第26話 勇者.聖女達SIDE 変わった。
メンバー募集が上手くいかないので、リヒトに連絡を入れました。
幾ら冒険者ギルドで嫌われていても『同じパーティ仲間』への連絡は断れないようですぐに連絡を入れて貰えました。
ですが……リヒトに助力を頼むも、断りの伝言が来ました。
当たり前の事ですね。
リヒトの嘆願を無視した私達に手を貸そうと思う訳がありません。
仕方なく、余り頼りたくはないのですが教会を頼り、冒険者ギルドと仲介に入って貰い和解。
貼り紙はして貰えましたが、パーティメンバー募集を掛けるも誰も来ません。
悪行が知れ渡っていますから……当たり前と言えば当たり前ですね。
例の私達を揶揄った冒険者は、投獄されたので流石にもう揶揄ってくる冒険者は何処にも居ません。
これは私達でなく『教会に相談したらすぐに教会が動いた結果です』
『聖女は女神に仕える存在』
それに一般人が性処理をさせよう等と言ったから大問題になりました。
揶揄った当人はイシュタス教を破門の上投獄。
家族はイシュタス教を破門されてしまいました。
これは、私が『そこまでしなくて良い』と言っても無駄で執行されてしまいました。
破門されたらこの世界で人権が無いのと同じですからそう長くは生きられないでしょう。
どうしようもない事です。
ライトに今後について相談したら……
『仕方ないから、もう少し北に進んだら再度募集だな』
という話で納まりました。
此処迄の街では今迄の悪評が広まっていますが、北に進んでいけば『現実に見てない分』悪評も飛んでいない可能性もあります。
そこ迄我慢して進み、そこで仲間を得よう。そういう考えです。
◆◆◆
「さぁ、今日はがんばってオーガを狩るか?」
「「「ライト」」」
「どうした!? 変な顔をして」
「いえ、なんでもありません……」
可笑しい。
あの、まるで卑しい狂犬みたいなライトが憑き物が落ちたかの様に真面目に見えます。
その様子に私だけじゃなくリメルもリリアも驚いています。
「ライト一体どうしたんだ?」
「急に人が変わったみたいに……」
「ああっ、その事か? 馬鹿をやるのはあそこ迄と元々決めていたんだ。 真の仲間に出会ったら『遊び』はやめるってな」
「「「遊び(だと)」」」
あれが遊び、範疇を越えているわ。
「そうだ! 女遊びも粗暴な態度も此処からはしない。勿論、お前等にも何もしないと約束するよ! 逆にお前達が誘惑してこようが俺は相手をしない。精々自分達で解消するんだな」
「それはどう言う事?」
これは凄く嬉しい話です。
私達に性欲を向けてこない? てっきり、性欲の解消に使われると思っていました。
尤も、私達は妊娠でもしたら魔王討伐の旅に支障がでますから『最後の一線』は越えられません。
ですが、手や口で……その位は要求される可能性があると思っていました。
驚きでリメルもリリアも顔を見合わせています。
「俺たちは魔王討伐の後には王家や貴族との婚姻が用意されている可能性が高いんだぜ! 俺たちが此処でやっちまったら、その話はなくなりこのメンバーで婚姻を結ばなくちゃならない。そうしたら折角の魔王討伐が、下級貴族の爵位と報奨金で終わってしまうんだ! ここからは真面目になるに越した事はない」
「だったら、なんで最初からそうしなかったの?」
「ソニア達にあんな事する必要はなかっただろう?」
「そうよ……」
「馬鹿だなぁ~! 四職が集まる迄は国や教会も活躍に注目をしない。だから、悪い事をしても目立たない。それにこれからする偉業の前には多少の事は許される。 だが、これから先は違うあちこちから注目を浴びる事になる。だから、禁欲生活を送るんだ。その前に女経験位しておきたいだろう?」
言っている事はクズだけど……少しは理由は解る。
だけど、そこから先が解らないわ。
「それは解るけど……だったら『なんで彼女達を他の人に抱かせたわけ』」
それをする意味が解らない……
「それな! 魅了って本来の能力は俺に惚れるスキルなんだぜ。 おもちゃにして生でやっていたから、三人とも妊娠しちまったんだよ!俺の子をな! 惚れるスキルだから『俺の子を産みたい』なんてほざく訳よ……これって凄い醜聞じゃないか?不味いだろう!」
本当にクズだ。
「だったら堕胎して解放すれば良いじゃない?」
「いや、子供を守る本能があったのか妊娠中は魅了が薄れて、教会に逃げようとしたんだ! 勇者の子だから教会が欲しがる可能性があり、表に出てしまう可能性がある。だから、複数の男をけしかけ抱かせたんだ。運よくそのまま流産してくれたわけよ!妊娠していた事が周りに知られたから『沢山の男に抱かれていた』その事実が必要だったわけだ。 結構大変だったんだぜ『ライトとの赤ちゃんが』って泣きわめいてよ……だから俺の子じゃ無いと思わせる為にそのまま沢山の男に抱かせて妊娠、堕胎を繰り返す必用があったわけよ」
「……ライトお前……」
三人で顔を見合わせた……此奴……クズだわ。
「言っておくが、これで俺の『遊び』は終わりだ。ここからは色々と注目されるから、真面目になる。 そうしないと良い縁談がなくなるし魔王討伐後の褒賞に関わるからな『良い勇者』になるつもりだ」
「「「そう」」」
それしかいう事が出来なかった。
だが……ここから、本当にライトは変わった。
今迄の悪魔のような態度がなりを潜め……本当の勇者みたいになっていった。
◆◆◆
「勇者様ありがとうございます」
「勇者の俺が魔物を討伐するのは当たり前だ! 感謝なんていられねーよ! じゃあな、がきんちょ!」
あれからライトは本当に変わった。
少しワイルドになったけど、勇者としての務めをしっかり果たすようになった。
あれ程酷かった女癖もおさまり、まるで別人のように清々しい人間になった。
最初は警戒して見ていたが、今はその警戒も解いた。
もしかしたら『勇者』のジョブは成長すると人間を変えるのかも知れない。
「マリアンヌ、俺は良い! 先にリメルにヒールを頼む! リメルはリリアを守ってくれ……俺はこのまま斬り込む」
連携では一番危ない場所に身を置き、皆を気に掛けながら戦う。
戦い方も私達を気遣う優しい戦い方をする。
「何事だ!」
「夜分すみません、オークの群れが村を襲っているという話が……」
「数は?」
「10程です」
「ならば、俺一人で充分だ! 三人は寝ていて良いからな」
そう言って夜だろうが、食事中でも1人で飛び出していく。
これが打算で出来る事だろうか?
絶対に出来ないわ。
今のライトは、誰が見ても非の打ちどころの無い勇者にしか見えなかった。
◆◆◆
あの時、聞いた事を敢えてもう一回聞いてみる事にした。
今のライトならきっと違う答えが返ってくる筈だ。
「ライト……リヒトやソニア達の事どう思いますか?」
意を決っして聞いてみました。
「ああっ、随分と惨い事をしたと思う!悔やんでも悔やみきれない! 今の俺には魔王討伐の旅を急ぐしかない。だからもし無事に魔王討伐が終わったら謝りに行くよ! その時には莫大な褒賞金が出る筈だから、彼女達が生活に困らないようにするつもりだっ! 多分許して貰えないだろうけどね。 その場合は一生を掛けて償うつもりだよ」
「大丈夫だよ……誠心誠意謝れば許して貰えるよ」
「そうそう、リヒトもソニア達もお人よしだからな」
「私も一緒に謝ってあげるから」
今の私達には道を引き返す事は出来ない。
人々を助けるためにこの旅を続けるだけ。
でもこれが終わったら……謝りに行こう。
許して貰えないかも知れないけどライトと一緒に……誠心誠意謝ろう。
四人で……
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