しかし、大型パルスシールドのアイドリングと、イニシャル出力は上がったため、全然ダメージ蓄積はなく、構えていられる。だが、それにしても強力だ。生半可なアイドリングではああなるものだ。

一歩油断すればやられかねない。

「よっしゃ!ありがとう!おかげで復旧したぜ!」

シールドのアイドリングをして、トラファルガーはそのまま進もうとしていた。

「やめておけ、まずはここからゆっくりでも確実に進むぞ。」

アルテミスはそんな彼を止めた。ゆっくりでも確実に抑えようとしている。

「そうか。わかった!それで攻めるぞ!敵の基地の三キロ手前に行けば大きなうちの会社の攻撃船がやられた跡がある!そこまではいくぜ!」

でかした、トラファルガー。そのままブーストを吹かして進攻しよう。

思いっきりアクセルを踏みながらだが、シールドに出力を八割供給しているため、大した速度は出ないが、それでもあと数分もあれば到達できる距離ではある。このまま強行突破しよう。

そのまま瓦礫目指してひたすらに進んだ。そして二分後、目的に到達し、目視で確認できる距離に来た。

「アルテミス!そのままエレクトリックキャノンを撃ち抜け!」

「了解だ!」

彼が制圧用重壊滅砲を用意している間に私は彼の前でシールドを展開する。しかし、出力が危うい。アルテミスに一部出力を託し、シールドに集中させた。

壊滅砲の充填率は今五割。あと少しといったところだ。瓦礫に隠れてトラファルガーがアルテミスの出力をエネルギーケーブルで送って、手伝っているのもある。

あともう少し。しかし、その後、思いもよらぬトラブルに見舞われることになる。相手のプラントの方で大きな爆発音が鳴り響いた。

「チャージ完了だ!発砲するぞ!」

「待て!!さっき爆発音がした。何かあるだろう。」

私達はスコープモードでそのまま敵の基地の爆破箇所を見た。しかし靄がかかって見えない。サーマルスコープに切り替えてみた。すると中にはかなり高温のジェネレーターが稼働しているのが見える。

位置、高さ、ジェネレーターの温度。おそらく高性能アームドスーツだろう。しかし、こちらとしては任務の障害になりかねない。一緒に排除すれば一石二鳥かもしれない。

「おそらく独立傭兵だろう。アルテミス!!撃て!!!!」

「ファイア!!」

その後、凄まじい高温を放つ灼熱のレーザーが放たれた。そしてありとあらゆるものをすべて焼き払った。砲身は赤く光り、銃口からは白い煙が上がった。

相手の基地はすべてなくなり、クレーターのみが残った。無論、あの高性能アームドスーツも...

突然、レーザーが私の腕に当たる。直撃だ。リフレクターはかけてはいない。しかし、私の機体の腕はほとんど零れ落ちた。まだ若干つながっているが、ほとんど零れ落ちたも同然だ。

数本の白い筋が支えている。しかし、そんなことはあとでいい。問題は誰が撃ったかだ。

「レーダーに反応!!あいつ、まだ生きてるみたいだぜ!!」

「くそっ、戦闘システム再構築!!右腕部ジェレーティングシステムアイドリング!!メインジェネレーターにフル供給!!」

そして戦闘隊形を整えた時、煙の中から本題の機体が出てきた。しかし、その見た目に衝撃を受けた。真白なボディーに華奢な逆関節、高性能カメラアイを装備したあの機体。

「あれは…」

そう、国家解体戦争時代最悪の遺産、無人殺戮用機動兵器、「ファイナル・アンサー」。

『対象を確認。対象を排除する。』

「まずい、アルテミスは下がって後方支援を頼む!」

「分かった!!」

私はアルテミス、トラファルガーと息を合わせ、無人兵器を倒すことにした。あの機体は国家解体戦争末期に解き放たれた最後の国の遺産だ。常にこのエリアに入る企業勢力を幾度も殺めてきた。

無論、私の会社の人々だ。旧世代型とは言えども、高威力レーザーに対レーザー装甲、物理攻撃にも強い特殊な装甲により、見た目とは裏腹に、怠慢でやりあって勝てた機体はいない。

「トラファルガー!!右に回れ!!私は左サイドから攻める!!」

「了解だぜ!!」

そのまま二つに分離し、私は中距離からライフルで攻めた。しかし、相手はすべてを華麗にかわし、トラファルガーに怠慢を挑みこむ。

トラファルガーも負けじとランスで近接をかわしながらサーベルで攻める。私も彼をひたすらに援護した。アルテミスは自慢の射程で相手をけん制して、行動範囲を狭めている。

ランスの攻防は激しく、無人兵器とは思えないような近接攻撃とかわしを見せている。

その時、トラファルガーは一気に相手に空中戦を挑んだ。

「おらぁぁぁぁ!!!!くらえぇぇぇぇ!!!!」

そして一気に相手のサーベルを払い落として、左胴部、腕部を貫き通した。私はその瞬間に後ろに入り、サーベルを叩きこもうとした。

一瞬だった。

一気に相手はアサルトアーマーを展開、私を無力化してきた。

「トラファルガー、アルテミス、すまない、動けない。」

そして一気にブレードで私を切りかかろうとしてくる。

ああ、終った。

そう思った時、目の前には見たことのある姿があった。

「エース、お前が死ぬにはまだはえーよ。」

「トラファルガー。何をする気だ?」

「決まってんだろ?こいつをつぶす。」

そしてトラファルガーは私を蹴り飛ばし、そのままパルスフィールドを展開した。これではアルテミスも援護できない。

「何をしてる!?トラファルガー!!やめろ!!お前が死ぬぞ!!」

「俺のじいちゃんが言ってたんだよ、できるできないじゃねぇ、やるかやらねぇかなんだよ。」

「やめろ!!お前が死んでまでこの任務を遂行する必要はない!!」

「やらなきゃ別の誰かが死ぬんだぜ?やるしかねぇんだ。」

そういって彼は私とアルテミスを振り切って、怠慢を張った。

彼はオーバードライブを使い、無人兵器を追い詰めた。鋭い一突き。残像が残るブレード。すべてがすさまじかった。そして一気に畳みかけていった。だが、相手もまた損傷したとは思えない動きでかわした。

そして瞬く間に相手はトラファルガーの間合いを詰めた。そして高威力レーザーで右腕部を吹き飛ばした。そして冷却版も損傷と摩耗が続き、限界は近づいていった。

「トラファルガー!!もういいんだ!!本当に死ぬぞ!!」

「やめたところで遅ぇよ。」

『三号機、冷却システム異常、熱量限界突破。右腕部損傷拡大、戦闘支援システム、統合管理アシスト、オールダウン。』

もう彼の機体はすさまじい熱気を帯びていた。もう稼働限界だ。すでに動ける状態ではない。

しかし、相手の手は緩まらない。ひたすらに激しい攻撃が続き、トラファルガーの機体は満身創痍だった。

「トラファルガー!!」

「ごほっ…げほっ…ああ、そろそろだめみてぇだな。でもなぁ、諦めちゃあいけねぇんだよ…げほっ…なあ…エース…アルテミス…一緒に過ごした時間は楽しかったぜ。」

「トラファルガー!!」

アルテミスと一緒に叫んだ。

「そうか…ありがとよ…俺の分も生きてくれよなっ…げほっ…」

そういって彼は最後の力を振り絞り、零れ落ちる装甲をもろともせず、一気に相手に接敵し、腕を相手のジェネレーターに突っ込み拘束した。

そしてアサルトアーマーを発動しようとしている。あの状態でアサルトアーマーを発動したら機体は吹き飛び、ジェネレーターの出力がすべて外に放出されるだろう。

「みんな…ありがとよぉ…」

次の瞬間は彼の機体はすさまじい爆風とともに相手を道ずれにした。

彼の機体はバラバラになり、無残な姿になった。もはや彼は跡形もない…

彼と過ごした日々が頭を通っては消える。そして、何とも言えない絶望と悲しさを一気に感じた。自分の無力ささえも感じられた。

「ああ…」

もはや言葉も出ない。ただ悲しいだけだった。アルテミスも同じ心境だったようで、任務終了の報告すらもできる状況ではなかった。

最悪の遺産のもたらした最悪な最期。戦争とは無情である。

ブリッツが敗れる日が訪れる。誰もが予想できたはずだ。それが今日あの機体に訪れる運命だったんだ。

だがそれでも捨てきれない思いを胸に抱いた。

「こんなことになるとは。急いでこの機体を持って帰ったほうがいい。もし技術をもっていかれたら大変というのもあるが、何よりも、トラファルガーの遺体が残っているかもしれない。」

アルテミスは冷静さを取り戻したようで、しっかりとした判断を下した。

「そうだな。急いでキャリアーを呼ぼう。もちろん、部品回収者もだ。」

「ああ、呼んでおくから、部品を集められるだけ集めてくれ。」

私は返事をせずにブリッツに乗りながらうなずき、そのまま部品を回収した。

腕、間接部、放熱板、装甲、コンピューターボックス…

いろいろな部品を集めるたびに思い出がよみがえる。黒く焦げたジェネレーターと、焼けたコックピットは、あの時の悲惨さを体現している。

私はまさかと彼の乗るコックピットをこじ開けた。するとそこには変わり果てたトラファルガーがいた。もう焼け焦げてしまっていて、胸にはコックピットのディスプレイの破片が刺さり、足は千切れかけている。

ひどい状態だ。もう言葉も出ない。その後、一回コックピットに戻してやって、その状態で安静にできるような状態にした。その姿を思うとファイターというのはリスクの大きい仕事だ。

しかし、こうして死んでいった仲間はもうすでに何人もいる。しかし、なぜだろう。悲しみのだけではない何か熱いものがこみあげてくる。

何かに応援されているような気がする。こんなことは今までなかったというのに…

そして頭部のパーツを見つけた。オプションはすでに剥がれ、もともとの姿が見える。美しい白色はもう灰色になってしまってる。

『こちらキャリアー部隊、ブリッツの回収に来た。』

「了解。」

その後、キャリアーとつなぎ、そのまま帰還した。トラファルガーの遺体や機体残骸はのちに回収されて保管されるそうだ。

「アルテミス、今日はどうする?」

「どうするって、もう遺族たちとかにそのことを知らせなきゃいけないし、墓も立ててやらなきゃいけない。というかそれしかないさ。」

言葉では言い切れない悲しみの奥に何か熱いものを感じる。これが何かはいまだにわからないが、何か、いいものではあるのは確かだ。

私は帰りのキャリアーで運ばれながらそれが何かを考えるのであった。

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