茶毒蛾に蚕食される椿の葉初夏の裏にて影は蠢く

剣先に枯れて萎れてしがみつく菖蒲の花の意地汚さ良し

廃屋で病みさらばえて腐れ朽ちそれでも薔薇は薔薇だと歌え

書いて消し消しては書いて諦めて破った手紙ハンカチの木

しののめの色を仄かに写し込み月見草は眠りに落ちる

月のないコインランドリーの帰り道待宵草は街灯の下

甘やかな幼い頃の思い出は葛の繁みに食い殺された

空梅雨の塗り込めたような紺碧の空の下咲く紫陽花の青

朝咲いて昼に萎れて繰り返す花の重さは無い等しく

食べたいと思ってたけどもうええわ夏のベランダすずなりきゅうり

夜半過ぎ声を殺して帰宅して君の育てたトマトを食べる

ほろ酔いの宵の路肩を埋め尽くす薄荷を揉んでも匂いはなくて

歩いても変わらぬ景色の帰り道手持ち無沙汰で酸葉を齧る

晩夏に焼かれて焦げた向日葵は秕を抱えなお立っている

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る