第11話 今は......


途中色々あったけど、どうにか幼馴染を取り戻した。


問題はこれからだ……


ライトに売春をさせられていたソニア達はもうあちこちの街で名前と顔が知られている。


勇者パーティのメンバーが売春。


それも、みすぼらしい姿で立ちんぼしていたんだから噂にならない訳が無い。


今迄立ち寄って来た街で『知らない者は居ない』


その位考えた方が良いだろう。


それに……聖女たちは気がついていないかも知れないが……彼女達はライトにかなり、あくどい事もさせられていた。


誹謗中傷だけでなく恨みもかっている。


だから、早く、街を離れた方が良い。


ライト達がこれから、北の魔国へ向かうのだから、本来は南に向かえば安全なのだが、そちらでは三人の悪評が広まっている。


だから、進む道は東か西へ行くしかない。


街に戻って、オークマンにお礼を言って、冒険者ギルドで手続きをしたら、もうこの辺りに来ることは無いだろう。


これでオークマンが言う第一段階……ここからが長い。


◆◆◆


「一緒にお風呂に入らない?」


「そうだね、流石に気持ち悪いから入ろう」


「そうだね、お姉ちゃんが背中を流してあげるよ」


「うん、お兄ちゃんの背中は私が流してあげるよ」


もうあの生活を続ける必要は無いから、部屋を綺麗にしてお風呂に入る事にした。


ソニア達は無理に明るく振舞っているけど……よく見ると体が震えているのが解る。


無理もない。


正気を取り戻した彼女達からしたら自分の体を見るのはきっと苦痛に違いない。


嫌でも刻まれた卑猥な文字を目にするし、それ以外にも痣や火傷、傷もある。


辛い記憶が蘇って来ているに違いない。


「そうだね、それじゃ俺も三人の体を流してあげるよ」


「「「うん……」」」


出来るだけ笑顔で優しく応えたが……すまなそうな表情で俯く三人をただ俺は受け流す事しか出来なかった。


「このお湯凄いね……」


「これ本当にドブみたいだ」


「異臭を放っているね……」


ただでさえ汚れていた三人とお風呂にも入らず四人でやり続けていたんだから当たり前だ。


お風呂の水は茶色く濁り垢が浮いている。


お湯を交換する事3回、ようやく彼女達も俺もさっぱりとした。


綺麗になったから……余計に目立つ。


「酷いものでしょう……」


「こんな事刻まれているんだ僕は……」


「火傷だらけ、凄いよね……」


だが、気にしちゃ駄目だ。


「確かにそうだけど、傷は冒険者になれば当たり前の様につくよ、仮面をつけている女冒険者で顔の一部が焼けている子がいる。 それに俺達はそこそこ才能があったから、そんな思いはしなかったけど、弱い冒険者でゴブリンやオークに負けてパートナーを奪われた奴も多い。 お金を払って救出をして、運よく助かっても、どんな状態かはわかるだろう?」


「それは解るわ」


「聞いた事があるよ」


「うん……」


「それでも、皆は強く生きている。ゴブリンやオークに犯されても傷だらけの体でもね……ライトはゴブリンだった……それで良いんじゃない?」


「「「勇者がゴブリン……」」」


「凄い事いうね」


「教会が聞いたら怒りそうだ」


「それは、流石に」


「あのクズはゴブリンで充分だよ……ついでに女神イシュタスもクズだ」


「あの、まさか復讐とか考えてない? 駄目だよ……そんな事考えちゃ」


「駄目だ……返り討ちに遭う」


「関わらない方が良いよ……」


「勿論、もう、関わる気は無いよ!安心して!」


俺は彼奴を殺したい。


だが、ライトは勇者だ。


腕は俺より上だし、不意打ちをしても勝てる気がしない。


だったら、どうすれば良いのか?


簡単だ。


勝てそうな相手に加担すれば良い。


勇者の最大の敵は魔王だ。


魔王が勇者に勝てるようにすれば良い。


だけど、そんな事をすれば他にも被害が沢山出る。


それをするかどうかは今後次第だ。


三人が戻ってきたから俺の心は一旦落ち着いた。


だが、もし、今後幸せになれなかったら……


彼女達が死ぬような事になったら……


『世界なんて滅んでしまえ』


そう思うかも知れない。


きっと、その時の俺は歯止めが効かなくなり『人類の敵』になっている気がする。


俺はもう、幼馴染より狂っているのかも知れない。


今でも俺は『イシュタス教徒は人間に思えない』


逆恨みかも知れないが……あの勇者を選んだ女神を信仰しているんだ。


俺にとっては最早ゴミとしか思えない。


もし、イシュタス教徒と野良犬どちらかしか助けられないなら俺は間違いなく『野良犬』を助ける。



「体が冷えたから、湯舟にもう一度浸からない?」


「「「うん」」」


これから先はライトには絶対に関らない。


俺が死んだら彼女達は生きていけない。


もし、関わる事があるとしたら、安全に彼奴を殺せる時だけだ。










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