見つけ出せないから叶わない

あぁ、とドラッグストアで叫びだしそうになる。


先程、神社の備品の買い出しを頼まれた。うだる暑さの中歩いてきたことで、額に前髪が張り付いているが、中に入ればスーと涼しい冷気に当てられて心地良くなった。だか、心中はそんなことはない。


初めて行くドラッグストア。

そしてどこに何があるか分からない。


生来、物を探し出すのが苦手なタイプだ。目の前に取るべきものがあっても気がつかない。だから、今回のおつかい業務は困難を極めた。というのも、買わなくてはいけないものが十個ほどあるからだ。最初から店員さんに泣きつくのは良くない、と考えている。置き場所の分からない商品は一個や二個で収まらないので、立て続けに聞くと業務の妨げになってしまう。まずは自分自身で出来る限り、見つけ出すことが大切だという志を持っている。


自分自身がファストファッションの店頭として勤めていた頃、店内で商品を探してもいない人に声をかけられ、業務が終わらないことが多々あった。だから、「私は店員さんに優しくありたい」と思い立ってこの信念を掲げている。

まずは店員さんに「自分、一生懸命探してますよ」オーラを出した上で、大変申し訳なく「でもやっぱり見つけられませんでした」と眉毛を下げ、項垂れた感じで話しかけるのが正解だと勝手に思っている。


手始めはトイレットペーパー。これは難なくクリアできた。壁にたくさん積み上がっていたから。だが、トイレットペーパーの周りにトイレクリーナーがあるだろうと踏んだが、無い。トイレコーナーとしてまとめれば良いのに、と悪態を心の中でつく。じゃあ、と諦めて両面テープを探す。まずは文具コーナーに行かなくてはならない。……どこだ。このコーナーに行き着くまで時間がかかった。そして、目の前にある両面テープに気が付かず二分ほど探す。ここまでで、かなりへとへとになってしまっているが、まだ半分以上残っているのだ。そうやって商品を探すために店内をぐるぐる、ぐるぐる回っている最中に奇跡的にトイレクリーナは探し出すことができた。え、こんなところ?絶対分かるわけないよ、と勝手に嘆く。そんなこんなで諸々の頼まれものは集めきった。しかし、あと一つ残っている。

アルミホイルだ。

これだけはどうしても探し出せなかった。

台所用品にないもんなぁ、とひとりごつ。

仕方ない、聞こう。

意を決して店員さんに歩み寄る。

「すみません、あのぅ、アルミホイルは…。」

にこやかに対応してくれる。ありがたい。

「この通路の左手の下側です。」

ありがとうございますとお礼を伝え、そそくさと目的地に向かう。

ないよないよ、だって無かったもの。何回も通ったし。

だが行き着くと、何種類ものアルミホイルやサランラップが置いてある。商品を見つけられないにも程がある、と自分に辟易した。


ついでに前のバイトのファストファッションの話題の時に言えていないことがある。

自分自身が商品の陳列がうろ覚えだったために、お客さんに商品名を聞かれても「一緒に探しましょう!」などとのたまっていたことだ。私が客なら呆れ返る。業務が滞るのも当たり前だ。


だから、もし私が漫画の主人公になったとしても四魂の玉のかけらは見つけ出せないだろうし、ドラゴンボールも探せないと思う。特に全国に散らばった四魂の玉のかけらを集めきった犬夜叉達を、私は尊敬している。私なら絶対素通りして、願い事は叶えられない。


集めたところで願い事は叶わない備品を大きなビニール袋に詰めて、またもやうだる暑さの中、神社に向かった。

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