第27話 リヒトの為に


ロイヤルピジョンは中も凄かった。


まるでお城の中みたいに綺麗な石貼りの廊下。


巨大な露天風呂プラス大きな大浴場。


ウエルカムドリンクが24時間飲み放題。


その横にはスナック……おでん? おでんってなんだ?


「おでんってなんだ? 見た事が無いぞ」


「だけど、リヒト凄く美味しそうだよ」


「う~ん良い香りがするね」


「私は横にあるポップコーンって言うのが気になるよ」


眺めているとメイドのお姉さんが此方にきた。


「それはですね! 異世界料理です。 昔異世界から来た勇者様が広めた物だそうです。よそいましょうか?」


「「「「お願いいたします」」」」


「出汁が効いていて旨い」


「変わった味だけど、凄く美味しい」


「これも冷たくて美味しいな」


「これもふわふわして美味しいよ」


結局メイドのお姉さんに一式全部人数分よそって貰った。


おでんにポップコーンにかき氷とクッキー。


これが全部食べ放題。


しかも、夜になるとこれにうどんとラーメンという食事が夜食として加わるらしい。


これだけで凄いと根が村人なせいか思ってしまう。


ソニア達も俺と同じようだ。


凄い勢いでからの皿を4人して積み上げていく。


「お客様、幾ら食べても構いませんが、当ホテルは夕食もビュッフェスタイルです……ほどほどが良いと思いますよ」


「「「「ビュッフェスタイル」」」」


なんだ、それ……


「海の幸に山の幸が食べ放題ですので勿体ないですよ」


これより豪華な物が出るのか……


「それじゃ、この辺にしておくか?」


「「「うん」」」


三人は仲良く頷いた。


◆◆◆


あの後、部屋に案内された。


畳という変わった物が床に使われていて、結構豪華な部屋だった。


浴衣という変わった物に着替えて寛ぐそうだ。


殆ど裸の状態に布一枚の服。


しかもスリットが凄い。


昔の俺なら鼻血を垂らしたかも知れないが、今の俺は違う。


「ねぇ、リヒト一緒にお風呂に入らない?」


ソニアの言葉に二人も頷く。


だけど……


「確かにこの部屋にある露天風呂も良いけど……それは食後で良いんじゃない? それより男女別だけど、大露天風呂があるからそれを楽しんでからディナーブッフェを楽しもうよ! 部屋の露天風呂は寝る前に楽しめば良いんじゃない?」


「そ、そう寝る前ね」


「確かにその方が良いか?」


「リヒトお兄ちゃんのエッチ……確かにその方が良いかもね」


顔を赤くして何を誤解……でもないか?


「それじゃ、1時間後にこの部屋で待ち合わせで良い? それまで大浴場を楽しもう」


「「「うん」」」


部屋のお風呂は……まぁ寝る前で良いよな。



久しぶりの一人。


体を洗ってから、湯舟に浸かった。


本当に凄いな……このホテル。


岩で組んだ露天風呂からは海が見えるし、本当に広々している。


今の季節は夏じゃないせいか、こんな大きなお風呂が貸し切り状態。


サウナという汗をかく部屋や、マッサージ機まであって本当に至れり尽くせりだ。


プール迄あると言うのだから、高級なホテルにしても行き過ぎている様な気がする。


今日はこの後、皆んなでディナーを食べてから……ゆっくりするか。


明日からの事は……後で考えれば良いや。


◆◆◆


リヒトと部屋で別れ私はケイトとリタと一緒に露天風呂に来ていた。


「ふぅ~リヒトが傍にいないのは久しぶりだわ」


「うんうん、いまじゃリヒトくんがいつも傍にいるのが当たり前だからな」


「私が生きているのはリヒトお兄ちゃんが居るからだから、当たり前だよ」


「そうね」


ケイトとリタも頷いた。


私達が生きているのは『リヒト』の為だけだ……


女として人としてあれ程の恥をさらした私達は、今でも『死にたい』そう思う事がある。


だけど、私達が死ぬときっとリヒトが悲しむ。


最悪『リヒトも死んでしまうかも知れない』だから死を選ぶことは出来ない。


それに『ライトが殺したい程憎い』


だけど、それを表に出したらきっとリヒトは復讐の道を生きる事になる。


だから、私達は『恥じ』と『憎しみ』の心を隠す事にした。


「それで、リヒトの事なんだけど……」


「ソニア、言わなくても何となく解かるよ……」


「うん、私達の為に……」


『リヒトがなにかした』それは三人とも気がついていた。


私達に新しい皮膚があると言う事は『誰かから剥いだ』それしかない。


そんな行為、奴隷にする事すら禁じられているから、危ない橋を渡ってくれたのは良く解る。


きっと村だって、私達絡みで火をつけたに決まっている。


だけど、それをリヒトは『知られたくない』みたいだから気がつかない事にしている。


「リヒトが何をしたのか? なんとなく解かるけど……それを口に出しちゃ駄目だからね」


「解っているさぁ……絶対に口になんて出さないよ」


「そうだね……だけどリヒトお兄ちゃん……凄く辛そうだった」


リヒトは隠しているつもりだけど、顔に良く出る。


幼馴染だからそれで解らない訳が無いわ。


「だけど、それももう終わり。ここから先は一部の人以外、私たちの事は知らないわ……だから、普通に暮らせると思う……」


「そうだな、此処から先は僕たちの事件は知っていても顔はしらないよね」


「うんうん、そうだね」


「だからね、これから先はリヒトが悲しむ事も余り無いと思うの! すぐに出来るかどうか解らないけど……過去は忘れて一から始めるのはどうかな?」


「それで良いんじゃない? 少なくともこの街には僕たちの事を知る人は居ないみたいだし……それで良いんじゃないか」


「そうだね! それはそうと……今日も頑張るんだよね?」


「当り前じゃない? 部屋風呂を後にするって事はそういう事でしょう?」


「それじゃ、新婚旅行気分でがんばろうかな?」


「そうだね。はっ……これってハネムーンの初日みたいな物だよねっ! リタ頑張っちゃおう」


私達は『リヒトの物』だから……ね。


こうなるのは当たり前だよね。



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