第12話 告白 国や女神が認めているのなら良いじゃないか?



『よくあれで生きていけるわね』


『本当、あそこ迄犯されて、体は凄く酷いんでしょう』


『昔は綺麗だったけど......あそこ迄酷くなっちゃな......場末の風俗だってあんな化け物いないって』


『私だったら恥ずかしくて生きていけない……』


『それにあいつ等、魅了されたとはいえ強姦魔、いやあの勇者の手先でしょう』


『本当、死んでくれないかな』


『性処理便器でぶっ壊れてて醜い……しかも犯罪者……見たくも無いわ』


『確かにクズ以下……スラムにいけよな』


『だけど勇者だから手が出せないけど、あいつ等は銅貨を払えば、憂さ晴らしの道具に出来るんだ……性処理には汚くて使いたくねーけど、サンドバックにには使えるぜ』


『俺この間リタを買ったんだけどよ、『金払ったんだからやれよ』って言ったら犬相手に泣きながらやりやがるの……まさに本物のメス犬だったぜ』


『それ良いな、それじゃ俺は今度、ソニアかケイト買って豚か馬とでもやらせるか』


『良いね、それ、皆で見世物にしようぜ』


魅了が解けた瞬間、私の頭に浮かんだのはライトじゃ無い。


街の人々の蔑みの目と言葉だった。


私達はただ体を売っていただけじゃない……


散々抱かれて飽きられて、最後には見世物になっていた。


本当に家畜の相手までさせられていた。


勇者のライトがゴミの様に扱うから、それはどんどん加速していく。


最後には営業と称して


『クズで家畜みたいな女でーす! 銅貨3枚でなんでもして良いんで買って下さーい』


『私はクズでーす......性処理しか出来ない馬鹿なクズでーす。勇者パーティでごめんなさい』

と叫びながらほぼ裸で歩かされた。


『殺さなければ何をしても許される女』それが私達だった。



だけど、それも仕方ない……聖女マリアンヌ達やリヒトは気がついていない。


『魅了に掛かっていた時の私は本当に犯罪者だった』


私達は、本当のクズだったから。


◆◆◆


「ライトは勇者なんだ、尽くすのは当たり前じゃない?」


「そんな、私には夫も子供もいるんです……許して下さい」


泣き叫ぶ食堂の女にケイトは……


「そうか、ならいいや......お前が相手しないならそいつ等斬り捨てるからな……」


そう脅した。


そして、私もリタもそれが正しいと魅了の為思っていた。


「そんな……解りました……お相手します」


「泣きながらやるなんて......喜んでやりなさい......ライトは勇者なんですよ……馬鹿女」


そう言ってビンタをした記憶がある。


「これで良かったのですか! 満足ですか?嘘......なんで」


「ああ、こいつ等、私が制止するのを無視して入ろうとするからボコったよ」



「うそ......嘘……貴方……トム……何で……こんな事を……私相手しましたよ......」


「邪魔しようとしたからだよ」


「嫌々相手してもね……そうだ、しっかりとライトの相手するなら、回復魔法で治してあげるわ……泣かないで笑顔で相手しないさいね」


「解りました……そうすれば助けてくれるんですね」


「ええっ」


だけど、また夫と息子が邪魔しようとしたから半殺しにした。



「恨んでやる....あんた達なんて勇者パーティじゃない」


終ったあと、そう言って泣いていた……そんな女や家族に再び暴力を振るっていた。


これだけじゃない……同じような事を50件近く私達は手伝っている。


だから、街の人々が私達にする仕打ちも仕方が無い。


強きをくじき弱きをたすける......それが私達の目標だったのに……


一体、私達は何をしていたんだろう......


沢山の女の子が犯されていく手助けもしたし......それに逆らう人間を殺しこそしなかったが暴力で黙らせた。


私達は本当にクズなんだよ……だって、娘が犯されて悲しんでいる父親に暴力を振るっていたんだ。


恋人を助けるために泣きながら抱かれた女を、ライトを満足させなかったって......顔が腫れあがる程殴った事もある。


魅了されていたからと言っても......私達もクズには変わらないよ。


リヒト……それでも貴方は私達に生きて欲しいの?


◆◆◆


「言うべきだよね……」


「言わないと駄目だろう……」


「これでリヒトともお別れだね……リヒトって正義感が強いから、多分許して貰えないよ……」


リヒトが寝ている間に三人で話しあったの。


『リヒトが知らない事も教えない』といけないって……


多分、リヒトもこれを知ったら、私達を嫌いになる。


『私達は被害者じゃない、加害者でもあるんだから』


体だけじゃない……行動もクズだったんだから……


眠気眼のリヒトに……


「「「話があるの」」」


意を決して、全てを話した。


これでリヒトに嫌われる……そうしたら3人で死のう。


そう決めていた。


それなのに……


「なんだ、そんな事? 別に良いんじゃない? 法律的にOKらしいからね」


リヒトが真顔で軽く応えた。


余りに軽くて、聞き間違いだって思う位に……


「あの、リヒト解っている、私達は、ライトに言われて女の子を傷つけたんだ」


「あいつが犯す手伝いをしたんだぞ」


「なんでそんなに気楽には話すの?」


「いやぁ、素晴らしい事をしましたね。きっと貴方達は女神イシュタスの元天国に行けるでしょう」


「なに、それ……」


「ふざけているのか!」


「真剣な話をしているのに」


「ふざけていないよ。『勇者って何しても許されるんだって』そう偉い人を含む皆が言っていたんだ。近くは聖女のマリアンヌ、冒険者ギルドのギルマス、遠くは有力貴族に司祭にまで三人を助けて欲しいって相談に行ったらね、法律的には『勇者保護法』ってのがあって問題無いんだそうだ。イシュタス教の教義の中に『女神に全て捧げよ』ってのがあってそれは女神の使徒である勇者にも適応されるらしいよ」


「「「それって……」」」


「だから、被害者ぶっているけど、そいつらが法律的にも教義的にも悪いわけ。 この場合は『勇者様のお役に立てるなら是非妻を使って下さい』『お前勇者様を満足させるんだぞ』『お母さん頑張ってね』と応援するのが正しい。それをしないで邪魔したんだから、殴られても仕方ない。いや斬り殺さなかっただけ皆は優しいと思うよ」


「「「リヒト……」」」


「他の女の子も『勇者様に抱かれるなんて嬉しい』って笑って相手しなくちゃ、それが出来ないなら殺されても仕方ない。恋人だって『勇者様にサービスするんだぞ』って笑っていなくちゃね」


「リヒト……どうしたの?」


「流石に可笑しいぞ」


「お兄ちゃんどうしたの?」


「さっき言った通りだよ……俺は三人を助けたくて色々な人に相談をしたんだ。物凄く沢山の人にね。だけど法律で決まっているから、教義はこうですって言われてそれだけだった。 実際にソニア達が酷い目に遭っても誰も助けてくれなかっただろう? 『法律』と『教義』で正しいとされているからね……だから気にしないで良いよ。 例え、沢山の人を三人が殺していても、それは国と女神が『して良いって』許可したんだから誰からも文句言われる筋合いはないよ。 イシュタス教を信仰していてこの国で暮らすなら、自分が被害者になっても受け入れるべきだよ」


「リヒト……本当にそれで良いの?


「良いのか……」


「それで納得なの」


「勿論」


三人は被害者なのに街の人間も周りも冷たかった。


それなのに法律と教義を盾にして何もしなかったんだ。


自分が被害者になっても納得しろよ......そう俺は言いたい。


国や女神がそう言っているんだからな......お前達的には『仕方ない』んだろう。












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