第33話 魔王SIDE 魔界の勇者ドーベル?


魔国ダークランド、魔王城にて


「それは真か!」


魔王クロフォードは驚きを隠せない。


聖教国ゴッドネスに潜り込ませていた密偵からの報告。


それは意外過ぎる内容だった。


「はっ、間違いありません……」


「ダークコレダ―を呼ぶのだ!」


「はっ」


魔王軍幹部の1人、ダークコレダーの部下ドーベルがゴッドネスの中央教会を襲撃、教皇ロマリスを含み、大司教をはじめ聖騎士まで数十人を殺しまくったというのだ。


こんな強き部下を儂は知らぬ。


「魔王様にはご機嫌麗しゅう……それでクロフォード様は私めにどのような御用でしょうか?」


ダークコレダーは幹部の中じゃパッとしない奴だ。


此奴ですら中央教会の襲撃ができるかと言えば疑問がおきる。


まして、その部下に単騎で中央教会に乗り込み邪魔する奴を殺して教皇を殺すなど出来る物なのか。


「お前の部下にドーベルと言う者はおるか?」


「はい、おりましたが、あの無能がどうかしたのですか?」


「それで、そのドーベルは何処におるのだ!」


「余りに無能な為、追い出しましたが……」


「ダークコレダー、お前は何を言っておるのだ……これを見てみろ!」


儂は部下から上がってきた報告書をダークコレダーに放り投げた。


「これは……ドーベルがこれを……」


「そうだ、黒い仮面をつけた魔族がダークコレダーの部下ドーベルを名乗り、中央教会を強襲しあの憎き教皇を殺したのだ。しかも秘薬エリクサールを盗み邪魔する者は殺したそうだ! こんな優秀な部下を隠し持っていたのか? 儂が直に褒賞を与えるから連れてまいれ」


「褒賞?」


「ここ迄の功績は久しく無い……そうだな『騎士爵』を授けるゆえ連れてくるのだ」


何故かダークコレダーが固まっている。


「それが……手柄を上げるまで帰ってくるなと追い出しました」


話しを聞けば、能力が低く失敗を繰り返す為、そう言って追い出したそうだ。


「そうか……だが、追い出した途端にこの手柄だ……策略こそ無謀だがこの武功はただ事じゃない。ダークコレダーお前なら同じ事が出来るのか?」


「それはやって見なければ解りません……」


恐らくダークコレダーでは出来ない。


部下が出来た事をその上官が出来ないとは言えぬだろう。


「幹部のお前すら躊躇する事を、ドーベルは出来たのだ……此奴は魔王軍にとって貴重な戦力になる! ダークコレダーよ連れ戻して参れ」


「はっ」


「くれぐれも丁重に連れてくるのだ」


「すぐに探して参ります」


ダークコレダーはそう言うと儂の前から去って行った。


ただ一人で中央教会に乗り込み戦いをし教皇を殺し、沢山の人間を葬り去る。


そんな存在は儂は1人しか知らぬ。


それは……勇者だ。


この魔王城に少数で乗り込んでくる存在。


いや、ドーベルは単身で乗り込んだと言う話だ。


勇者でもパーティで乗り込むのだから、それ以上とも言える。


ドーベルと言う存在は魔国にとって切り札とも言えるかもしれぬ。


まだ会ってないからどんな存在か解らぬが……その人柄次第ではすぐ重用する事にしよう。


『魔界の勇者ドーベル』


魔界側に現れた勇者の存在。


その実力次第では……人族との戦況が変わるかもしれぬ。



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