第21話 聖女SIDE 遅すぎた
「え!? 奴隷も売って貰えないのですか……」
冒険者ギルドに断れた私達は、仕方なく奴隷商にきました。
「奴隷には、最低限の人権が認められています。 今迄の貴方達の行動を考えると到底、それを守ると思えません」
「それなら、どうしても譲って貰えないのなら、私達は勇者パーティです! 勇者保護法を使って徴収します」
「こんな事をしたくは無いんだが仕方が無い」
「そうね……徴収に切り替えるわ」
従者もいない状態での旅は難しいわ。
仕方ないけど……
「そうですか? 確かにそれに逆らう術は私にはありません。ですが『徴収』は王国だけでなく、帝国、聖教国にこちらから書類を送る事が出来ます。そこに私は『勇者様達は魅了を悪用し過去に3人の女性を玩具の様に扱い、聖女様達がそれを見てみぬ振りをした事を理由に奴隷の所有者の資格は無い。そう判断しましたが無理やり徴収された』そのように報告させて頂きます。 さらに『勇者パーティの悪行や性格についての意見書』も、しっかりとおつけして報告します。 それでも、徴収しますか? 貴方達には確かに権利はありますな。 だが、報告も此方はできますぞ! 魔王討伐後の褒賞に響くのでは? 」
「ライトは兎も角、私達は……」
「悪い事をしてないとでもいうのですか? それで、聖女、剣聖、賢者を名乗れるのですか? 悪人を見たら止めるのが貴方達の本来の役目なのでは? 他の人間なら『見てみぬ振り』は犯罪ではない。 一般人ならオークやゴブリンが怖いから助けないのは罪ではない。だが、勇者パーティなら助けないのは罪ではないか? 」
ライトを魔物扱い……
「「「……」」」
これでは何も言えないわ。
「徴収は諦めます……」
「そうですか? なら一つアドバイス位はしましょう……もう、貴方達は詰んでいます。従者なしで戦うしか無いでしょう」
「それは幾らなんでも言い過ぎです」
「僕たちを馬鹿にし過ぎだよ」
「そこ迄言われる筋合いはないわ」
「これは失礼しました……ですが、貴方達は勇者パーティなのです。 やがては魔国に攻め入る事になります。 その場所までついて行き身を守れる存在など、世の中に何人存在するでしょうか? 冒険者ならAランククラス、そんな存在は奴隷商に売られる事は稀有です。
その貴重な人間の1人、英雄と呼ばれるリヒト殿を手放したのですよ」
今は確かに良い。
だが、この先の過酷な旅についてこられる人間なんてそんなにいない。
その希少な人間の1人がリヒトだったんだ。
「そうね……」
「いえ、それだけじゃありませんよ……勇者ライト様が壊した三人。 貴方達が合流する前は一緒に戦っていたんですよ? つまり、この世の中で、勇者パーティを支援出来る能力を持つ人間を4人も失ってしまったのです。 もし、あの3人の女性のうちの誰かが壊されない状態で奴隷市場に売られたら金貨1000枚(1億円)の金額がついても可笑しくありません……リヒト殿に至っては金額など出せない位の価値があります」
そうだ……私達とは大きく差があるが、冒険者や騎士としたら間違いなく優秀だった。
「ちょっと待って……それじゃ……」
「リメル様……貴方達は馬鹿な事をして背中を預けられる位の強者を手放し、壊してしまった……そういう事ですよ」
回復役のソニア
剣士のケイト
魔法使いのリタ
そして……剣士のリヒト……
間違い無く優秀だ……
私達は、必要なメンバーを既に得ていたのに、ライトのせいで失ってしまった。
そういう事だわ。
「そうね……」
「それだけじゃありません……本来なら勇者パーティのメンバーになる事は名誉です『勇者保護法』など持ち出さなくても進んで自らメンバーになりたがります。まして功名心が高い冒険者なら尚更です。それが此処迄なりたがらない……その理由を知るべきです」
「「「理由?」」」
「はっきり言わせて頂ければ、嫌われているんですよ! 『あんな勇者魔王に殺されてしまえ』そういう者がいる位にね」
「「「そんな」」」
「自分達が、リヒト殿やその仲間の様子を見て如何でしたか? あんな馬鹿な事をして好かれているとでも? その勇者を止められない貴方達にどんな希望を見ろというのですか……少し言い過ぎました……ですが、これが皆の本心だと思いますよ」
勇者パーティなのに嫌われる存在。
此処迄の事になるなんて……
あの時、私達がすぐに対処していれば、こんな事に成らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます