第24話 気楽な旅だから
「おはよう! 朝食出来ているよ、ふぁ~あ」
「リヒト眠そうだね、大丈夫?」
「なんだか疲れてそうだけど気のせいか?」
「なんかヨレヨレな気がする」
村中に火をつけて回ったあと家畜を逃がしてやり、畑の作物を必要な物だけ貰い荒らして周った。
とどめとばかりに、井戸に毒を放り込んでおいた。
これで戻って来ても絶望しかない。
この状態から村を復興させるなら貴族とか有力者の援助が必要になるはずだ。
「いや、村が誰も住んでいない状態で荒れ果てていたので、盗賊やゴブリンの住処になったら忍び無いので村を焼いてきたんだ」
「えっ、だから少し離れた所から煙が上がっているんだ」
「親に会えないのは残念だけど仕方ないか……」
「うん……仕方ないね」
顔色が優れてない。
まさか、バレたのか……不味いな。
「あの……やっぱり会えなくて……」
「ううん、実は少しホッとしているんだ。 ほら私達、色々やらかしているからね。正直にいうと両親に合わす顔が無くて」
「僕たちの悪名が轟いているから、住み辛くなって逃げたのかな? あははははっ」
「きっとそうだね……迷惑かけちゃったんだ」
「そんな事無いと思うよ! それにそれが原因だとしても悪いのはライト1人で皆が悪い訳じゃない! 気になんてする事無いさ」
三人は黙って頷いた。
彼女達なら『こう考える』と何故思わなかったんだ。
「確かにそうだけど……」
二人もソニアに続いて頷いた。
「魅了で操られていたんだから仕方ない……冷める前に食事にしよう」
「「「うん」」」
食事を終えると、落ち込んでいる三人を馬車に乗せ俺達は旅先を東へと旅を続けた。
東。
東を選んだのには意味がある。
東の方角には『海』と『温泉』があるからだ。
美味しい物を食べて、温泉に浸かってゆっく出来る場所。
そういう場所が一箇所だけじゃなく沢山東方にはあるそうだ。
きっと楽しい旅になる。
◆◆◆
「ごめんなさい……」
ソニアが俺に謝り、ケイトとリタがそれに続いた。
「仕方ないよ。取り敢えず、何処かゆっくり出来る街についたら養生しよう」
旅の途中ゴブリンに襲われた。
ゴブリン位幾ら衰えても対処が出来る。
そう思っていたんだが……三人はゴブリンに遅れをとりあわや大怪我をする寸前だった。
間一髪、俺が回り込みどうにか間に合った。
ゴブリンだから、ソニア達は無事だったが、もしこれがオークやオーガだったら今頃だれかが、死んで居たかも知れない。
魅了により精神を蝕まれた為か、ソニアもリタも魔法が使えなくなっていた。
拷問の様な暴力は彼女達の『感』や『体力』を蝕み、ケイトは剣を真面に振れなくなっていた。
ソニア達は、もう真面に討伐が出来ない体になっていた。
何故、もっと早く気がつかなかったんだ。
ちゃんと気をつけていればすぐに気がついたはずだ。
あの時……
『ケイト頼むから死なないでくれーーっ! ソニアヒールを早く』
『ヒールよりポーションの方が速いわ』
呪文を唱えるだけのヒールと取り出して振りかけるポーション。
どちらが速いかだれが考えてもヒールの方が速い。
だけど、ケイトの命がかかっている状態でソニアはヒールを使わなかった。
その意味は! 使わないんじゃなくて使えなかったんだ。
「「「養生?」」」
「ああっ、これから進む先には温泉がある。美味しい物を食べて温泉に浸かって生活していればきっと良くなるよ」
「うん……」
ソニアに続き、ケイトとリダも暗く俯きながら頷いた。
「そんな暗い顔しないで……これは新婚旅行みたいなもんだから、楽しく過ごそうよ」
「「「新婚旅行?」」」
「だって、皆お嫁さんなんだからそうじゃない?」
「あっ、確かにそうだね」
「うんうん、新婚旅行良い響きだね」
「そうだよ! 新婚旅行だね」
「そうだよ、この旅行は魔王討伐の旅じゃなく気楽な旅なんだから、楽しもう」
「「「そうだね」」」
お金も充分あるし……旅を楽しめば良いんだよ。
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