第23話 村への復讐②


袋に入っていた金貨は300枚(約3千万円)もあった。


これで暫くは生活には困らない。


だが、これは正当な違約金だ。


今回のケースを冒険者に当て嵌めるなら。


護衛依頼を受けたのに、その護衛対象が冒険者を攻撃して大怪我をさせて奴隷にしてしまった。それに近い筈だ。 冒険者ギルドを通していれば話し合いになるが『命に係わる違約』となれば厳しい判断をするだろう。そう考えたら『命をとっても』恐らく許される。三人がどれ程の地獄を味わっていたかは、沢山の人間が知っている。


それに勇者保護法はあくまで勇者パーティを守る法律であって勇者の家族にまでは適用されない。


俺がやっている事は『法律の範囲内』これが俺でなく普通の冒険者でも同じ判断になるだろう。


『護衛依頼を頼んだ状態で、その護衛が冒険者を攻撃し犯し奴隷以下の扱いをしていた。』


これに近い筈だ。


以前、オークの討伐を頼んだ人物がお金を払うのを惜しみ、途中で裏切った結果、冒険者の1人の女性がオークの苗床になった。


助かった冒険者が依頼人を殺す選択をしたが問題なかった。


冒険者ギルドや冒険者は『裏切り』に厳しいから……俺がやっている事は勇者保護法以前に合法の筈だ。


俺は村長の家を訪ねた。


「こんな夜更けになんのようじゃ! 流石に常識……ぎゃぁぁぁぁーーっ」


言い方に腹がたったから取り敢えず殴った。


まぁ只の爺じゃ痛いよな。


「お前達から依頼を受けた『護衛対象』が馬鹿をしたんでその責任をとって貰いに来たんだ! 重要な件で話がある……そう言って村人を全員集めろ」


「なんの事じゃ……儂は知らん『護衛なんぞ』」


「お前や村人の殆どが言ったじゃないか『ライトを頼む』とその状況でライトがソニア達になにしたかは知っているだろう? 俺が手紙を書いたからな」


俺は村長をはじめ、あちこちに手紙を書いたが助けてくれなかった。


ソニアの親たちもライトの親に掛け合って諫める事もしなかった。


ソニア達とこの村に戻ってきた場合、暮らせるか冒険者ギルドに頼み調べて貰った。


答えはノーだった。


ソニアの親たちもが彼女達を蔑み。


助けようとせず、ライトの親から金を貰って黙っていた。


だから……『容赦しない』


「言ったが……それがどうしたって言うのじゃ」


「俺達は冒険者だ。冒険者に護衛依頼をして、その護衛対象が裏切った。 そしてソニア達は地獄の様な日々を送っていた。 その責任は依頼者にある。だから、その責任を取ってもらう……この場合は、冒険者の決まりじゃ殺しても良い事になっている。 この村の全員から頼まれたんだ……全員に責任はあるし、殺す権利が俺にある」


「そんな詭弁を……」


「言葉に気をつけろよ! 殺しても良いんだからな!」


「解った……」


青い顔をした村長が使用人に声を掛け、村人全員が集められた。


「これで、全員が集まった……これで良いんじゃな」


「ああっ」


「リヒトくん、娘の事は解ったけど、幾らなんでも命まで取るなんて冗談よね」


「そんな事されたら俺達が暮らせなくなる。やめて欲しい」


「勘違いしているようだが、三人の家族も同罪だ! ライトの親から金を貰っていた事も、三人を見棄てた事も調査済みだ。 俺は法に則って話をしている」


「「「「「「そんな」」」」」」


「うるせー、幾らA級でもこの人数だ。生意気いう奴は殺して……えっ」


俺に斬りかかってきた自警団の奴を斬った。


馬鹿な奴、お前等なんて幾らでも殺せる。


「ぎゃぁぁぁぁぁーー」


腕が宙に舞った。


「これは正当防衛だ……これで終わりだ『勇者パーティのメンバーに斬りかかった』これで完璧に皆殺しに出来る口実が出来た……それでは全員死ね」


「待って下さい! 頭を下げます……だから命だけは助けて下さい」


「「「「「「「「「「お願いします」」」」」」」」」」


「ならば、全財産を此処に持ってこい。決して隠したりするなよ! 隠している奴が一人でも居たら殺すからな」


そう言うとめいめいが家に駆けこんでいった。


俺の前にお金の入った袋が山積になっていく。


そこに宝石やら美術品が混ざる。


それらを全部ストレージに放り込むと俺は……


「それじゃ、お前等この村から居なくなれよ……これから火をつけて燃やすから」


この村を無くしてもライトはすぐには困らない。


だが、もし魔王に負けて無事なら帰ってくる筈だ。


その時、故郷が無くなっていれば……きっと悲しむだろう。


『いい気味だ』


「そんな……家まで失うと言うのですか……それは」


「本当は皆殺しに出来るんだ。それを全財産で許した。これ以上の譲歩はしない。2時間だけ待つ……残っていた者は斬るからな。俺には法的に殺す権利がある。だがそれをこれで許してやるんだ。ありがたく思え……ほら、とっとと逃げろ」


2時間待たずに村人は居なくなった。


約束通り、俺は村に火をつけて回った。


風も強いし、田舎の木造の家だから良く燃える。


お金の心配はなくなったし、ソニア達に両親を含む村人全員が自分達を見棄てたという事実を知られずに済む。


これで良い。


こんな領主も居ない村……無くなっても誰も文句言わないだろう。


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