第14話 冒険者ギルドにて

「「「おはようリヒト!」」」


「あれっ、俺いつの間にか寝ちゃってた……と言うか……それ」


「あれ気がついた? 私はリヒトだけの物だからね。だから刻んだんだ……どうかな?」


「うんうん、僕もリヒトの物だから同じ」


「私もね……もしかして嫌だった……」


『失敗した』


多分、お風呂の時だ。


俺がソニア達の裸を見て『痛々しく』感じて目を逸らしてしまった。


それを『見てられない』と勘違いしたんだ……


俺はなんて浅はかなんだ。


気にしない訳ないよな。


正直言えば、もう彼女達に体を傷つけて貰いたくなかった。


だけど……


「嬉しいよ、ありがとう」


「「「そんな……」」」


顔を赤くしているから、やはりこれで良かったんだ。


「それじゃ……」


俺はストレージからナイフを取り出した。


そして……


そのまま左肩に突き刺して、ソニア、ケイト、リタの名前を書きハートで囲った。


これマジで凄く痛い。


「リヒト、そんな事しなくて良いのに……痛いでしょう……痛いよね……ううっ馬鹿っ」


「そうだよ、馬鹿だよ……うっうっ」


「そんな事されたら私、どうして良いか解らなくなっちゃうよ……スングスッ」


これで正解だったみたいだ。


彼女達が俺の名前を刻むなら、俺だって刻まないとフェアじゃない。


だけど……これ無茶苦茶痛てーよ。


これ以上に大きな物をソニア達は背中に刻んだんだよな。


元から大好きだった。


そんな幼馴染達たちにこんな事されて嬉しくない訳が無い。


「皆、愛している大好きだよ」


自然と口が開いた。


「リヒト……ううっうう、私も愛している……愛しているリヒト」


「僕、ううん、お姉ちゃんも愛している……スンッ大好き!」


「リヒトお兄ちゃん……愛しています。こころから大好き!」


三人に押し倒されてしまった。


本当はソニアと結婚してケイトとリタとは家族の様に過ごせたらと思っていたんだが……これはこれで悪くない。


多分、前の関係で過ごしていたら、ケイトやリタが結婚する時に号泣したに違いない。


だったら、三人全員娶れる今の状況の方が幸せなのかも知れない。


「俺はもっと愛している」


「ううん、私の方がもっと愛しているわ」


「お姉ちゃんの方がもっと愛している」


「私が一番愛しているんだから」


「だったら、誰が一番愛しているのか勝負だね」


「僕が負ける訳ないよ、姉弟みたいに仲が良いんだから」


「兄妹っていうなら私だよね? リヒトお兄ちゃん! それじゃえい!」


リタは俺の服を脱がすと俺に跨ってきた。


「あっリタ、ずるいよ! それなら私も…….」


「僕だって負けないんだからね……」


本当なら今日これから街によって旅立とうと思っていたんだけど、仕方ない。


うん、明日にしよう。


この日の三人はいつも以上に情熱的で凄かった。


◆◆◆


「それじゃ行こうか?」


「「「うん」」」


結局この場所にお世話になったのは三週間。


俺達が本当の自分を取り戻した場所かと思うと何となく感慨深いものがある。


これから、街にいき手続きをし、オークマンに別れを告げたらもうこの辺りに来ることは無いだろう。


三人と俺は長袖、長ズボンの服を着て帽子をかぶり、眼鏡を掛けている。


これなら俺達だと解りにくいだろう。


多少暑いが、この街を出るまでの我慢だ。


◆◆◆


冒険者ギルドに来た。


本来なら俺はA級冒険者、カウンターになんか並ばなくて良い。


だが、身バレしたく無いから無言で普通にカウンターに並んだ。


『リヒト……大丈夫かな?』


『ちょっと怖いよ』


『私も』


『大丈夫だよ』


あれだけ酷い状態だったんだ、怖いのも解る。


本当はそんなに長い時間じゃない。


だが、この待ち時間が凄く永く感じた。


「次の方どうぞ……本日はどう言った御用でしょうか?」


「パーティの申請とギルド婚の手続きをお願い致します」


「はい……えっリヒト様……」


『しっ、静かに』


『はい……成程、そういう事ですね』


どうやら、事情を察してくれたようだ。


此処に所属する冒険者の中にもソニア達を抱いたり、迫害した者もいる。


さっさと済ませて此処を出たい。


冒険者ギルドの受付嬢は優秀だ。


黙々と仕事をしてくれて助かる。


「あれ、リヒト様は勇者パーティは抜けていますが、遊撃隊扱いになっていますね」


「それってどう言う事だ?」


「勇者パーティを抜けたのではなく、独立した扱いですね」


「何か違うのか?」


「特にはありません。ただ新しい名前は付ける事が出来ず『漆黒の風の別動隊』そう呼ばれるだけです」


「メンバーの追加は?」


「可能です」


「それなら、ソニア、ケイト、リタのメンバー追加をお願いしたい」


「それじゃ、冒険者証をお出しください」


四人して冒険者証を提出して登録をしようとした。


「あれ、リヒト様は登録がありますが、他の三人は失効しています」


不味いな。


「それじゃ、登録をお願いします」


ライトの奴のせいで依頼を碌に受けさせて貰えなかったからか。


これで三人はFランクからのスタートか。


まぁ、三人には今後戦って貰うつもりは無いから良いや。


ただ、ギルド婚の為に冒険者登録が必要なだけだ。


「畏まりました……それじゃ三人は此方のカードに血を垂らして下さい」


クソッ早く終わらせたいのに……


無言で三人は血を垂らした。


バレるといけないので、三人にはあらかじめ声を出さないように言ってある。


「はい、カードが出来ました。それではギルド婚の説明に……」


「あれ、そこに居るのは『売春部隊』じゃねーか?」


クソッバレたか。


「おい、言葉に気をつけろ……今の彼女達は俺の奴隷だ」


これを言いたくないからギルド婚を早くしたかったんだ。


そうしたら『奴隷』と言わずに『妻』と言えたのに……


「まぁ、良い銅貨3枚払うから貸してくれよ……憂さ晴らしに使うからよ……頼むよな」


「悪いな、彼女達はもう売春はしない」


「けっ、そんなゴミみたいな女、抱く訳ねーだろうが。サンドバックにしたいだけだってーの。抱くなんてこっちからごめんだよ……そう言う訳で銅貨3枚……」


「ふざけるな」


「いいじゃねーか、貸してくれよ……」


「どうせ、沢山の男と寝た女なんだから貸してやったら」


「そうそう、勇者公認の……えっ、いやぁぁぁぁーー」


俺はさっきから絡んできた男の首に剣をあてがった。


「それ以上侮辱するなら殺す」


「ひっ......助けて......殺さないで」


「今回は見逃すけど、次は殺す......消えろ」


「ひっ、解りました......もう二度としません」


泣きながら走って去っていく。



「手が止まっている早く手続きをしてくれないか? いやぁ良い言葉だね!『冒険者同士の揉め事は自己責任』頼むよ」


「ひっはい」


「「「リヒト」」」


「三人は此処に居て話してくるから」


俺は、そのまま走りだすと、傍に居る冒険者に近づいた。


「ひっ……俺はただ、ヤジを飛ばしただけじゃないか?」


「前にソニアとリタを買って暴力を振るったの知っているよ」


「あれは……金を払って買ったんだ。何が悪いんだ……」


「気にくわないから殺すだけだよ?『冒険者同士の揉め事は自己責任』ほら、剣位抜いたら……気にくわないから殺す。それだけだ」


「た、助けて……」


泣きそうな顔を見たら殺す気が失せた。



「今回は特別に許すけど次は無いからな」


「解った......もう言わねー」


その場にへたり込んだ。


恐らく腰でも抜かしたんだろう。


後は……


「許して…いや、来ないでこっちに来ないで」


「……」


無言で近づく。


「ほら、私女だよ……女だから売春婦なんて買ってないよ……ただ、悪口を言っただけだって」



「......」


「……ひっ助けて」


「謝罪は……」


「ごめんなさい……ひっ嫌だ殺さないで、謝ります、謝りますから」


「だったらいいや……今回は見逃してあげるから、すぐ消えて」


「はい……」


これで良い。


ソニア達に絡めば『只じゃすまない、場合によっては殺される』本当に殺す気はないが、そう伝わればもう絡んでくる者は少なくなるだろう。


「リヒト、なんで暴れているんだ?」


「ギルマスか……此奴らが俺に絡んできたからちょっと脅しただけだ」


「見ていたが、ナイフを突きつける必要は無いだろう」


「俺の仲間に絡んできたからな、これから手続きをして結婚しようとしているのに銅貨3枚で貸せってよ……そんなゲスな奴はなにされても仕方ないよな?」


「だが、そつらは」


「言葉に気をつけた方が良い。 ギルマスだって場合によっては剣を向けるからな」


「そうか……まぁ絡んだのはそいつ等だ、これ位、仕方が無いな」


「そうだろう? 悪いけど手続き急いで……急がないとまた絡んできた冒険者を脅す事になるから」


「はい、急ぎます」


これで良い。


『リヒトに殺されるかも知れない』


その噂が流れれば、ソニア達に絡んでくる奴も少しは減るだろう。















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