第32話 ここが俺の魔国、ここが俺の魔王城

高価な飛竜艇を使い移動したから僅か3日で目的地についた。


聖教国 ゴッドネス


ここが俺の目的地だ。


ルマール王国と聖教国ゴッドネス、どちらに来るか悩んだ。


そして俺が選んだのは聖教国ゴッドネスだ。


選んだ理由は二つある。


その国の中心がルマールはお城。


ゴッドネスは教会。


ルマールの城は濠があり、跳ね橋を上げられたら潜入が難しい。


また沢山の兵や騎士が居る。


それに比べてゴッドネスの中心は城ではなく大きな教会。


形上、信者の為に開かれていて潜入はたやすい。


聖騎士は居るが……ルマールに比べれば人数は各段と減る。


それに、俺が狙っている神秘の薬エリクサールだ。 この薬はこの世界に20本と無いらしく、その殆どはゴッドネスにある。


勇者達四職が怪我を負った時、四肢欠損や眼球破壊を治すために、ここ中央教会にはかなりの本数があると聞いた事がある。


少なくとも四職分4本以下の数の訳が無い。


3本無ければ意味がない。


だから……俺は標的をゴッドネスの中央教会にした。


それに、ここの人間なら『何人殺そうと心が痛まない』


勇者保護法は『教会』が作ったものだし、勇者は女神の使者。


つまり……悪と善を入れ替えれば、女神が邪神 魔王が教皇。


そして……勇者パーティは魔王軍最強の戦士たち。


そういう事になる。


俺に絶望を与えたのは勇者ライト。


それなら、ここが俺にとっての魔王城だ。


魔族を幾ら殺しても罪悪感などわかない。


だから、俺も『教会』の人間等、何人殺しても罪悪感なんてわかない。


◆◆◆


一応、夜まで待った。


俺はあらかじめ用意しておいた黒い仮面をつけ、裏側ドアを斬った。


俺の腕からすればドアを斬るなど簡単だ。


そのまま、教会を上に上がっていく。


大体、偉い存在は上の階に居るし、宝物庫もそうだ。


「貴様、何者だ!」


まぁ、巡回している聖騎士位はいるだろう。


俺は素早く走り、持っていた剣で聖騎士の手を切り落とした。


「うがっ……ゴフッ」


すぐに後ろ側に回り口を押さえる。


「死にたくないなら、大きな声を出すな……宝物庫に案内しろ」


「うぐっ、これでも聖騎士……ぐわっ」


俺は残っていた腕を剣で斬る。


血が流れだす。


「だったら、お前を殺して、次の相手を探すだけだ! もう一度聞く……宝物庫は何処にある?」


「最上階……8階にある大きな扉が目印だ……」


「そうか……それで教皇は何処にいる?」

「ハァハァ……8階宝物庫の横……」


「そうか……それじゃ死ね」


「うがっ……」


本当に殺したわけじゃない。


剣の柄で思いっきり頭を殴った。


気絶させただけだ……放っておけば死ぬ位の怪我だが此処は教会。


多分、助かるだろう。


そのまま、音を押さえて走っていき階段を駆け上る。


夜だから、流石にそれ程の人数は居ないが……それでも警護の人間は居る。


「貴様、何者だ」


「不審者め……」


ヤバいな、相手は聖騎士二人。


さっきみたいな余裕はない。


「瞬歩」


俺はスキル瞬歩を使い加速して二人の騎士を斬り捨てた。


さっきと違い余裕はない。


だから『殺すしか無かった』


「「なっ」」


聖騎士二人には剣を抜く事もさせずに一瞬で斬り殺した。


勇者パーティでレベリングされた俺には騎士なんてこんな物だ。


今の俺を止めたいなら四職が出て来るか……S級冒険者でも来なければ止められない筈だ。


何人か聖騎士を殺しながら俺は8階にたどり着いた。


だが……宝物庫のドアは流石に頑丈で斬れなかった。


下の方から声が聞こえてきた。


「こんな所で聖騎士ウドルが死んでいるぞー! 誰か、誰かっ! 曲者だーー」


「侵入者だーー」


ヤバい!気づかれたようだ。


こうなったら宝物庫を後にして教皇を……


思いっきり蹴りをぶち込みドアを蹴破った。


「何者ですか!」


そこに居たのは教皇マロリスではなく、金髪の少女だった。


確か此奴は……シリア。


マロリスの娘だ。


『ついている』


「我が名はドーベル、偉大なる魔族四天王ダークコレダー様の部下だ」


と適当な魔族の名前をだした。


ダークコレダーは誰でも知っている魔族の四天王。


ドーベルはあてずっぽうだ。


「魔族が……なにゆえ……うぐっ、くはっ」


お腹に当身を喰らわせた。


シリアは気を失った。


シリアを担いで、反対側のドアを蹴破った。


居た。


教皇マロリスだ。


「貴様……何者だ、此処が中央教会と知っての事ですか!」


「ああっ、我が名はドーベル魔族だ! エリクサールを頂きに来た」


「魔族だと! エリクサールは殺されても渡さない……」


「そうか……俺はお前は殺さないが……お前が逆らうなら此奴を殺させて貰う……」


俺が誰を抱えているのか気がつかなかったのか?


「シリア!」


シリアの口に猿轡の様にタオルを詰め込む。


その状態で剣をあてがい右手を切断した。


「うぐっーーーうぐう」


「あ~あ、お前は殺しても言う事を聞かないのだよな? だったら娘ならどうだ? 早くしないと殺しちゃうけど……良いんだよな」


「卑怯者め……娘を人質に取るなど……うがっ」


「黙れ偽善者め……横の宝物庫のドアをあけろ……さもないと今度は……」


左手の指に剣をあてがい……中指と人指し指を切断した。


「うぐううっーーーうんうん」


「やめろ、やめてくれ……」


「これが最後のチャンスだ! 宝物庫の扉を開けてエリクサールを寄越せ、さもないと今度は首を斬る」


「解った」


多分、マロリスは殺されてもエリクサールは渡さなかっただろう。


娘の命と天秤にかけたからこそ、応じたのだ。


俺はそのまま、シリアを抱えながら宝物庫の前にきた。


「さぁ、早く開けろ……」


「今、開ける……」


「うぐっうぐっううっーー」


マロリスが呪文を唱えると大きな扉は音を立ててゆっくりと開いた。


その奥には……明らかに他の宝と違い豪華な台座に置かれているポーションが7本あった。


多分、あれがエリクサールだ。


俺は、そのままエリクサールを収納袋に1本残し、仕舞った。


手に取った1本を瓶をあけシリアに振りかける。


シリアの腕や指が生えてきた。


間違い無い。


四肢欠損を治せる薬は……エリクサールしかない。


「約策だ、娘を返して貰おう」


「そらよ!」


俺はシリアをマロリスの方に突き飛ばした。


「うぐっ、ぷはっ……この狼藉者が」


だが、それと同時に今度はマロリスの後ろに回り拘束した。


「騒ぐんじゃねー……お前が騒いだ瞬間、マロリスを殺す……そしてお前は此処から動くな」


「解ったわ……」


そのままマロリスを人質に取りながら俺は廊下にでた。


後は此処から脱出するだけだ


◆◆◆


不味いな……騒ぎを聞きつけてきた。シスターや信者、聖騎士……おおよそ40人位と鉢合わせした。


「「「「「「教皇様」」」」」」


「この賊はエリクサールを盗み持っている。儂の事は良いから、殺せ」


そうは言っても教皇は見捨てられないのだろう。


相手は動けない。


そのまま、マロリスを盾にしながら、進んでいく。


「何をしているのだ! エリクサールを魔族に渡す訳にいかぬ! 儂もろとも殺すのだーーーっ!」


「教皇様は大切ですが……エリクサールとなれば話は別です。 この賊を殺しなさい」


「解りました! 教皇様すいません! ホーリーサークル」


「ルーロン大司教、それで良い……さぁ儂を……えっ」


光の輪が俺の方に飛んできた。


元から殺すつもりだったから問題ない。


マロリスを盾代わりにして光の輪を受けた。


マロリスは上下二つに別れ絶命した。


「貴様――っ教皇様をーーっ」


こうなっては仕方が無い。


本気で斬り殺して活路を見出すしかない。


俺は狂ったように高笑いし……


「わははははっ、我が名はドーベル、人間等皆殺しだーーっ!」


そう叫びながら斬りに掛かった。


◆◆◆


どれだけの人数を殺したか解らない。


全く、余裕は無かった。


殺して、殺して殺しまわっていた。


1階にたどり着く頃には恐らく百できかない数の人間を殺した。


聖騎士だけでなく、その中にはシスターや司教などもいたが罪悪感は無い。


ライトは勇者。


その勇者に加護を与えているのが女神イシュタス。


女神イシュタスは俺にとって邪神みたいな物だ……それを信仰しているのだ……そんな人間何人死んでも心は痛まない。



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