第31話 悪夢 絶望を希望に変える為に


『リヒト、これ凄く美味しいよ』


『イカ焼きって言うらしいよ……確かに美味しいよな』


ううっ……


『この串焼き凄く美味いな』


『ああっ、ミノタウルスのステーキ串だ。旨いに決まっているよ銅貨2枚もするんだからな』


ううっ


『リヒトお兄ちゃん、このケーキの上に乗っているのなにかな?』


『イチゴだよ……それショートケーキって言うんだ』


ううっ……ソニア、ケイト……リタ……


『どうかなリヒト! 似合っている?』


『似合っているよ! だけど、それ凄いね』


白いビキニタイプの清楚だけどVゾーンが凄い際どい水着。


ソニアには凄く似合っていて、うん綺麗だった。


ううっ……


『リヒトくん、こっちはどう?』


体をくねらせながらポーズをとるケイト。


Tバックに胸がかろうじて隠れる位の紐のような水着。


『凄くセクシーだけど、凄いね』


『ちょっと恥ずかしいんだけどね』


確かにお尻の方から見ると紐みたいでお尻が丸見えだ。


『リヒトお兄ちゃん、リタはどう?』


フリルがついた可愛らしい水着を着ていて凄く可愛い。


『凄く可愛いよ』


『良かった』


ううっ……ううっ、なんで……なんで皆、死んじゃったんだよ……


折角、これから幸せになれる。


そう思っていたのに。


俺は海が見える丘に三人を埋葬し……泣きながら……


思い出と共に海に飛び込んだ……


◆◆◆


「ハァハァ……夢か!」


三人は、良かった、居ない。


どうやら、久々に思う存分したせいか、そのまま寝てしまったようだ。


なんて夢を見るんだ……体中汗でびっしょりだ。


ソニア達が死ぬ夢なんて……最悪の夢だ。


俺は、三人の状態について少し調べてみた。


性病に掛かろうが堕胎をしようが、その後適切な治療を施せば子供が産めない体になることは無い。


ちゃんと治療をしていたのだから……おかしい。


おかしいと言えば、剣が真面に振るえなくなったり、魔法が使えなくなる事だ……体力や精神が消耗したのが原因なら、もう回復して無ければおかしい。


それに消耗が原因なら、初級の呪文が使えなかったり、木刀すら振れないのはおかしすぎる。


それに三人は俺に『何か隠している』


誤魔化しているつもりかも知れないが、偶に汗をかいて苦しそうな顔をしている時もあるし、服に血の染みがついていた事があった。


そこから考えられる事は『内臓などが完全に壊れて、もう回復しない状態』になっている。


あれだけの暴力に晒されていたんだ……そうなっていてもおかしくない。


いや、それしか考えられない。


つまり、今のままじゃ直ぐにではないが、遠くない将来、夢の様に三人が死ぬ未来が待っているという事だ。


そんなのは認められない。


そんな未来、俺には耐えられない。


三人が死ぬ未来より、俺が死ぬ未来の方がまだましだ。


だったら……やる事は決まっている。


『城に乗り込み俺にとっての魔王を討伐して、邪神の秘宝を奪うしかない』


果たして、俺にそんな事は出来るのか?


ライト達は本物の魔王を倒すのだから、俺にも似たような事が出来るかも知れない。


ライト達には劣るが俺だってかなりの手練れの筈だ。


『やれるか』じゃない『やるんだ』


絶望の未来を変える為に……


やるんだ! リヒト……恐れるな。


お前にとって尤も、怖い事は三人を失う事だろう……


◆◆◆


「え~指名依頼が入ったの?」


「大丈夫なのか? 危なくないの?」


「それなら、私達もついていこうか?」


風呂上りに浴衣姿……凄くセクシーに見える。


このまま抱きしめたくなるが……明日からの事を考えて今日は我慢だ。


「大丈夫だよ! 昔護衛した商人からの護衛依頼だから。期間も2週間だから、すぐに帰ってこられるから」


「本当にそうなの? 危ない事するんじゃないの?」


ソニアに続きケイト、リタが心配そうに俺を見てくる。


後ろ髪を引かれそうだが……ここは本当に我慢だ。


「大丈夫だよ、本当に俺なら余裕の仕事だから、ただ皆と2週間離れてしまうのがちょっと寂しいだけだから……ホテル代はしっかり払っていくから、このホテルで寛いでいて」


このホテルはセキュリティも万全だ。


高いホテルのせいか絡んでくるような人も居なかった。


だからこそ、俺は安心して旅立てる。


「「「リヒト」」」


ここまで安心して三人が居られる場所は他には無かった。


「頑張って稼いでくるから」


そう言ってようやくソニア達は納得してくれた。


まぁ、村の事は内緒にしているから『お金が無い』という言い訳が通用する。


「「「そう、頑張ってね」」」


俺は笑顔で……結局、その日は少しだけ……いや、朝までいたして……三人の寝顔に後ろ髪を引かれる思いで旅立った。



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