第3話昼休み義妹、後輩、お嬢様と図書室
昼休みになり俺が教室で海堂とは別の友人と弁当の準備をしていると義妹が教室へとやってきた。
「お兄ちゃん~」
俺のお腹に飛び込んで抱きついてきた義妹の名は本間雫という。
「雫か!? なんで俺のクラスが分かった」
まだ入学して間もない雫、だが雫にまだ俺のクラスを教えていないはずだ。
「お昼休みになって片っ端から教室を回ってお兄ちゃんがいるか確かめたから少し時間かかったけどやっと会えたぁ。はぁぁぁ……お兄ちゃんのにおい安心する」
雫が俺の制服のにおいを子犬のように嗅いでいるのをクラスメイト達が注目のような視線を浴びる。
「とりあえず……一旦教室から出るぞ」
「ほへ?」
俺は雫を両手で抱えて早足で教室から出ていき閉まっている図書室へと着く。
この図書室は昼休みは閉まっているが放課後に利用する生徒がいる為その時には開放されている。
だが俺は去年図書委員をしていてその時昼休みに本を読めないと不便なので図書室の合鍵を作った、勿論黙ってではなくとある先生から裏の取引で入手した。
図書室の鍵を開けて、抱えていた雫と共に入ると図書室の鍵を閉める。
「いやんお兄ちゃんったら、昼休みなのにこんな誰もいない図書室なんかに私を連れ込んで一体私にな・に・す・る・つ・も・り」
とりあえず俺は雫の頭に軽くチョップする。
「雫なぁ……あれ程俺のクラスには来るなって言っておいただろ。ただでさえお前は人に注目されてるんだから」
「あれぐらい仲のいい兄妹のスキンシップだって思われるよ。それよりお兄ちゃん教室の窓から見てたけど朝から私以外の子と一緒に歩いてたよね」
雫の表情は打って代わりさっきの笑みはどこへいったのか黒い目をして別の意味で微笑んだ気がする。
「なんだ見てたのかあの子はただ学園の道が分からないらしくて案内で一緒に歩いてただけだぞ。困ってる人がいたら助けろそう言われて育ったのは雫も知ってるし一緒だろ」
「うん、うん、そうだよね。お兄ちゃんは困ってる人がいれば助けちゃう優しい性格だもんねでもその優しい性格のお兄ちゃんにつけ込んだりする女の子もいそうだから私心配で」
「心配しなくても大丈夫だって」
俺は雫の頭を優しく撫でるすると雫の表情は元に戻る雫は少し重いブラコンだ。なので俺は普段から女子と関わらないでいるもし俺が女子と関わっているのを雫が知れば何をしでかすか分からないからだ。
「とりあえず雫、学園で目立つし今後はあまり俺に抱きつくような事だったり気安く人前でベタベタするなよ」
「えー」
雫は不満の声をあげる。
「それじゃ学園じゃなくて家ならいい?」
「まぁ家でならかまわないよ、けど限度ってものがあるからな、この間みたいに俺が風呂に入ってる時に裸で迫ってくるなよ。もう俺達も小さいままじゃなくて大人になったんだから」
「はーい気をつける。それよりお兄ちゃんお昼どうする私はお兄ちゃんと食べようと思って持ってきたけど……お兄ちゃん教室に忘れてきたんじゃない?」
確かに俺は教室で弁当を食べる準備をしていた所に雫がやってきたので教室に弁当を忘れていた。
「あー購買近いし今から何か買ってくるよ、雫はここで待っていてくれ」
「えーせっかくだし私もついて行くよ」
「さっき言ったばかりだろ、雫と一緒だと目立つって、すぐに買って戻ってくるから」
「はーい」
雫を図書室に残して俺はすぐに購買に向かっておにぎりとお茶を購入して、図書室に戻ろうとした所廊下で校長と教師数人が慌てた姿を見つける。
「彼女は見つかったか!?」
「いえ、学園中を探しましたがどこにも」
「まずいぞ、早く見つけなければ私がこの学園から追い出される可能性が……まだ探していない所は本当にないのか!?」
「あと探していない所といえば屋上だけかと」
「よし屋上に行くぞ」
誰か探しているのか校長は教師数人を連れて階段を上がり屋上へと向かって行く。
「まぁ俺には関係ない事だろ」
慌てた姿の校長達を見た俺は朝のあの出来事があってから少し気分が晴れた気持ちになった。
図書室の扉を開けると雫は席に座って誰かと話しているようだった、雫の隣にもう一人席に座って雫の話を聞きながら本を読んでいた。だが雫の隣に座っていた女子の顔には見覚えがあった。
「あ、お兄ちゃんおかえり~」
「え!?先輩」
「もしかしてお前、
雫が俺が戻ってきた事に気付いて雫の隣に座っていた女子も俺と目が合うと驚いた声をあげる。
「え!?え!?なになに、もしかして二人って知り合いなの」
そして雫も驚いていた。それから数分二人は同じクラスの同級生でたまたま隣の席同士だったから少し話をしたら仲良くなったらしい俺は対面の席に座り雫の話を聞いて納得する。
「そうだったのか、いやまぁ亞麻寺がこの学園を受けたのにもビックリだけどまさか雫にこんなに早く友人ができるとは思ってなかったな」
「そう、そう、それよりも私はお兄ちゃんと咲ちゃんの関係の方が気になるよ」
「簡単に言えば亞麻寺は俺の中学の後輩だな、俺が図書委員をしていた頃に転校してきた後輩の女子生徒がいてそれが亞麻寺だったんだが少ない人数だった図書委員をやってくれてな、それで俺が面倒をみてやったってだけだ」
「へー」
「図書委員の時以外にもたまに休日とかに勉強も教えてもらっていたりしたんだよ」
「へーもしかして中学の頃たまにお兄ちゃんが出かける日が増えたのって妃ちゃん絡みだったんだ」
雫の微笑む様子からして危険な感じが伝わってくる。
「あーまぁたまにな」
「?」
亞麻寺は雫の様子が少しおかしい事に気付いたのだろうが何も口に出さない。すると図書室の扉が数度ノックされる音が聞こえてきた。俺が扉を開けるとそこには今日案内した女子生徒が立っていて俺を見上げる。
「確か君は皇鈴さんだったよね」
「はい、今日道案内してくれたお礼をまだ言えていなかったので休み時間ずっとあなたを探していた所ここに入って行くのを目にしたので」
「いや、そんなの気にしなくていいのに」
「いえ、私の家で代々助けていただいた人にはお礼をと教わっているので、それよりも他の人の話し声も聞こえていましたがもしかしてお邪魔でしたでしょうか」
皇鈴は図書室の奥を見ると俺の他にも人がいることに気付く。
「お兄ちゃん、その子って今日お兄ちゃんと一緒に学園に来てた子だよね」
奥から雫が顔を出してくる。その後には亞麻寺も気になったのか雫の雫の隣から顔を出す。
「んー? 先輩この子、それに皇鈴ってまさか!?」
雫は名前を聞いても驚いていなかったが亞麻寺は凄く驚いていた。
「亞麻寺は知っているのか」
「私もそこまで詳しくは知らないですけど皇財閥の娘さんで今回の入試で首席合格でこの学園に入学したってぐらいしか」
「ほへーあなたが首席だったんだ。私はあなたの二番目の成績で入試に合格した本間雫っていうんだよろしくね」
「どうも」
雫は皇鈴に握手を求め彼女もそれに応え雫と皇鈴は握手をかわす。
「そういえばさっき先生達が君の事を探し回っていたみたいだよ」
「あの方達ですか正直に言って私はあの方達によい好感を持てませんね、あの方達が興味あるのは皇財閥という私の肩書きだけでしょうそれに今朝のあなたを押し退けたり、私とあなたであの態度の変わりようときたら」
「あ~俺は全然気にしてないから」
皇鈴は少し怒った口調で校長達の事を言う。
「あの~もう少しで昼休みも終わりそうですが、皆さんもうお昼は食べられたのですか」
俺達の会話を聞いていた亞麻寺が突然そんな事を言ったので俺は図書室にかけてある壁掛け時計に目をやる。確かに亞麻寺のいう通りあと数分もしないうちに昼休みが終わろうとしていた。
「悪い雫、今日はもう一緒に食べれそうにないからまた今度埋め合わせするよ」
「ううん、私は全然いいけど。それじゃお兄ちゃん私は先に行くね」
雫は文句や不満も言わなかった、普段ならぶうぶうとぶーたれて文句や不満を漏らすあの雫が何も言わなかったのだ。
「皇鈴」
図書室から出て行く前に雫は最後に皇鈴という名前だけ呟いて雫は考え込んだ様子で図書室から出ていくのだった。
「亞麻寺に皇さんも悪いね、実はこの図書室は普段から昼休みに開いてる訳じゃないんだ。俺がこの図書室の合鍵を持っているから今日はたまたま開いてただけで」
「そうなのですね、では今後もし昼休みに本が読みたい時はあなたに頼めばよろしいのでしょうか」
「あ、私も教室より図書室の方が勉強捗るからできれば昼休みに本が」
亞麻寺の会話に突然図書室の扉が開かれる。
「はぁはぁはぁ、皇鈴様こんな所にいらっしゃいましたか」
図書室の扉を開けたのは汗をかいてる校長と校長の後ろにもう一人別の教師がいた。
「見つかってしまいましたか、それでは……そういえば私まだあなたのお名前をおうかがいしておりませんでした」
「俺か…俺の名前は本間讐だ」
「本間……しゅうはどんな漢字ですか」
「リベンジする方の復讐するで讐だ」
「私は亞麻寺咲、皇さんもしよかったら私とも仲良くなってほしいな」
「本間讐さんに亞麻寺咲さんですか、ではまたお会いしましょう」
そう言って皇鈴は朝同様に校長に連れられていくように図書室から出て行く。
「それじゃ先輩私もそろそろ戻りますね、それとさっき会話の邪魔が入りましたけど私も昼に勉強する時は図書室の方が捗るできれば先輩にまた勉強を教えてもらいたいんですけど」
「ああ、それくらいならいいぞ」
俺は亞麻寺の頭を撫でるそうしているとふと昔の事を思い出した。中学の頃に亞麻寺に勉強を教えている時に何度か亞麻寺の頭を撫でる事があっただが亞麻寺は嫌な顔せずにそれを受け入れていた。
「あの……私も、もう高校生になったんですし……その……先輩も女心というものを学んでほしいです」
だが今の亞麻寺は恥ずかしがっている様子で顔を真っ赤にさせていた、俺はすぐに頭を撫でるのをやめて亞麻寺に謝る。
「悪い、悪い。多分亞麻寺の事も雫と同じように妹みたいに思ってるからつい癖で」
「もういいです。それより先輩約束ですからねまた勉強教えてもらいますから」
亞麻寺は慌てて図書室から出て行く、結局昼も食う事が出来ずにいた昼休みが終わる前に図書室の鍵を閉めて教室に戻ろうとすると俺は思い出したように制服のポケットを漁る。
今朝おばあさんからお礼に貰ったお菓子があった事に気付いて、俺は飴玉の袋を開けてその飴玉を口に入れコロコロと転がしながら教室に戻っていった。
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