第5話 オダジマとカレンダー  一年一三ヶ月説の提唱

 わたくしの仕事場のデスクの前には、一枚で一六ヶ月分のカレンダーが貼ってあります。何ヶ月も先に予定を入れることがあるので、一覧性がないと使いにくいからです。毎年年末に貰うカレンダーのお尻についている一二ヶ月分の一覧と、翌年の一~四月分の一六ヶ月をセロテープでくっつけて使っています。


 その横には、年齢早見表が貼ってあります。西暦と昭和・平成・令和と年齢が横並びになっていて一目でわかるもので、特に西暦と昭和・平成の照合が重宝しています。「ンなもの必要なのか?」と思ったアナタ、それなら二〇〇二年は平成何年か三秒以内に答えてみなさい。ホーラ出来ないでしょう? オホホホ。今チラッと早見表をみたら平成一四年でしたよ。


 で、これらカレンダーについて、前々から思っていたのですが、なんで毎年毎年一二枚も印刷して、しかも大の月と小の月があるのでしょうか。二月なんか、大小の概念も超越して二八日しかないじゃないですか。大の月群から、二月に二日トレードすれば、全体の凸凹がかなり少なくなるのに、なんでわざわざ二八日にすんだ? ということで、わたくしが、ずっと前から提唱してきたのが「一年一三ヶ月説」です。


 どういうものかというと、一年を二八日×一三月にして、一三月にはもう一日くっつけて二九日にすると、「あら不思議?  三六五日になるワ!」という荒業で、これだと、各月、必ず曜日と日にちが合致するので、すごく使いやすくなるんですよ。一月一日が月曜日なら、その年は一日はずーっと月曜日なんです。てことは二日はずっと火曜日。便利でしょう? 多分最初の一~二か月で全部覚えてしまうんじゃないでしょうか。カレンダーも一三ヶ月共通で使えるから、最初の月のだけ一枚あれば足りるんですよ。


 と思って調べてみたら、意外なことに「一年一三ヶ月説」は昔から提唱されていて、割と有名な学者も導入を叫んでいたのでした。しかも、大晦日は一三月二九日じゃなくて、「時間を外した日」と呼んで(何の訳でしょうか? タイムレスデー?)、どこにも属さない日にしてるらしいです。「じゃ閏年はどうすんだ」と思ったら、「時間を外した日その二」をくっつけるんですって。


 で、これだと、「永久に曜日と日にちが合致するので、そもそもカレンダーを作る必要がないヨ」とのことでした。‥‥‥えっ? なんスかそりゃ。てことは「時間を外した日」は日にちもなければ曜日もないのですか? 小松左京(日本SFの大家。代表作「日本沈没」「復活の日」)

の世界ですか?


 そりゃちょっとやりすぎじゃないのか? ということで、一応、大晦日に日にちと曜日を割り振って、「永久じゃないけど、各年の日にちと曜日は必ず合致するのですよ」というオダジマ折衷説は結構いい出来な気がするんですけどね。


 問題は、一三じゃどうやっても割り切れないので、半期や四半期の概念がどっかに行ってしまうことと、四季の分かれ目に困ることですが、後者は夏を六月~九月にすれば解決するんじゃないでしょうか。ここんとこ温暖化で九月も暑いし。あと欧米では「一三」が嫌われるということもあるかも知れませんが、「最終月」でも「ファイナル月」でもいいから、名前だけ変えてしまえば済む話です。最終は「Fin」だから、それらしくnをmにして最終月は「Fimber」でどうでしょう?


 あ、あと、カレンダーにお願いしたいのは、昭和の日なんて要らないから、代わりに六月第三週の水曜日を休みにして欲しいです。GW明けから海の日まで祝日がなくてダラダラしてしまうじゃないですか。名称は、「雨の日」がいいですね。雨だからみんな家でおとなしくすんの。


→ 今、気になって調べてみたら、今年の四月四日に明治生まれの男性が亡くなって、国内の明治生まれの男性はゼロになったそうです。女性はまだ何人かご存命のようです。今年は昭和九九年ですから、大正の一四年を足すと、一番若い明治生まれの方でも一一三歳ですからね。何年かしたら、一人もいなくなると思います。最後の方はきっとニュースに取り上げられるんでしょうね。

 あと、「時間を外した日」って、SFで使えそうですよね。あるとき王様が「来年から一三月制に移行する」と決めて、王都の暦担当の役人オダジマがカレンダー作って大教会に納めてお祈りしたら、「時間を外した日」で本当に時間が止まってしまって、カレンダー作ったオダジマだけが自由に行動できる、みたいな。ヒロインを絡めにくいのが難点ではありますが。

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