第13話 追放幼女、夜襲を受ける
それから運ばれたゴブリンの死体から五体のスケルトンを作り、村の周囲の警戒をさせることにした。さらに念のため、畑で作業をしていたゴブリンスケルトンの一部を呼び戻して警戒に当たらせる。
そうして万全の備えをして眠りについたのだが、なんと真夜中に再びあの警鐘が鳴り響いた。けたたましい音にあたしは慌てて飛び起きる。
「マリー!」
「はい! お嬢様! お任せください」
あたしは住民の避難をマリーに任せ、大急ぎで着替えるとすぐに家を飛び出した。すると薄暗い中、ウィルが大慌てで駆け寄ってきた。
「姫さん!」
「ウィル! 状況は?」
「わかりやせん! ただゴブすけたちが何かを見つけたみたいっす」
「そっか」
魔力が空になるまでスケルトンを作らないで良かった。これならまだ戦える。
「場所はどこ?」
「裏門のほうっぽいっす」
「わかった。急ごう!」
「へい!」
あたしたちは大急ぎで裏門へと向かう。
その間に若い村の男たちが合流し、あたしたちは十人ほどの集団になった。中には昼間のゴブリンとの戦闘で怪我をした者も含まれている。
「大丈夫? 無理しないでよ?」
「はい! 姫様! ですが村の一大事ですからね。手伝えることがあれば手伝いますよ」
「ありがとう」
そんな会話をしつつ、あたしたちは裏門に到着した。
しかし門はきっちりと閉じられたままで、外からはゴブリンの気配はまったく感じられない。
「あれ?」
「おかしいっすね。ゴブリンどもはここに出入口があるって分かるはずっすけど……」
相変わらず警鐘は鳴り響いている。ということは、森の中にいるゴブリンスケルトンのどれかがモンスターを発見し、鈴を鳴らしているはずなのだけれど。
「G-9、ゴブリンは?」
カン、カン。
門が外から二回ノックされた。二回ノックされたということは、ここにゴブリンは来ていないということだ。
あれ? どういうこと?
そう疑問に思ったそのときだった。
バリバリバリバリ!
突然北のほうから何かが壊れるような激しい音が聞こえてきた!
「えっ?」
「なんだ? 何の音だ?」
あたしたちは顔を見合わせるが、すぐに最悪のシナリオが脳裏をよぎる。
「まさか、ゴブリンたちが北の壁を壊した!?」
「「「「っ!?」」」」
ウィルたちは息を呑んだ。
「急ごう!」
「へい!」
あたしたちは来た道を戻り、大急ぎで村の北側を目指す。北側には家畜小屋が立ち並んでいるので、すぐに人的被害が出ることはない。だが家畜がやられるだけでもこの村にとっては死活問題だ。
でも……。
「はぁ、はぁ、はぁ、ごめん。みんな、先に行って。あたしの足に合わせてたら……」
「なら姫さん、俺が抱き上げるっす! 失礼しやす!」
「えっ? ひゃっ!?」
ウィルはあたしをひょいと抱き上げると、再び走りだす。
高い! それに速い速い速い!
あたしの二倍、ううん、三倍のスピードが出ているんじゃないかって思うほど速い。
これが大人の男の人なんだね。
筋肉はすごいごつごつしてて、もしウィルが力を入れたらあたしの体なんて簡単に折れてしまいそう。
でも、こうやって男の人に抱っこされるのも悪くない……かも?
そうこうしているうちに、あたしたちは家畜小屋の近くまでやってきた。
「ゲギャギャギャ!」
「ギギャー!」
「ギャッギャッ!」
遅かった! 家畜小屋にはもうゴブリンたちが入り込んでいる!
それに北の壁は一ヵ所が倒壊していて、そこからゴブリンの大群が次から次へと流れ込んできている。
まずい! このままじゃ村の人たちにも被害がでちゃう!
「ウィル! あたしが足止めするから!」
「へい!」
あたしは近くのゴブリンの魂を縛り、動けなくなったゴブリンをウィルたちが始末していく。
当然だがこの作戦はまだまだ有効だ。ゴブリンたちはなすすべもなく倒れていく。
だけど……あまりにも数が多すぎる!
あたしたちが止めきれなかったゴブリンたちは脇をすり抜け、村中へと散っていってしまう。
ダメ! このままじゃ!
「G-1! 畑まで行って残りのスケルトンを全部呼んできて! G-2、G-3、G-4、村に入ったゴブリンを倒して! 村の人たちを守って!」
カラン、コロン、カタカタカタカタ。
ゴブリンスケルトンたちは一斉に動き出した。
G-1は裏門のほうへと走って行き、残りは取り逃がしたゴブリンを追いかけていく。
「ウィル! みんな! あたしたちはここで食い止めるよ!」
「へい!」
あたしは目の前のゴブリンの魂を縛り、ウィルたちが動けなくなったゴブリンを一匹ずつ退治していく。
こうしてあたしたちの長い長い戦いが始まったのだった。
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次回「第14話 追放幼女、奮戦する」の公開は通常どおり、 2024/06/21 (金) 18:00 を予定しております。
尽きることのないゴブリンの襲撃、果たしてスカーレットフォードの運命や如何に!?
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