第7話新入生歓迎会レクリエーション後編

 宝探しが開始して数十分が経ち、俺は体育館前でようやく雫と合流することができて雫の隣には亞麻寺もいた。


「お兄ちゃんこれさっき見つけたんだけど」


 どうやら雫は俺と合流する前に宝を見つけていたらしい。


「これは学食のタダ券数枚だな」


 雫から手渡されて見れば学食で使える無料券が数枚分だった。


「それでこれからどうするのお兄ちゃん」


「一旦この体育館の中を見て回ろうかなと思うけど雫と亞麻寺はそれでいいか」


「私はお兄ちゃんに付いていくよ」


「私も先輩と雫ちゃんに付いていくつもりでいるので全然大丈夫です」


 雫と亞麻寺の二人は文句も何も言わずに俺に付いてきてくれるみたいだ、俺と雫と亞麻寺の三人は体育館の中に入る。


 体育館の中には俺達以外に数人の生徒達が宝を探しているようだった。


「とりあえず俺達もここで探してみるか」


「それじゃ私あっち見てくるよ」


 雫は我先にと体育館の壇上の方へ近付いていく。


「亞麻寺は雫に付いていかなくていいのか?」


「私はあんまり宝自体に興味ありませんし先輩に付いていきますよ」


「そうなのか? まぁ俺は亞麻寺がそれでいいなら全然構わないが」


 俺と亞麻寺は裏の扉から体育館の外に出ると雑草が生い茂っていた。


「亞麻寺ここにはなさそうだから一旦体育館の中に戻って雫と合流しよう。亞麻寺?」


「あ、はい」


 振り返った一瞬亞麻寺がいないと思ったが体育館の扉から顔を出す。


「どうした?」


「いえ、その……雑草とかって虫が多いイメージじゃないですか。私虫とか特に苦手なので扉からでるのに少し躊躇しちゃって」


「そうなのか、亞麻寺は虫が苦手だったのかそれはもっと考えるべきだった。わるい」


「いえ、何も言わなかった私の方が悪いので先輩が気にする事なんてありませんよ」


「とりあえず体育館の外にはなさそうだったしとりあえず雫と合流しよう」


 亞麻寺と共に体育館の中に戻って壇上に上がり雫を探すが、雫は壇上にいなかった。


「雫ちゃんいませんね」


「あいつこういうイベント事好きで後先考えずに動くからな……一旦雫の携帯に連絡してみるか」


 携帯電話で雫に連絡をとってみるが電源が入っていないようで繋がらなかった。


「どうします先輩?」


「この学園のどこかにはきっといるはずだからなぁとりあえず雫を探す方が先決だな」


「そうですね」


 そして俺と亞麻寺は話し合いをして二手に別れて雫を探す事にして雫を見つけた場合はすぐに連絡を取り合うように決めた。


 俺は校舎の方を探し、亞麻寺は中庭や運動場などを探してくれている。


 校舎で雫を探していると図書室前で見知った顔と出会う


「あなたは確か本間讐さんでしたよね」


「君は皇鈴さんだったかな」


「はい、まさかこんな所で出会えるとは思っても見ませんでした」


「もしかして俺に用でもあったとか」


「そうですねあなたに一つ確かめたかった事がありまして」


「俺に確かめたかった事?」


 皇鈴は真剣な眼差しで俺を見つめ、少し呼吸を整えてから声を発した。


「はい……そのあなたには十数年前の記憶がありますか? もしくは私の事を覚えてはいませんか」


「数十年前? あのそれってもしかして俺達昔どこかで出会った事があるみたいな?」


 俺は皇鈴に近付いて囁き声で皇鈴に聞くのだった。


「やはり私の事など覚えていないのですか。お兄様……」


 お兄様、皇鈴はそう呟いた。


「お兄様って、君は俺の妹じゃないだろ!?」


 皇鈴の突然の問いかけに俺は驚いてしまい焦った声をあげる。


「いえあなたは私のお兄様です。昨日私を助けてくれた事に名前を聞き確信しました、それに図書室の合鍵を持つなんて余程の本好きだという証拠、私のお兄様しか考えられません」


 皇鈴は早口で話す、ここで俺は考えるどうしたらいいかと。


「一つだけ聞きたい、君のお兄さんは俺と同じ名前なのか」


「そうです私のお兄様の名前は皇讐です。そしてお兄様は私が四歳の頃に突然家からいなくなってしまいました、お父様やお母様に聞いても何も答えてはくれませんでした。だからこの学園であなたの名前を聞いた時はただ同じ名前だと思っているだけでした、ですがあの日二度も私を助けていただいた事で私は確信したのですあなたが私のお兄様なのだと」


「いやそれは勘違いしているだろ、さすがにそんな出来すぎた話があるわけないじゃないか、それに俺が君を助けられたのもただ見過ごせなかっただけで」


 俺は皇鈴から少し距離をとろうと後ずさる。


「お兄様本当に私の事が思い出せないのですか……?」


 すると皇鈴はいきなり涙を流す。俺はそれを見て一瞬頭が痛くなる。


「お……にい……さま」


「どうやら本当に人違いなのでしょうね、申し訳ありません今のお話は忘れてください」


 皇鈴はその言葉だけ言い残して廊下をゆっくりと歩いていこうとしたのを俺は彼女の腕を掴んで止める。


「あの……どうかされましたか」


「いや、なんでもない引き止めてごめん」


 皇鈴の涙を見た瞬間頭の中に彼女の幼い頃の泣き顔を見た気がした。俺は彼女の腕をすぐに離して皇鈴はすぐにその場から離れていく。


 ほどなくして宝探しを終了する放送がアナウンスされる俺は亞麻寺から雫を見つけた連絡があり二人と合流する事ができた。


「たく、雫何も言わずに勝手にいなくなるなよ」


「いやお兄ちゃん聞いてよ」


 それから雫の話を聞くと雫は壇上に上がってからの記憶がないらしい。


「どういう事だ亞麻寺?」


「それが……あの先輩。体育館の壇上の横に幕があるじゃないですか私はそこで眠っている雫ちゃんを見つけたんですよ」


 亞麻寺や雫の話を聞きどうやら雫は壇上に上がって宝を探している最中に後ろから誰かに眠らされたらしいそれで亞麻寺が体育館で眠っていた雫を見つけたようだ。


「雫は誰に眠らされたのか全く覚えてないのか?」


「うーん、お兄ちゃんと雫ちゃんが体育館の裏の扉から外に出るのを見たまでは覚えてるんだけどそれ以外はさっぱり」


「一旦この件は先生達に相談するとして雫を保健室に連れて行くが亞麻寺はどうする」


「ごめんなさい、雫ちゃんの事も心配なんですけど私この後少し用事があって」


「いや、用事があるなら仕方ないさ。それじゃまたな亞麻寺」


「雫ちゃんまたね~」


 亞麻寺と別れ雫を保健室に連れていき俺は養護教諭の先生に相談する。


「今見た感じは特に体に問題はなさそうだな……きっと睡眠薬や薬などで誰かに眠らされたんだろう、この件は私だけではどうしようもないから今聞いた話は他の先生達にも伝えておくから、今日は早く家に帰ってゆっくり休むように」


 それから俺と雫は家に帰宅する夕方からバイトが入っていていたが事情を説明して今日は休ませてもらった。


「それにしてもお兄ちゃんすごいね、映画のチケットと一番目玉だったテーマパークのペアチケットを見つけるなんて」


「これはたまたま雫を探している時に校舎を歩いていたら見つけただけだ。でもまさか雫があんな目にあっていたとは思いもよらなかったが……」


「もう気にしなくていいよ、それよりほらお兄ちゃん映画のチケット。朝に話したよね今度の休日一緒に映画を見に行こうって」


「ああ……それは覚えてるが。本当に一緒に行くつもりなのか」


「いいじゃん昔は家族皆でよく見に行ってたでしょそれに最近はお兄ちゃんもバイトとかで忙しくて中々一緒に遊べなかったし」


「そうだな、久しぶりに休日は出かけて二人で思い切り遊ぶか」


 雫の楽しそうな顔や今日あった出来事も考えて休日は二人で思い

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妹と十数年ぶりに再会した俺は捨てた両親に復讐を誓う ゆきいろ @nineyuki

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