第4話 オダジマと酔客 カウンターのお隣は超大物?
はじめに(作者注)
このお話しは、一〇年位前に書いたものだったと思います。
ちょうどその頃、ジャイアンツのH監督が大昔に不倫してたことがバレ、それをネタに闇の紳士に揺すられ、解決金として金一億円を払ったという事件が世間を騒がせていました。監督を辞めるの辞めないのというような話であり、わたくしは、「そんな昔のこたいいじゃないか。女房だって全部知ってるんだろう?」と思っていたのですが、一億円という金額のインパクトもあって、その後もしばらく燻っておりました。これが逆に選手の団結をもたらし、「監督が苦しい時は選手が頑張って支えなければ!」とばかりに連勝街道を突っ走って見事大差で優勝したのには感動しました。大男たちにもなんとも健気な一面があるもので、ちょっとホロリとくる話です。今調べてみたら、長野、阿部、村田、坂本、由伸、内海あたりが主力でした。すごい豪華メンバーでしたね。
そして、当時、ジャイアンツのオーナーをされていたのが、渡邉恒〇氏で、プロ野球界で絶大な権力を誇っていました。その実力故にいろいろと問題や軋轢を起こす人物でした。いわゆる「ナベツネ」ですね。
その彼を登場人物にして、この「オダジマと酔客」を考えたのですが、あんまり上品な話でもないし、話題が一過性のものなので、当初は世に出すつもりもなかったのです。ですが、飲み会等で中身だけ披露すると、限られた一部の人にはクリティカルヒットすることが分かったので、気をよくしてブログにアップしたものです。
~オダジマと酔客 マッチョな老紳士~
その日私は、某大手商社の仁志田氏(大変似てるが仮名。以下「西田氏」と略す)とともに、有楽町よみうりホールにほど近い焼き鳥屋のカウンターで一杯やっていた。ネギマ、レバー、ツクネ(卵黄別添え)をいずれもタレとシオで食べ、生を三つほど飲んだあたりで、話題は世間を騒がすH監督問題に移った。
二人とも、「そんな昔のこと今のHさんに関係ないだろう。女房にも謝って納得して貰ってるっていうし」という意見であったものの、「しかし、一億円という金額もあって、世間は面白おかしく書きたてている。このままでは最悪、監督を勇退に追い込まれてしまうのではないか。そうなったら残念な話だ」ということも言い合っていた。
すると、それまで一人で黙って飲んでいた隣の老紳士が、ボソッと、
「いや、H君はワシが守る。絶対に辞めさせん‥‥‥」とつぶやいたのが聞こえた。
私は、その紳士をチラと見た。見たが、そのとたん、驚きのあまりしばらく口が利けなくなってしまった。ここだけの話、私は「心身共にマッチョな○○(職業名)」を標ぼうしてハードなトレーニングを一〇年以上も続けているため、マッチョな肉体の持ち主を賛美するのはもちろんであるが、いつの間にか相手のメンタル面についてもマッチョ度を見通せるマッチョスコープ能力を身に付けているのだ。
そのスコープで見た老紳士のメンタル面たるや、もはや常人のレベルをはるかに超え、全盛時のハルク・ホーガン(二〇一㎝ 一四五㎏)のような、筋肉が隆々と盛り上がった大男であった。あくまでメンタル面だけだが。私は、過去にこのようなメンタルマッチョの持ち主に会ったことは一度もない。ないが、なんかいつも東京都庁の前を通りがかると、最上階からそんな雰囲気が黄色い煙のようにモワモワと漂って来ることも以前から感じていた。が、おそらく同一人物ではないだろう。
紳士 ワシはな、昔から、ハンサムな選手が好きだったんじゃ
オダ そうですね。Hさん現役時代は本当にカッコよかったですものね。女の人もほっときませんよね
紳士 そう、その前なら、定岡、篠塚、柴田、高田、長嶋、‥‥‥堀内‥‥‥
オダ い、いま、明らかにハンサムじゃない人が一人混じってましたよ
紳士 とにかくH君は辞めさせん。一億くらいワシがどうにでもしてやる!
オダ だからもう払っちゃったんですって。それで大騒ぎになってるんでしょう?
紳士 ふん、何にせよ、男の仕事場とは関係ない話だ。人の噂も七十五日。チームが勝っておればそのうち収まるだろう
オダ まあそうでしょうね。あと1~2週間のことじゃないですか。…ああそうだ、まだお名前をお伺いしておりませんでした。私は新宿で○○をしておりますオダジマと申します
紳士 ワシか、ワシは‥‥‥、おお、そう言えば、今朝のおかずはおでんだったな
オダ は?
紳士 昨日はすき焼き、一昨日はしゃぶしゃぶ、その前はキムチ鍋だった
オダ お鍋お好きなんですね、ですがそれが何か?
紳士 ワシはな‥‥‥いつもナベなんじゃ‥‥‥。ツネにナベなんじゃ!
オダ ‥‥‥ああ、なるほど! そうだったんですね。良く分かりました。存じあげませんで、大変失礼しました
紳士 分かって貰えたようじゃな。このような場ではあまり公にはできんのだ。理解してくれ
オダ 西田さん、この方、「ツネナベさん」っておっしゃるんだって。珍しいお名前だね。
紳士 ち、ちがーう!
→ とまあ、こんな小品です。今思えば、かの老紳士も、例の球界再編問題で「たかが選手が」と失言してしまい、野球ファンからは蛇蝎のごとく嫌われていましたが、球団内からは悪い話は聞きませんでしたし、きっと面倒見のいい親分肌の人だったんだと思います。もう何年も前に、鬼籍に入られましたが、良くも悪くも確かな実力のある人物だったのは本当ですね。著作も読んだことがありますが、なかなか読ませました。
あと、作中の「都庁のてっぺんからモワモワ」というのは、この当時ですから、石原〇太郎さんのことですね。とはいえ、今のK池百合子さんも、マッチョスコープでみたら、かつての女子プロの名ヒール、デビル雅美さんのように 筋骨隆々であろうことは間違いありません。
都知事選、正念場ですね。どうなりますでしょうか。
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