第4話体育倉庫でびしょ濡れのお嬢様

 

 昼休みも終わって教室で授業を受けていた時、窓際の席に座る者は昼終わりに太陽の気持ちの良さで眠気が強くなる。


 俺も太陽のおかげで今非常に眠たくなってきていた。そしてふと窓の下を覗き込むと、ロングストレートの黒髪の女子生徒が女子生徒数人に連れていかれる様子が見えた。


「先生、非常に……漏れそうになっているのでトイレに行ってきてもいいですか」


「本間……」


 教室ではクラスメイト達から笑いの声が上がり先生にはやれやれと呆れられた顔をされたが俺は教室から抜け出す事に成功する。そして窓から見えた場所に向かう。


「たしかあっちの方に歩いていた気がするが、たしかあっちは体育倉庫だった気がするな」


 俺は先程窓から目撃した場所に立っていた。そしてその向かった先には体育倉庫があった事を思い出す。


 体操服を着てるなら道具とか取りに行くと普通に思うがあの感じはどちらかというと先生に見つかると厄介な感じだろうそれに窓から見えた時全員体操服なんて着ていなかった


 ここで俺が首を突っ込んでもいいものか考えている。これは厄介事に巻き込まれる可能性が非常に高い、ならば別に俺ではなく先生に頼った方がよかったのではないか、そんな考えが今浮かんでしまう。


 すると体育倉庫から数人の女子生徒の笑い声が聞こえてきた、考える間もなく体育倉庫に向かいその頑丈な扉をガラガラガラと開ける。


 どうやら俺の思っていた通りの事が体育倉庫でおこなわれていた、今日二度会った皇鈴という女子生徒が制服も体もびしょ濡れになりマットの上に座らされていた。


 体育倉庫の扉が突然開いたのに驚いたのか数人の女子生徒達は一目散に逃げていく。

 だが俺は一人だけ腕を捕まえて逃がさずにいた。


「さすがにこれを見て逃がす訳にはいかないなぁ」


「おい、離せよ」


 金髪で少し褐色気味の女子生徒は俺をギロリと睨み高圧的な態度で威圧的な聞いた声を出すこれはまさしく金髪のギャルと呼んでも文句なんていわれないだろう。


 他の女子生徒達には逃げられたが俺が顔を覚えたこれから先生達に報告に行こうとすると皇鈴がマットから立ち上がり俺に近付いてくると俺が腕を掴んでいた女子生徒を離してしまう。


「? !!」


 そして金髪のギャルは不思議そうに皇鈴を見たあと何も言わず慌てて先程の女子生徒が逃げた方向に走って体育倉庫から逃げていく。


「なんであんな目に合わされたのにそのまま逃がした理由とか聞いてもいいかな」


 俺は皇鈴にハンカチを手渡し制服のブレザーを貸してあげるとあの金髪ギャルを逃がした理由を聞く。


「普段からああいう輩の仕打ちには慣れた物です。中学は女子だけが通っている学校でしたのでそれ程多くはありませんでしたが小学生の頃にはよく顔を殴られたりお金などを要求してくる者達が多くいました、なので今更水をかけられたぐらいで私は動じません」


「とりあえず、この件は先生達に相談……」


 俺が言いかけると皇鈴は突然俺に向かって歩き始めて、俺は皇鈴に体育倉庫の壁際まで追い詰められる。


「この件の事は誰にも言わず内緒でお願いいたします」


「いや……さすがに黙っている訳には」


「誰にも言わず内緒でお願いいたします」


 皇鈴は誰にも何も言わせないような力強い目をしていた。


「わかった……俺もこの件は俺も黙っておく事にするよ。だが次にあんな現場を目撃したらさすがに」


「それ以上言わなくても分かります次にあんな現場を目撃したら真っ先に先生に報告するですね」


 皇鈴は俺の言葉を遮り逆に自分で微笑み言ってみせる。


「では、私は今日はこのまま家に帰宅しようと思います。この制服のまま授業を受ける訳にはいきませんし替えの制服など持っていないので。本間讐さん今日は大変お世話になりました学園の案内以外にもまだ知り合って間もない私にこんなによくしていただいた方に会うのは初めてですね」


「たまたま窓を眺めていたら誰かに連れられていく君を見た気がしたからね」


「お嬢様お迎えに上がりました」


 するとスーツを着た短い黒髪で長身の男性が俺達の前に現れる。


「私の運転手兼執事を任せている者です。先程学園まで迎えに来るようにメールを送っておきました」


 先程にしてはまだあれが起こって数十分程しか経っていないし皇鈴が隠れてメールを打っていた様子も俺は見ていない、だが彼は皇鈴を迎えに来た様子だ。もしかしてどこか学園付近の場所で待機でもしていたのかと考えていると。


「それでは本間讐さん、さようなら」


 最後に皇鈴は俺に声をかけてニッコリと微笑みスーツの男性と共に歩いて体育倉庫から離れていく。


「そういやハンカチとブレザー返してもらうの忘れた」


 別に今はなくてもそこまで困らないし皇鈴の連絡先も知らなかった俺はどうすればいいか悩んだが追いかける事はせずに授業を受けに教室まで戻った。

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