第2話 交わされた約束
ハイキング当日、朝早くに校庭に集まりバスに乗る。
隣のクラスのあの子は、1つ後ろのバスで、一緒にはならない。
2時間くらいで、ハイキングコースの入口に到着するらしいから、寝る。
天気はあまり良くはないが、雨も降っておらず、微妙な天気。
学校の行事って、何かうざいと思いながら窓側の席なので、窓にもたれて寝ようと思ったが、結局、寝られずにいた。
バスが高速道路に入って暫くすると、一定のエンジンノイズが心地よく響き、落ちた。気が付いたらバスは駐車場に到着していた。
「点呼を取ります。各クラスの学級委員は、自分のクラスの人数を先生に報告してください。」
「全員揃っています。」
「揃ったクラスから、出発してください。途中休憩するとこは有りますが、結構な山歩きになるので、各自のペースで構いません。無理はしないように、気分が悪くなったら、養護教諭に申し出るように。以上、楽しんで来てください。」
朝から元気な、学年主任の挨拶が終わり、出発をした。結局、1組から順に出発をして、僕のクラスは7組、あの子は8組だった。
歩き始めて1時間位過ぎた頃、それぞれのクラスもバラバラになって来出して、例の3人組が、あの子を連れてやって来た。
「吉田君、まってー」
後ろを振り返ると、大きなバックを抱えてやって来た。
「何そのバック?何を持ってきたの?」
「女子は、色々必要なの。それより、容子と一緒に歩いてあげて。」と言って背中を押し出した。
「う、うん。いいけど。」と言って、隣り合って歩き出した。
暫く、黙って歩いていたが「大丈夫、疲れてない?」と聞いても、首を横に振るだけ。また暫く歩いていると、少しペースが遅れ始めた。
「息が上がって少し苦しそうだけど?」って聞いてみるが、又首を振るだけ。
やっぱり妙な子だ。そう思いながら、アップダウンの道を過ぎて、平らなところに出た。湿原のような所で、360度山に囲まれている。天気は相変わらず曇って居たが、むしろその方がありがたかった。
山の空気を思いきり吸い込む。新鮮な空気とともに、微かな花の香りのようないい匂いがした。良く考えると、女子の使う香水のような甘い香りがした。
「香水付けてる?」
「ちょっとだけ制汗剤、汗かいたら臭いでしょ?」と言ってまた目を伏せた。
少しして「此処で休憩します。」と先生の声。
辺りは平坦でところどころに、丸太で作ったベンチがある。
女子は皆そのベンチに座り、僕は、シートを敷いて地面に座った。
おずおずと「あのぅ、隣良いですか?」って聞いて来たから「良いよ」って言ったら自分の持って来たシートを広げ始めた。遅れて例の3人、私たちも、と言いながら周りにシートを敷きだしたから「おっ、吉田モテるな。」と言って生徒指導の先生に揶揄われた。
「そんなんじゃないですよ。」と否定しつつも、楽しかった。
普段学校では制服を着ている女子が、私服でいると新鮮だった。
皆、思い思いに弁当を広げ、例の3人は運動会の重箱のような弁当を作って来た。
何やら、お互いの親が知り合いらしく、3人分を纏めて母親たちが作ってくれてらしい。それ目当てに、男子が群がる。ちょっとした出店のようだ。
「吉田君もよかっら。」って声かけられたから、食後のリンゴをひと切れ頂いた。
食事も終わり、軽くなったナップサックを背負い、また歩き出す。辺りは黄色い日光キスゲが咲きとてもきれいな景色だが、10代にその風景は理解できる筈もなく、ただ騒がしい想い出が残っただけだった。
暫く歩くと、透明な水面をたたえた湖に出た。深いエメラルドグリーンを内包した湖面には、静寂が宿っていて神秘的だった。
皆思い思いに写真を撮り、僕もあの子とツーショット写真を、3人組に取ってもらった。僕は、持っていた自分のカメラで、綺麗な湖を撮影した。その後、あの子を呼び、湖の前に立たせて、何枚かの写真を撮った。
湖に30分程度の自由時間があり、記念撮影をしたが、また歩き出し、行けども行けども山道で、さすがに足が痛くなってきた。中には座り込んでいる女子も居たが、弱っちい所を、あの子に見せたくないので、頑張って歩いた。
漸く、バスの止まっている駐車場に着いた。別々のバスなので、バスに乗り込む前に、あの子から、「今度、学校が終わったら会ってくれますか?」と聞かれたので
「いいよ。それよりか、今度の日曜、映画見に行かないか?」と誘ってみた。
「えっ、誘ってくれるんですか?はい、もちろん行きます。と言ってお互いのバスに分かれた。
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