かぐや姫編

第6話 かぐや姫

「いまは昔、竹取の翁といふもの有けり。 野山にまじりて竹を取りつつ、よろづの事に使ひけり」


 誰もが一度は聞いたことがあるだろう。


 日本最古の物語、『竹取物語』の始まりの文だ。


『竹取物語』では、「光る竹からかぐや姫を取り出したおきながお金持ちになり、あって、かぐや姫は月に帰ってしまう」という印象が強いだろう。


 しかし、私にしてみれば、の方がとっても印象に残っている。


 どうしてこんなことを思っているのか。


 それは少し時を遡る――――――――





 「「ひゃぁぁぁぁ!」」


 私達は颯爽と走るの上で悲鳴を上げていた。


 そう、こいつはラムちゃん(ハジ太バージョン)だ。


 ハジ太からドロップした魂石を取り込んだことで、ハジ太の姿になれるようになったのだ。


 この姿の時だけハジ太のスキルも使えるそうだ。


 お、落ちそうで怖い!


 

 

 そんなこんなで徒歩30分程の距離を5分で移動してきました。


 『竹林郷ちくりんきょう』― 竹で作られた壁で囲われており、入口の門も竹でできていた。


 webサイトの説明によると、この門をくぐると『竹姫の討伐』というクエストが受注されるらしい。


 かぐや姫に会いたい!


 でも討伐はしたくないな・・・


 などと考えながら門をくぐる。



  《『竹取物語』において、5人の貴公子に求婚され、難題を与え、その解決者と結婚すると宣言した人物は誰でしょう?》


 え?


 なんで?


 スキルを使ったわけでもないのに『クイズ』が出題された・・・・


 しかも、このクイズはおかしい。


 答えは「かぐや姫」であるが、これを答えにする問題であれば、普通は「光る竹」「翁」などが文に入っているはずだ。


 この問題文のシーンは比較的、マイナーなシーンであると思うから。


 

 でも私はこのシーンが『竹取物語』で一番好きだよ。


 かぐや姫は5人の貴公子に求婚されたが、結婚はしたくなかった。


 そこで、叶えることができないだろう難題を5人に押し付けてこう言うのだ!


「この難題を解決した人物と結婚しましょう」


 かぐや姫の強さが垣間見えるシーンで大好き。




 そんなことを考えながらクイズに答えた。


「かぐや姫!」


 するとこのようなメッセージが表示された。


『クイズクエスト【竹姫の救出】を受注しました。』


 そしてウィンドウに表示されたマップに5つの点が示された。


 

 「す、すごい・・・こんな情報どこにもないわ・・」


 パーティを組んでいると、ウィンドウに表示されたクイズが見えるらしい。


 一部始終を見ていたカノが感嘆の声を上げていた。


「ねぇ!かぐや姫の救出だって!絶対やろう!!」


 やらない選択肢なんてない。


「ぽよ!(やろう!)」


 あらラムちゃんかわいいね。



 

 情報を整理しよう。


 マップに示された点は5つ。


 出題された問題からも、かぐや姫に求婚した5人の貴公子と関わりがあると思う。


 まずは一番近くにある1つ目の点を目指そうということになった。



 

 着いた。


 それはもう凄い。


 私達は目を見開いた。


 鬱蒼たる森の中、その部分だけが別空間のようだった。


 くり抜かれたかのような半径10m程の円の中心に、竹がポツンと一本鎮座していた。


 まるで小説のワンシーンみたい。


 その竹の前に足を進めると再びクイズが出題された。


 

 《かぐや姫が、1人目の求婚者・石作皇子いしつくりのみこに結婚の対価として求めたものは何でしょう?》


 もちろん答えは知っている。


 釈迦が使っていたと言われており、神々しい光を放つと言われているものだ。


ほとけ御石みいしはち


 『スキル「はちの輝き」を獲得しました』



 はちの輝き

―全方位50mに光に光を放つ鉢を召喚する



 え、スキルゲットしちゃった。


 ってことはあと4つもスキル増えるんじゃ?



「シズ!」


 そんな私の思考はカノの声で一気に引き戻される。


 目の前に現れたのは綺麗な女性。

 

 そして、その女性に対峙する男性だ。


 女性の方は黒い髪に白い肌、それに調和するように何枚も重ねて羽織られている赤い布。


 平安時代の貴族の女性が着ていた十二単じゅうにひとえというものだ。


 男性の方も貴族っぽい服だようん。



 私は感動していた。


 この人、ぜっっったい!かぐや姫だ!!


 き、きれいすぎる!!


 なるほどこれは求婚者が後を耐えないものだ。


 あ、男性は1人目の求婚者・石作皇子いしつくりのみこ、略して石さんだね。



 とにかく石さんがすごい剣幕でかぐや姫を見つめている。


 かぐや姫は眼中にもないような顔で別の方向を向いている。


 き、きれい・・・じゃなくて!


 このままじゃ彼女が襲われそうだ。


 

 私とラムちゃんはかぐや姫の前に立つ。


 カノも分身を召喚し、私の影に隠れる。



「なんだお前たちは!そこをどけ!」


「い、いやです。あ、あなた、今にも襲いかかりそうだったから・・」


 2年間カノ以外と喋ってないからコミュ障がひどい!


「そいつが求めたものを俺は持って行った!なのにそいつは俺と結婚しなかった!」


 ほとけ御石みいしはちのことだろう。


「で、でも、それは、あ、あなたが作った偽物だったじゃないですか!」


 そう、この人は偽物を作って彼女に渡したのだ。


「ぐっ!うるさい!邪魔をするなら敵だ!」


 

 そう言うと、石さんは鉢を投げ捨ててきた。


 そ、それも自分で作ったものなんだろうか・・・・


 これくらいはピボットを使わなくても避けられる。


「カボチャパンチ!」


 くらえ!これがカボチャの力!


『「カボチャパンチ!」を発動します』

『カノの分身が「カボチャパンチ!」を発動しました』


「ぐおっ!カ、カボチャ!?」

 

 おぉ~HPが半分に。


 カボチャ、偉大だ。


 次はこれ!


『「プラスチックボンバー」を発動します』

『カノの分身が「プラスチックボンバー」を発動しました』


 ドガァァァァン


「ぐ、ぐわあああああああ」


 石さんのHPが0になり、煙のように消えていった。


「かくのごとき厚かましき態度を、『を捨つ』と申すのじゃ。」


 え!かっこいい!(盲目)


 決め台詞のようなものを言った彼女のきらきらと見つめていると、


「ありがとう、助かった」


 とお礼を言われた。


 た、倒して良かった!


 そうして彼女は影に落ちるように姿を消した。

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