第25話 ロイヤルピジョン


第一の目標、ウトイの街まであと少し。


村人は金が無い?


そんなことは無い......時期によっては結構な金を持っている。


ライトの親は金貨300枚も持っていた。


それより気になるのは、ソニアの親達だライトの親には及ばない物の金貨100枚以上それぞれの家族が持っていた。


皮袋ごと放り込んでいたので金貨の中身に気がついたのはついさっきだから......理由は解らない。


このお金は、ライトの親が罪滅ぼしで彼女の親達に渡したのか、それとも勇者に随行するから国か教会がくれたのか、そんな所だろう。


だが、4件の家だけで金貨600枚(約6千万)手に入ったのは大きい。


それに、時期が良かった。


丁度、農作物を出荷して収入が入ったばかりで恐らくお金を徴税される前だったのだろう。


一番一年でお金がある時期だ。


それに村から勇者が出たという事で国から慰労金が出たのかもしれない。


その結果、金貨にして3000枚(約3億円)位のお金を手にする事が出来た。


これだけあれば、生活には困らないだろう。


あいつ等の事は知らない。


スラムにでも落ちていくんじゃないか。


◆◆◆


村を出て東に向かう事馬車で3か月。


温泉と海の街ウトイについた。


「くる途中からも凄かったけど、この街凄いね~」


「海が綺麗だったけど、この街山でもあるんだね」


「温泉なのかな? 湯気があちこち上がっている」


来る途中から海が広がり、その景色に驚いたけど……街についてみると、開けた街に驚いた。


硫黄の臭いがあちこちでしていて、湯気が上がっている。


観光を目的にした街だからか、沢山のお店や宿があり、これまでのどの街とも違っていた。


「凄いよね! 大昔異世界から来た勇者がこの辺りの街を作ったらしいんだ。 だから、凄く美味しい物や変わった物があるらしいんだ。取り敢えず冒険者ギルドで情報を仕入れたら、美味しい物を食べて宿をとってゆっくりしようか」


「うん」


ソニアが返事すると他の二人も頷いた。


『可愛いい』


つい、その笑顔に見惚れてしまう。


此処暫く見ていた『作り笑い』のような悲しみの入った笑顔じゃなく、本当の笑顔だ。


これが見られたなら、遠くまで来たかいがあったもんだ。


「それじゃ、まずは冒険者ギルドに行かないと……」


「「「そうだね」」」


冒険者は知らない場所についたら冒険者ギルドへ行くのが定石だ。


そこで情報収集をする。


冒険者としての依頼だけじゃない、宿屋や美味しいお店の情報も得る事が出来る。


◆◆◆


ギルドの受付で早速、相談をした。


「そうですね、金額を度外視すれば、ロイヤルピジョンが一番ですね。 まるでお城みたいな建物で大きな露天風呂にこれまた大きな室内風呂があります。 その凄さは到底語り切れません! 食事も最高ですよ」


「高そうだけど一泊1人幾らなんですか?」


「銀貨2枚(約2万円)です」


今迄苦労して来たんだ少し位の贅沢は構わないだろう。


「それなら、暫くはそこに泊まってみようかな……ありがとう」


「あっ、リヒト様、勇者ライト様から伝言があります」


彼奴、良くこの場所が解ったな。


「この場所に居る事は解らない筈なんだが……」


「全国のギルド宛の依頼で『立ち寄ったら伝えて欲しい』という依頼でした」


「そう? それで!」


「『リヒト、助力を頼む』だそうです」


「それなら『嫌だ! 他をあたれ』そう返しておいて」


受付嬢の顔が青くなった。


「あの、相手は勇者様ですよ! このような栄誉な事は……」


「ないない、なんなら『ライトの馬鹿野郎』も付け加えても良い」


「冗談ですよね?」


「後半は冗談だよ! それじゃまた」


なにか言いたげな受付嬢を無視してギルドを去った。



◆◆◆


「これがロイヤルピジョン……凄いな」


「まるでお城みたい……」


「こんな建物がホテルなんだ」


「王都のお城並に大きいよね」


とんでもない大きさだ。


しかも入口がガラス張り……こんな建物見た事が無い。


「ロイヤルピジョンにようこそ! お客様ですか?」


「数日、泊まろうと思って」


「そうでございますか! 受付はこの扉を入って奥です。どうぞ、そちらにお進みください」


執事にメイドさん? 


似ているけどどこか違う。


そんな人に案内され、ロイヤルピジョンの受付へと向かった。





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