第43話 日替わり彼女
「我に名前は無い! 好きな様に呼ぶがよい!」
「リヒト、私名前が無いの……つけてくれないかな?」
「リヒトくん……愛しているよ……名前を頂戴」
「リヒトお兄ちゃん、名前頂戴」
教会に来るようにジャミル様に言われて来た。
来た所、いきなり黒髪の少女? 幼女? に声を掛けられた。
大人びた感じだが、背が低い……感じが……する。
だけど、何故なのだろうか?
彼女を見ていると涙が出て来て止まらなくなる。
何故だ……そうか、彼女はどことなく幼馴染たちに似ているからだ。
「ふっ! リヒトよ! これで我は借りを返したぞ! 彼女は貴殿が魔族に尽くしてくれた褒美だ受け取るが良い! あとは、冒険者として生きるも良し、我に仕えるも良い……ついでに爵位……男爵の地位もくれてやろうぞ」
「あの……」
「我が名はデモーニッシュこの国の王子だ……すまぬが凄く忙しいのだ! あとの事はそこのジャミルに聞くが良い」
王子……そんな偉い人が何故此処に……
意味が解らず唖然としている俺に頭を下げるとデモーニッシュ王子は黒ずくめの男達を連れ教会から出て行った。
黒ずくめの男たちの1人が俺を見てニヤニヤしながら……
「まぁ王子たちに感謝するんだな」
そう言っていた。
借り? 爵位? 意味が解らない。
それより、この少女はいったいなんなんだ?
「お前」「リヒト」「リヒトくん」「リヒトお兄ちゃん」
可笑しい……誰とは解らないがどうしても彼女を見ていると幼馴染を思いだす。
彼女達はもう居ない。
何故、彼女は……ソニアのようにケイトのように、リタのように俺を呼ぶんだ。
「リヒト……ちょっと良いかね?」
「ジャミル様……」
ジャミル様は彼女について俺に説明してくれた。
どうりで……どうりで……幼馴染の面影がある筈だ。
「そんな事迄してくれたのですか?」
「私は神職者だからね! 君の様な存在を放っておけないのだよ! それに君の事は邪神様も気にかけていてね……今回は、神、王族、この国の腕利きのネクロマンサーが揃ったからこそ出来た奇跡なんだ……決して私一人で成した事じゃ無い……」
何だよ……魔族の方が人間よりずうっと優しいじゃないかよ。
「ううっ……ううっ、ありがとうございます! 感謝します……一生感謝します」
「それを言うのは我らだ……教皇を倒し、勇者を倒したのだからね。 最高の褒美が貰えるのは当たり前の事だ」
「それで彼女は……」
「今はね、四人の魂が存在している。だから今は四人と話せる状態だ……だが、やがて4つの魂は混ざり合って一人になる。それは彼女達であって彼女でない人物になる。ただ根源である魂は彼女達の物には違いないんだ……これが限界だったんだ。神の力を持ってしてもね」
「それでも、俺は感謝します……彼女達を傍に感じられるのですから……」
「そうか」
「それで、暫く彼女と話をさせて頂いても良いですか?」
「それなら、対話室を使って貰って構わない。じっくりと話をすると良い」
「ありがとうございます」
俺はジャミル様にお礼を言い彼女と一緒に部屋を移った。
◆◆◆
「え~と」
「我は元は魔王クロフォードだった人格じゃ! まぁやがて統合されて1人の人格になるが別に悔いてはおらんぞ! 我が一族は両性具有……男女どちらでもあるから男を愛する事は苦痛ではないからのぉ! ……教皇と勇者を倒した男に嫁ぐのも悪くない……あとは引っ込んでいるゆえ。話あうのじゃぞ!」
「解りました」
これが魔王の魂と言う事か?
「リヒト、解っていると思うけど……私は……」
「ソニアだろう? 解るよ」
「まぁ、幼馴染で婚約者だったんだから当たり前よね! 話は聞いたと思うけど、私達は魂の消耗が激しすぎて全員で1人にしかなれないんだって……」
「それって、ソニアじゃ無くなるって事?」
「そうじゃないみたいよ! 全員の記憶をもった1人になるみたい。性格は解らないけどちゃんと私として心も存在するから、ソニアであってソニアじゃない……そういう存在になるようよ……まぁ、私もケイトもリタも全員がリヒトを好きなんだから……間違いなくリヒトの事を愛す存在に違いないから、私達を愛したように愛してよね……余り独り占めしちゃ悪いからケイトに変わるね」
「ソニアでもあるなら愛せるよ……」
「安心したわ」
「今度は僕の番だね……まぁ僕たちは仲が良かったし、一緒に居ても苦痛じゃないから問題ないよ! だけど、これで完璧に恋人でお姉ちゃんで妹になるから、リヒトはもうメロメロだよね。愛し方の形は変わるけど、僕でもあるんだ! 同じように愛してくれると嬉しいよ……4人の魂が混ざって行くまで時間はまだまだあるから……暫くはまた話せるからね、何時でも呼び出してくれて構わないから……それじゃ名残惜しいけど、リタに変わるから……」
「ケイトでもあるんだよな?」
「勿論さぁ」
「それならいいや」
「最後は私……もうリヒトお兄ちゃんに会えないと思ったし、永遠に暗闇の中を彷徨うかなって思っていたけど、こうしてまた会えて嬉しいよ! どの位お兄ちゃんのリタのままで居られるか解らないけど……混ざってもちゃんと私は居るからね……三人いつもお兄ちゃんの傍に居るから安心してね」
「リタも居てくれるならそれで良いよ」
この子は、ソニアであってケイトであってリタであって魔王なんだな……
「あの、リヒトよ……少し話をさせて貰ってよいか?」
「あっ……はい」
別れを惜しんでいる所に……なんだろう……
「たわけ、たわけ、たわけーーっ! そんなわけ無かろうがっ! 自我が消えるわけない! 今迄通りに暮らせば良いのじゃ……なにしんみりしておるのじゃ! 今迄通り、ソニアはソニア。ケイトはケイト、リタはリタとしてリヒトとつき合えば良いのじゃ」
「どういう事?」
「どういう事?」
「どういう事?」
「どういう事ですか?」
「はぁ~つくづく馬鹿じゃな……魂を一つにしないと存在出来ないから繋ぎあわせて1つにした。それが我らじゃ……4人の魂に対し体は1つ……まぁ口も一つじゃから話せるのも1人だけじゃ……だが、過去の記憶や思いはちゃんと別々に残っておるのじゃから『心は消えていく訳が無い』 今、説明するから暫く三人は黙っておるのじゃ。簡単にいえば体は一つだが頭は4つと考えればよいのじゃ……ヒュドラみたいなものじゃ」
「それって、三人が混ざって完全に1人になる事じゃ無いんですか?」
「それはちょっと違う……我々4人はリンクしておるからのう……例えば、ソニアとぶっちゃけSEXをすれば、他の三人もその感覚を感じてしまう……体も魂も一つじゃからな……何をやってもお互いに、誤魔化す事は出来ず共有してしまう。それだけじゃ」
「それって、皆にこれからも会えると言う事で間違いないですよね」
「そうじゃ……此方の4人で話し合い『日替わり』にでもするつもりじゃ……どうじゃろうか?」
「そんな事だったのですか」
「今の人格が僕、消えると思っていたよ」
「なんだ、そんな事だったんだ」
「リヒト、表に出ていられる人格が1人と言うだけじゃ……仲良く全員で遊ぶ事が出来ない……それだけの事じゃ。とはいえ頻繁に代わったらリヒトも混乱するからのぉ……『日替わり』にしたいのじゃが、どうかのう?」
「問題ないわ」
「うん、それが良いかも」
「1日位が丁度よいかもね」
「というわけじゃ、誤解させてすまなかった……暫く黙り続けるが気にするでない」
「どうしてですか?」
「順番をどうするか魂会議をするゆえな」
それから彼女は暫く身動きをしなくなった。
多分、頭だか精神なのか解らないが、4人で話し合っているんだろうな。
変わった形だが彼女達は戻ってきた。
俺にとって邪神様や魔国は……恩人だ。
この恩はいつか必ず返そう……心からそう思った。
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