第2話 カノ

2話 カノ

「ねぇラムちゃん、お腹すいたの?」


 私はラムちゃんことゴールデンスライムをつんつんしながら話しかける。


 名前はいたってシンプルで、スだからラムちゃん。

 

 私が話しかけたところで返事は無く、ただぷにぷにと動いているだけだ。


 か、か、可愛い!


 罪深き可愛さに気圧されながらもステータスを見る。



 ラム Lv15


 【職業】 ゴールデンスライム


 【装備】 なし


 【スキル】

 ・擬態

 ・飲み込む

 ・高速移動

 ・突撃



 ほぉ〜、『擬態』とか『飲み込む』とかイメージ通りだね。


 でも確かに速かったもんな〜、『高速移動』だったのか。



 

 ラムちゃんを抱えながら歩いていると、ようやく一本道の終点だ。


 そこでいきなり道が途切れ、真っ白い空間だけが続いている。


 いざ一歩踏み出してみると、あたりの景色がガラリと変わった。


 ま、街だ〜!


 至る所に人、人、人!


 辺りを見渡していると、いろんな人と目が合う。


 な、なんかこっち見られてる?



「姉ちゃん信じられねえぐらい可愛いな〜。しかもリアルアバター!?信じられねぇぜぇ!俺らとパーティ組まねぇか?」


 周りの視線を気にしているといきなり声をかけられた。


「あ、あの・・・だ、大丈夫、です」


 こ、怖い!


「大丈夫って何だよ〜。わからないこともあるだ――――――


 

「おい、そこまでだ。怖がってるだろう」


 すると別の男性が止めてくれた。


 つるつる頭の大柄の男性だ。


「チィ!何だよ!まぁいいわ、せいぜい頑張りな」


 そう言うと怖い人は去っていった。


「あ、あの・・ありがとう、ございます」


「いいってことよ!それよりそいつはゴールデンスライムじゃねぇか。初心者ロードのみに出現するレアモンスターだ。嬢ちゃんすごいじゃないか」


 え、そうなんだ・・・


 ラムちゃんと仲間になれてよかった〜!


「俺はハーゲン、職業はシールドガンナーだ。また会うことがあったらよろしくな!」


 そう言うと、ハーゲンさんはどこかに行ってしまった。


 その名前は頭から来たのだろうか・・・・




 そしてハーゲンさんと入れ替わるように花音かのんが姿を現した。


 何もないとこから出てきたけど私もこうやって来たのかな〜、なんて考えていると花音かのんがぷんぷんしながら口を開ける。


「ねぇしずh・・・・


「ここではシズだよ」


「ねぇシズ!あなた変なことしたでしょ!私、職業も見た目も変えれなかったのよ!あと私のことはカノって呼ぶのよ!!」


「う、うん。私も不可抗力で・・・・でもなんでカノまで・・・?」


「多分、か、カップル機体だからよ!」


 話を聞くと、カノの方もてるてる坊主が黒くなって、「お前も伴侶同様にカーシー様に魅入られた!」って言われたのだとか。


 カップル機体ってそんなのあるのか・・・


「ほ、ほら、私たちの名前の上にも「Coupleカップル」ってなってるでしょ・・」


 ほんとだ・・・・


 なんか私の名前にある「Coupleカップル」とカノの名前の上にある「Coupleカップル」がピンクの光で繋がってるんだけど!?


 こ、これ恥ずかしいぞ・・・・・




「まぁいいわ、詳しい話はどこかに行きながらにするわよ」


 ということで私達は『ハジマール平原』という平原に来た。


 何でも初心者用の平原なんだとか。


 ちなみにさっきいたところは『始まりの都市・ハジマール』なんだって。



「で、さっきから気になってたけど、その金色の子はどうしたの?」


「なんかね、仲間になった」


 カノはため息をつく。

 

「なんかってねぇ・・・はぁ、まぁいいわ。あなたはテイマーかなんかなの?」


「いやそれが『解答者』って職業だった。クイズに答えたらスキルが発動するんだよ」


 そうして私は今までの出来事を説明した。


「まずオープニングのてるてる坊主に名札が付いてたかさえ覚えてないわ・・・」


「でも黒いてるてる坊主も可愛かったね」


 カノは「そうね」と頷く。


「それで、カノはどんな職業にされたの?」


 そういうとカノは、「それは見せた方が早いわね」と言いにやっと笑う。



 辺りを見渡すと2匹の豚がいた。


 カノはそれに近づいてゆく。


「暴走催眠!」


 カノがそう言うと、2匹の豚が互いに突撃しだした。


「「プギィィィィ!」」


『ハジマールピッグ(Lv6)がハジマールピッグ(Lv6)にダメージを与えました』

『ハジマールピッグ(Lv6)がハジマールピッグ(Lv6)にダメージを与えました』


『ハジマールピッグ(Lv6)を撃破しました!』

『ハジマールピッグ(Lv6)を撃破しました!』


『カノがレベル5に上昇しました!』


 

「こんな感じ!」


 そうしてカノはニコッと笑った。

 

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