エピソードVI 歴史と次元を超えて

国家解体戦争最終戦。それは別名、末期の希望ともいわれた。国家は総勢力で迎え撃ち、対する企業も、勢力総出で対決することとなった。

もちろん、企業側が優勢だったが、最強のコア、ブラスト・マテリアル・コアを搭載した、国家側の移動要塞、ラストアンサーにより、

企業側は後退せざるを得なかった。三機を除いて。ストラディヴァリウス、ソーラーナイト、そしてコーマットV3だ。彼らは力を合わせて、敵のシールドを破り、

内部コアを破壊することに成功。しかし、消息不明となってしまう。おそらく、ブラスト・マテリアル・コアから発生したワームホールに飲み込まれたのだろう。

その後、最後の砦を失った国家は解体し、企業が支配体制を置いた。そこから五十年、いまだに彼らがどこにいるかはわからないままである。


そのまま無事基地に到着すると、少しの休憩ののち、ここからはここで別れて、私とセイレンで作戦室に向かうことになった。みんなの歓声も、褒美もなし。求めてはいないが。そして次のミッションを淡々と伝えられた。

「質問だが、セイレンは一緒に連れて行っていいのか?」

「ああいいとも。しかし、その場合はあなたの部隊所属となりますが、いいでしょうか?」

「了解した。まあ彼女には私の乗っていたパーシュート三型を渡す。一応第四等級機だから問題はないだろう。」

「そうですね。予備倉庫からデッキに移動します。」

「良かったら軽量脚のアセンブルにしてくれないか?」

「それは難しいので、所属会社から届いた新機体、アドバンスド・クライシスになるんですけどいいですか?」

「私はそれでいいですよ。」

「そうですか、じゃあちょっと確認してもらいますので、デッキまでどうぞ。」

私達は一応デッキに行き、機体の確認から入った。そこには灰色に青がアクセントカラーの修練な機体があった。

「型式番号、RC-α001。一応新機体なのですが、ちょっと癖がありまして、新型ウィングブーストのおかげで、通常よりも旋回速度に優れますが、その旋回がなかなか鋭利な旋回なので、

慣れが必要なんですよ。ですが、装甲はしっかりとしたものとなっていて、多少の被弾なら大丈夫ですが、アサルトキャノンには注意してください。駆動方式は半アウトレイジパイプの電磁モーター制御です。」

「なるほど。じゃあセイレン。乗ってみてくれ。」

「分かった。」

彼女はコックピットのハッチを開けて、そのまま中に入った。そして、動作確認をすることにしたようだ。灰色がメインである機体はまだ少ない。しかし、かっこいいことには変わりないが、どうしても、黒単色などと比べると、見劣りしてしまう。

だが私は好きな色だ。あとは彼女が気に入ってくれればいいかと思っている。新機体の新鋭部隊。一昔前のファルコンズとはまた違う雰囲気になりつつある。それにしても子会社の発展もしていることをこの機体から伝わってくる。

いつもは間接部などの機体の一部を製造している会社がここまでの機体を作れるようになるとは。全く感心させられる。にしても背中のウィングスラスター構造はさすが精密重機の会社が作ったような職人的精巧さがうかがえる。

「どうでしたか?」

軽いテストを終え、機体の管理人が彼女に話しかける。

「結構いいですね。この機体は今まで私が使ってきた機体とそっくりですし、何よりも旋回の鋭さ最高です!」

「そうでしたか。ではこの機体でいいですか?」

「はい。あともしよければなのですが…」

そこからの話は私に聞こえないくらいの声で管理人の耳元で言った。

「なるほど。もちろんいいですよ。完成品は翌日輸送しますのでちょっと待っていてください。」

「ありがとうございます!」

「いったい何を頼んだんだ?」

「それは内緒。」

「そうか。分かった。」

結局何を頼んだのかはわからず、私は今日過ごすこととなった。さてと、ブリッツの整備もできたことだし次のミッションに向かおう。

次のミッションは調査のようで、もともと国家解体戦争末期の最終戦地での調査らしい。どうやらそこにサイクロン社の仮設基地があるようなのだ。しかもそこには三機の高性能アームドスーツが確認されているようだ。

それにしても奇妙である。ミッションの伝えられた後にもらった資料にはその仮設基地の建てられた場所にはまだどの会社も立ち寄っていないようなのである。だからこその調査なのだろうが、不思議なことでいっぱいである。

高性能機の輸送された履歴もなし。それに、戦争が始まる数日前まではなかったようなのだ。

「エース、今回は遠い場所での単機調査任務になる。よろしく頼むぞ。」

「了解した。」

私はブリッツに乗り、そのままハイパーカタパルトで、一気に千キロ先まで飛んだ。あとはもう二千キロをハイパーパーパスで行くだけ。スイッチに手をかけ、そのまま始動。そしたら一気にディスプレイがゆがみ、高速移動をした。

そこには確かに小さな基地がある。だが、三機入るか入らないかのぎりぎりの大きさである。とりあえず、あたりをレーダーでスキャンしたが罠のような反応はなさそうだ。基地の中は誰もいないようだ。

探知されると困るため、無線は使わずにそのまま着陸。そして、基地の外についたが、簡単な仮設テントのようなものであった。キャプチャーカメラで基地一帯を撮影し、そのままテント内も確認することにした。

次の瞬間、私の目に飛び込んできたのは衝撃のある文字だった。

"コーマットV3用大型携帯テント”

これは何と、消息不明機の一つである、コーマットV3のものではないか。レプリカの作成すらされていないあの幻のマキシマムランカー。重装甲だが軽量機並みの速度を誇るサイクロン社の名作でもある。

それだけではない。その中にあったのはソーラーナイトの大型レーザーブレード、エンペラーが置いてあるではないか!更にはストラディヴァリウスのAR-72までも!

これはいったいどういうことなんだ?何の目的で置いてあるのだろうか。驚きの発見をしたのち、テントから出て帰還しようとしたその時…

『警告。六時の方向より急速接近反応あり。三機だと思われます。』

「何!?来たか!」

私はテントから出て、光学ステルスを起動し、近くの岩陰に隠れた。すると、目を疑うような光景が私の目の前に現れた。

そう、あの三機がそろってここに来たのだ。私は無線をジャッカルし、彼らの無線につないだ。

『元の世界に来て三日目か。大変だが乗り切れそうだ。』

『あのワームホールのおかげでここにこれたな。さて、飯にしようではないか。』

『ん、待ってくれ二人とも。テントに誰かが入ったようだ。おそらくアームドスーツだ。この感じだとまだ近くにいるな。探してみる。』

まずい、あっさりばれてしまいそうだ。コーマットV3のカメラ、レーダー性能は恐ろしいほどいい。光学ステルスなんぞ簡単に見抜かれるだろう。これは抵抗するだけ無駄だ。

私は光学ステルスを切り、両手を挙げて、攻撃の意図がないことを見せた。するとコーマットV3が近寄ってきた。

『攻撃の意図がないことはわかった。君と話したいことがある。というよりは、話してもらいたい。』

「えっ、あっ、はい。」

私は彼らのテントの横にブリッツを止めてコックピットから降りた。そしてプロテクターアーマーを脱ぎ、中に置いておいた。そして制服を整えたころにはもう彼らはテントの中で待っていた。

「どうぞ、そこにかけてくれ。」

「分かりました。」

「まずは自己紹介をしよう。知っていると思うがな。私の名前はプロミネンス・ホークモン。コーマットV3のパイロットだ。そして今君の機体を見に行っているのがソーラーナイトのパイロット、サム・ヴァーリア・ファルコラスティ、

そして最後に今向こうで私の装備を点検しているのがストラディヴァリウスパイロット、フォーデン・ソレイユだ。まあ今のところ君とは中立的立場といったところだ。よろしく頼む。」

「まさかここで本物の伝説に出会えるとは、光栄です。」

「そんなに硬くならなくていいさ。ところで君は?」

「私はインディバル・パーシュート社所属、第七世代高性能アームドスーツブリッツのパイロット、グラビティ・タニティード・エースです。今日は偵察任務でここに来たのですが、こうなるとは思ってもいませんでした。

それにさっき無線をジャッカルしたんですけど、三日前にワームホールからここに来たようですね。それまで何があったんですか?それにあの時から五十年以上たっているのにそこまで若いとは一体?」

「話は国家解体戦争最終戦にさかのぼる。あの時、敵要塞を撃破した。そして最後に私たちは敵の基地に残り、ジェネレーターをつぶそうとした。実際成功したが、その後、ワームホールに巻き込まれて、また今とは違う次元に飛んでしまった。

その後は仕方なく、街に食料を買いに行き、山の奥らへんでテントを作り、半年はそこで過ごした。そしてそんなある日、急に市街地上空に私たちが巻き込まれたワームホールと同じものが現れた。そして私たちは迷わずに飛び込んだ。

そして三日前、ここに降りた。」

「なるほど。だからこつ然と現れたのですね。」

「そうだ。だが何か様子が違うと思ったら、もうそんなに経っていたのか。」

私は彼の出してくれていたコーヒーを一口飲み、また答えた。

「そうです。もうあなた方は消息不明という扱いになり、そのまま五十年間は伝説として博物館や歴史の教科書などにも記載されました。」

「そんなことになっていたのか。ちなみに今は平和なのか?国家解体戦争が終えて、企業は一致団結したのだろう?」

私は少しばかり苦く、深刻な表情に変わった。

「それが、企業競争の激化により現在、パーシヴァル社、サイクロン社から宣戦布告されてしまっています。それにより今は戦争状態となっています。」

彼もまた悲しいような、苦い表情になった。

「そうか。それは災難だ。私の会社とパーシヴァル社が連合を組んで君たちを倒産させようとは。何たることだ。」

「平和のために競争をしていたのにこのざまです。」

「そうか…」

「話は聞いてたが、そいつはまずいな。俺は自分の元居た企業に戻る。そして協力しよう。」

「俺もいくとするか。インディバル・パーシュート社には俺みたいなやつをここまで育ててくれた恩があるからな。ところで、ホークモンはどうするんだ?」

「私も元々は一緒に協力していた身だ。それに、彼らにはお世話になった。分かった。協力しよう。」

「本当にいいんですか?」

「ああ。久しぶりにまた戦うな。まあいい。また頑張るぞ。」

「ありがとうございます。では基地に案内します。」

「基地の場所が変わったのか?」

「はい。国家解体戦争後に本社は移りました。」

「そうか。分かった。」

話が終わり、全員出発の準備に入ったようだ。私も通信をし、何がどう起こったかをすべて話した。

『ワームホールか。最近観測されたものはちょうど三日前、そこらへんで発生した。』

「黙っていたのか?私に?」

『そうだな。関係ないことと思っていたからな。まあいい。今輸送部隊を向かわす。確か三機分でいいよな。』

「そうだな。私はその速度で巡航できる。」

『了解した。』

そして数十分待っていると、輸送部隊が到着し、彼らも準備が整った。そして飛び立つのを待つことにした。

「あれがマキシマムランカーか。すっげえな。本物は初めて見た。」

「私もだ。パイロットも本物だぞ?」

「あとで話そうかな?」

「後でご自由に。任務に集中するぞ。」

私はキャリアーへ彼らを誘導して、くっつけることにしたが、旧式のフックというものもあり難しかったが、転換式マグネットフックを使ってどうにかなった。それにしてもかっこいい機体たちだ。生きる伝説とはまさにこのことだろう。

「すごいな。ここまで発展しているとは。昔は専用のキャリアーだったからな。」

「そうですね。まあ五十年後の未来はこんな感じですよ。では、今から輸送します。」

「あの機体はどうするんだ?取り残すのか?」

「いえ。ブリッツはキャリアーの速度で巡航できるので大丈夫ですよ。それに燃費ほこっちよりもかなりいいですしね。」

「すごいな。」

彼らの口からはすごいの言葉の嵐だった。それも無理はない。何せ半年しかたっていないはずがこんなに発展していたら驚きだろう。私もそれは思うが、おそらく体験した張本人からしたら相当なものだっただろう。

今までワームホールにぶち込まれたこともないやつが言うのも変だとは思うが。にしてもかっこいい機体である。あのストラディヴァリウスの曲面装甲にパールホワイトは美しい。それに、ソーラーナイトの角ばった三角装甲もまたかっこいい。

そしてコーマットV3.私達の会社が開発したものではないが、あのデザインは素晴らしい。それに性能を引き出すような機能性も兼ね備えているようだ。武器もそれぞれの特徴に合わせて作られている。いったいどうやったらここまでの兵器が作れるというのだ。

それにあのしなやかなブレード脚でよくあの機体を支えられるな。ストラディヴァリウスはぎりぎりという感じはするが、それよりもソーラーナイトのブレードの細さには驚きを隠せない。あの細さで上半身を支えるとは。しかも類を見ないブレード逆関節。

こんな華奢で鬼才な機体を作ろうなんて、全くいかれたテクノロジーだ。

『こちらインディバル・パーシュート社本部だ。いったい何をそんなに運んでいるんだ?』

「こちらファルコンズ。今マキシマムランカーと思われる機体三機を輸送しています。パイロットもです。」

『正気か?もう伝説と化したはずでは?』

「彼らは別の次元で生きていた。しかし、ワームホールに吸い込まれてまた戻ってきたようです。」

『本当か。コーマットV3はなぜいるんだ?』

「もともとインディバル・パーシュート社にお世話になっていたんですよ。だから元の会社ではなくこっちに来るとのことです。」

『裏切らなければいいか、彼らは誠実だったと聞いている。大丈夫だろう。きっと。』

「フラグは立てないほうがいい。あとで後悔する。」

『そうだな。まあその時はその時でどうにかすればいい。』

数時間後、無事に本社に到着。そして期待を積み下ろして、デッキに輸送された瞬間、多くの社員がその機体を一目見たいと機体によって行った。まるで砂糖に群がるアリのようだ。

一方でパイロットとも話したい人が多いようで、これもまたとんでもないことになっていた。

「エース大佐。話があるのですが、また新しい任務になるのですが、今回からセイレン、フォーデンと一緒に行動してもらうことになりますが、よろしいですか?」

「いきなり彼らに任務を与えるのか?」

「やってみましょう。本当に彼らが本物か。」

「そうだな。分かった。彼らは一応ファルコンズの監督下にしておく。」

「了解しました。」

新しい任務の概要はこうだ。これからサイクロン社の第七物理衛星軌道射出施設の攻撃を行う。これにより相手の活動範囲を狭めようという作戦のようだ。詳細な内容としては、三段階に分かれる。

まず初めに敵防衛部隊兼、敵防衛拠点を叩く。そして次に施設内部に侵入。そしてサブジェネレーター、ジェネレーターの電源を落とす。そして最後に残党勢力を排除したのち、ジェネレーターをオーバライド。そのまま爆破する。

いたってシンプルだが、敵の残党に高性能アームドスーツがいる可能性がある。それが厄介な点だ。だが、それさえ切り抜けてしまえばこっちの勝利というところだ。

ストラディヴァリウスをいきなり戦わせるのはどうかと思うが、仕方ない。これも戦争だ。すまないが付き合ってもらおう。

「さっそくで悪いが、この任務に付き合ってくれるか?サイクロン社の第七物理衛星軌道射出施設を攻撃する。」

「ほう。それで、私とタックを組むのは君たちかい?」

「そうです。よろしくお願いします。」

「こちらもよろしく頼む。ところで、君の隣のお嬢さんは?」

彼は書類片手に彼女の眼を見た。歴戦を生き抜いてきた鋭い目線だった。

「自己紹介が遅れました。私はハーバリヴィア・セイレンと申します。ご不便おかけするかもしれませんが、よろしくお願いします。」

彼の向けた鋭利な目はまだ彼女を見ている。しかし、目の奥にはかすかにやさしさか、温かさがある。

「そうか。私は紹介せずとも知っているだろう。よろしく頼む。」

「さて、行くとするか。」

私達はまた各自の機体に向かって歩みだした。そして、機体のコックピットからのぶりラダーをのぼり、再びブリッツの中に入った。彼女は初めての新機体での出撃だろう。まだ不慣れかもしれないが、頑張ってもらおう。

そして、彼女の隣に並ぶ白く、美しく華奢な機体は、鋭い光沢を放ちながらも上品さにあふれている。そしてメインシステムを起動する。カタパルトに行き、射出されるのを待つ。

『こちら管制塔。三番、四番、五番カタパルトを同時発射。発射まで3…2…1…』

次の瞬間高速射出され、白い閃光を放ちながら私たちは相手の施設に向かった。

「こちらフォーデン。敵数一二。直ちに排除する。」

「待て!先に行っては共倒れだ!」

しかし彼はそのまま降下。敵の施設防衛線のど真ん中に降りた。あれは死んだな。いくら何でもやりすぎだ。下では爆発と銃弾が飛び交った。そして爆風に白い閃光が飲まれていく。

私達もそのあとすぐに下に降下したが、そのころには敵影がなかった。煙が立ち込めていた。

「くそが。早死にか。セイレン!残りはやるぞ!」

「待ってよエース。何か煙の中にいるみたい!」

そして私たちはコンバットモードを起動。臨戦態勢に入った。するとそこからは白い閃光が姿を現す。

「排除した。さて、拠点はどこだね?」

「何だと?さっきの一瞬で防衛線壊滅!?それでいて生きているだと!そんな馬鹿な。」

「私をだれと思っている?」

彼はそのまま私と行動を共にした。なぜあのようなことをしたか理由を聞いてみれば、奇襲で一気に背部スラスターミサイルを放ったそうだ。そうすることで、警報が鳴る前に敵を排除。そして時間稼ぎをしたそうだ。

無線も彼が切ったそうだ。さすが、やることのすべてに準備ができている。さて、施設内の入り口に侵入した。リフトを起動。そして下っていると、数秒後…

『侵入者あり。繰り返す、侵入者あり。敵の警戒レベルは3A。直ちに部隊は急行せよ。』

「ばれたようだな。エースは隠れていろ。セイレンさんは私とついてきてくれ。」

「なぜです?」

「君が隠れることで、ブリッツが来たことが悟られない。そうすることで、敵の警戒レベルをこれ以上あげないようにするということだ。」

「なるほど。了解しました。緊急時に備えます。」

「頼んだ。施設の破壊の段階に到達するまではそこで隠れてくれ。時が来たならば君に合流する。」

私はステルスモードを起動、そして熱量なども抑え、赤外線等も透過。完全にないも同然となり、マグネティカルフィールドにより浮上。そのままリフトの上に上り、隠れた。その間に無線を探知。

どこに何がいるかをすべて把握し、暗号化してセイレンに送ることにした。

『くそっ、あいつら好き勝手やりやがって。インディバル・パーシュート社なんか滅ぼしてやる。』

なんていうことを言ってんだこいつは。

『その時は近いぜ。なにせ、サイクロン社の新機体であるハリケーン・ヘビー・キャリアーカスタムならあのブリッツも壊せるかもってな。』

『高威力パイルバンカーで粉砕すればこっちの勝ちだな。なすすべなさそうだな。』

まずいな。そんなことになるとは。ブリッツ対策に高威力パイルバンカーだと?ふざけたこと言いやがる。

『何話してんだ?とっとと施設中核に行け!』

『分かりましたよ隊長。セイレンに逃げられて不機嫌ですね。』

『ああ。あの野郎は許さねぇ。』

機動音からして新しいカスタム機だろう。セイレンがやっているなんて知られたら大変なことになる。急いでセイレンへ送信。

今の状況としてはうまくいっているようだな。しかし、最悪なことにあのカスタム機が現場に向かっている。

「エース!今だ!戦闘を開始しろ!破壊段階に到達!」

「了解した。」

ステルスを解除。コンバットモードを起動。リフトの上から落ちて敵の格納庫に降りる。

『くそっ、ブリッツか!急いで戦闘に参加せよ。』

私は銃弾を食らう前にアサルトアーマーを展開。すべてを薙ぎ払った。そして、最短経路をたどり、彼らに合流する。すでに施設の中核に到達したようだ。

くそっ、このままではカスタム機の餌食だ。そうはさせない!私は急いで施設中核に到達。そしてそこに待っていたのは鹵獲されたセイレンだった。そしてそれに戸惑うストラディヴァリウスだ。

「君、私が合図を抱いていないのにどうしてここに来たんだ?」

「無線してないのか?」

「ああ。だまされたんだな。」

「くそっ!」

「恐らく君に勝負を挑みたいのだろう。私に対しては強硬姿勢を張ってくる。おかげで攻撃できない。あと、あいつのパイルバンカーと背部エレクトリックキャノンには注意だ。

私は直撃はしてはいないが、腕をかすった時、その腕が十秒ほど動かなくなった。直撃したら死ぬぞ。」

『お前が俺のセイレンを奪ったのか。下種め。殺してやるよ。お前のお隣さんは下がってろ。』

「お前の勝負。大佐である私が受け入れよう。」

『いちいちうるせぇよ。野良犬が。』

ふっ。笑わせてくれる。大したことのないやつの遠吠えだな。どれだけ相性が良くとも、状態がよかろうと、位が上であろうと、技量がなければごみも同然。

また落ち着け。そして相手を見るんだ。

『死ねぇぇぇぇ!!!!』

切り込んでくる。キャノンの取り回しは悪いようだな。当てられなさそうだ。そして一気に後方回避。そして上昇。すると相手はキャノンの銃口を向けたが、遅い。私はすでにハイレーザーを展開して、もう発射できる状態にある。

すべてが止まったようだ。ハイレーザーは青い火花とともに相手のキャノンをかする。そして一気に破壊する。

『くそ野郎が!この程度何ともない!死ねぇぇぇぇ!!』

どうやらまだ未熟だな。苦戦もしない。

しかし、一瞬で戦場が変わる。彼は自分の恋人であろうセイレンにエレクトリックキャノンを向けた。なんて奴だ。私はもうそのころには衝動にとらわれていた。すでにセイレンを守るために右腕のシールドを展開して、彼女の前に立った。

しかし、フルチャージのエレクトリックキャノンは想像を絶する威力だった。関節が動かなくなり、凍ってしまった。

『バカだな。銃口を向けただけで飛び込んでくるとは。さすが単純な奴だ。』

奴はパイルバンカーで私に近づいてくる。しかし動けない。彼の槍はもう目の前だ。しかし、次の瞬間…

青い緑を放つ光の剣があいつを止めた。

「卑怯な手には卑怯が返る。覚えておけ。」

そして、しなやかなブレードで蹴り飛ばした。

『俺に攻撃すんなと言ってるだろうがぁ!くそ老兵がぁ!』

「私が老兵だろうと、下種に向ける切っ先は同じものなのだよ。」

そして彼はまた銃口を向けられる。しかし動じない。見ているしかないのが悔しい。

彼に電気の弾丸が飛ぶ。だがその時にはもうすでに彼は上空にいた。

「次元を超えたとしても、時が動こうと、私が生えぬいたのは偶然でも運でもない。実力があるからこその必然なのだよ。」

彼はミサイルを発射。そして相手に当てにかかるが避けられてしまう。

『へっ、大したことねぇn…』

しかし彼は避けることも想定していた。もう背後に立っていたのだ。

「背後には気を付けるんだな。アディオス。」

彼はチャージしたバーストライフルをジェネレーターに向けて発砲した。すると、赤い爆風とともに散った。

「すごい…完全に洗練されている…」

「エース、ここまでできたのは君とセイレンが引き寄せてくれたおかげだ。ありがとう。二人とも。」

「いえ。とんでもない。」

「セイレンさんは無事が?」

私は彼女の機体にアクセスした。脈もあるようで出血等はしていないようだった。しかし、気絶しているようだ。何も返事がない。

「大丈夫ですが、気絶しているみたいです。」

「ちょっと待とう。そしたら目を覚ます。」

私は施設を破壊し、セイレンの機体を運び出した。そしてキャリアーを呼んで、帰還した。長い一日だった。

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