第5話 ぽよ!

Anotherアナザー Fantasyファンタジー

 

 このゲームは職業からスキル、クエスト、地形などなど、ほとんどの要素をAIが管理している。


 その為、職業やスキルは無限にあるとされ、立ち並ぶ家々の内装も全て違うものになっている。


 クエストだってすぐそこの路地裏や小さな家の中で発生するかもしれない。


 そんなゲームでわた――――――――「何ぼーっとしてんの!シズヒ!



「え、いや見てくれるみんなに説明を・・・」


「見てくれるみんなって誰なの・・・」


 私たちは草原から街に戻り、昼食をとっている。


「それにしても、いきなり襲われるとは思わなかったわ」


 本当に怖かったよ・・・


 カノがいなかったら泣いてたよ。


「びっくりしたね。でも、私たち初めてのアイテムゲットだ」


 さっき倒した人たちからドロップしたアイテム


 ・銅の甲冑

 ・ハジマール頭巾

 ・憂鬱のイヤリング

 ・ハジ太の魂石


 確認してみたところ防御力などの数値は表示されていない。


「このゲーム、レベル以外のステータスが全く表示されないのね」


 でも、「憂鬱のイヤリング」と「ハジ太の魂石」には説明が書いてあって、


 

「憂鬱のイヤリング」

―状態異常【憂鬱】にならない

 

「ハジ太の魂石」

―ハジ太の記憶が込められている石



 と書かれてある。


 カノが言うには、ドロップ防御を施していないテイムモンスターは超低確率で魂石をドロップし、消えてしまうらしい。


 魂石は武器や防具の素材にしたら、とっても良い効果が付くんだって。



 私がほぇ〜と話を聞いていると、カノが「ねぇ」と声をかけてくる。


「ところでその魂石、ラムが食べたいって言ってるけど・・・」


 

 え!?


「え!?」


「え」


「ラムちゃんの声が聞こえるの!?」


「『シンパシスト』は一部NPCの声が聞こえるみたいだから・・」


「ず、ず、ずるい!!」


「テイムしてるんだから分かるんじゃないの?」


 そう言われ、私は勢い良くラムちゃんを掴み、眼前まで持ち上げる。


「ラムちゃん、私とも話せるよね!」


 何度も何度も、ほとんど脅しのように問いかけていると、


「ぽよ」


 ん?なんか聞こえる?


「ぽよっぽよっ!(――ズヒ、シズヒ!)」


 こ、声が聞こえた!


「ラムちゃんん!聞こえたよおおおお!」


 そう言って抱きついた。


 目の前では「ハイパーサイメシア超記憶症候群とは思えないほど無邪気ね・・」と呆れられていたが、無視だ無視。




「ラムちゃんこの魂石食べたいの?」


「ぽよ!(食べたい!)」


「いいよ、じゃあ口開けて」


「口なんてなさそうね」


 確かに・・・ええい突っ込め!


 ラムちゃんの中に魂石を突っ込んだ!


 ラムちゃんの中で数秒漂った魂石はシュワーと泡を出しながら消えていった。


「ぽよぽよ!(美味しかった!)」


 よかったねラムちゃん。でもこれ、数秒で食べちゃったけど超レア素材だったらしいよ?


「ぽよ?」


 何もわかってない顔を見ると何故か許せちゃう。


 

 ちなみに、残りの装備はカノに渡したよ。


 ゴシックドレスに似合わないものばっかで吹き出していると、拗ねながら見た目offにしているカノが可愛かった。



 

「それで、私たちこれからどうしようか?」


 何も知らない私は、カノに問いかける。


「そうね〜。ならハジマール平原を超えた先の『竹林郷ちくりんきょう』に行ってみない?ここも初心者用エリアらしいわ。」


 竹林!


 嵐山を思い出すな〜。あの美味しい空気!神妙な雰囲気!


「そこにしよう!」


「ぽよ!(しよう!)」


 そして、私たちは『竹林郷ちくりんきょう』を目指すこととなった。




「これ、攻略サイトにまとめられている未攻略クエストよ」


 目的地に向かいながらカノが見せてきたのは、Webサイトが表示されたウィンドウだ。


 各クエストを難易度、地域などによって表示することができそうだ。


 便利だな〜と思いつつ眺めていると、一つのクエストに目が留まった。


「竹姫の討伐?」


「説明には『竹林郷ちくりんきょう』エリアに入ると同時にクエスト受注になる、と書いてあるわ。でもクリアどころか竹姫を発見した人もいないみたい。」


 そんなカノの説明は右耳から左耳へと通り抜けていった。


 竹姫って竹の姫だよね?


 絶対かぐや姫だ!


 大好きなかぐや姫に会うことができるかもしれないという興奮で私は今以上に足を早めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る