第5話 過去 オークマンのアドバイス

俺はオークマンを誘って酒場に来た。


幼馴染についてのアドバイスが欲しいからだ。


頼れる相手はオークマンしか居ない。


『奴隷ハーレムを持つ男』オークマン。


しかし、その奴隷は皆が元は不幸な女性だった。


オークマンの奴隷ハーレムは不幸な奴隷女性を幸せにして作ったハーレムだ。


そんなオークマンだから俺はアドバイスが欲しい。



「本当に『取り戻したい』そうリヒトが望むなら、やり方を教えてやる」


「やり方? 魅了を解いて貰って奴隷紋を刻む。それだけじゃ駄目なのか?」


「それで、魅了を解かれれば、やがて正常にはなる。だが正常になってからが問題だ……過去の記憶が一気に正常に置き換えられる。その結果どうなるか解るか?」


「どうなると言うんだ……」


「かなりの確率で鬱になる。お前の仲間の場合は恐らく自殺をする。絶対とは言えないが……」


「なぜ……」


「当り前だろう?婚約者や家族の様に思っている人間を裏切り、嫌いな男の物になっていたんだ。 それにお前の仲間の場合は、それだけじゃないだろう?売春までさせられていたんだぜ……あの状態を一気に思いだして生きていけると思うか?」


散々おもちゃにされた挙句、最後は売春までさせられていたんだ。


彼女達なら確かに死を選んでも可笑しくない。


「それじゃ、俺はどうすれば良いんだ、結局は救い出せないじゃないか!」


「だからな……お前は彼女達を抱け」


「抱け? 抱きしめていれば良いのか?」


「違う……性的な意味でだよ! ひたすら愛を囁き抱き続けるんだ」


「SEXって事か……」


「ああっ、魅了がとけてきた瞬間からひたすら抱き続けろ」


「それに何の意味があるんだ」


「これは俺の経験だが、今回の様な被害にあった人間は自分が汚くなった。汚されたと思い死ぬんだ。嫌いな人間に汚されたと考え、大切な人間を裏切ってしまったと思ってな……だが、とけた瞬間に好きな男に『愛を囁かれながら抱かれていれば』 それも幾らか軽減する。これは思いの戦いだ」


「思いの戦い?」


「全てを失い絶望の中いる彼女……恐らくは死にたくて、死にたくて堪らない筈だ。 特に今回の場合は酷すぎる。 彼女達に『死んで欲しくない』『例えどんなに汚れていようと必要なんだ』『好きなんだ』その思いをぶつける事により、死の思いを断ち切る必要がある」


「そうか、確かにそうなのかも知れないな」


「それで『この人の為に生きたい』もしくは『この人は自分が死んだら悲しむかもしれない』『この人は自分が居ないと生きていけない』そこ迄思わせて初めて第一段階の終了だ……だが、これは地獄だぜ」


「地獄!?」


「ああっ、恐らく彼女達はお前の心を抉ってくる。人格すら否定され罵って来るかも知れないし、場合によっては泣き続けるかも知れない。多分、お前は心がズタボロになるだろうな……」


ソニアやケイト、リタが俺を罵り、泣くのか……


「……」


「当り前だろう? 魅了が抜けないうちは彼女達が愛しているのはお前じゃない『ライト』だ。他に好きな男が居るのに無理やり抱いているんだ。罵倒や泣きわめくのは当たり前じゃないか! レイプしている様なもんなんだからな」


「本当にそれで大丈夫なのか……」


「ああっ、だがな無理やり抱き続けていれば、正常になる瞬間が必ずくる……糸が切れたような状態になり、頭を抱え発狂したような状態になる。混乱している状態の彼女達を手を休める事無く抱き続けろ……良いか、絶対に手を休めるな。 この瞬間が一番怖いんだ」


「怖い」


「『自分が嫌になり咄嗟に死を選びかねない瞬間だ』此処で説得できるかどうかで勝敗はきまる」


「これは本当にSEXしながらじゃないと駄目なのか?」


「ああっ、それも凄く過激にな……そうしないと『汚くない』『愛している』の証明が出来ないからな……あいにく俺は他の方法を知らない」


「そうか、それで第二段は?」


「第二段は一生だ……彼女達が元気になっても心に大きな傷を負っている。 それをケアしながら生きなくちゃいけない。 特にお前の場合は……相当なもんだぞ」


「そうか……ありがとうオークマン。いつかチャンスが来たらやってみるよ……」


「そうか、辛い道のりを選ぶんだな。出来ればこんな辛い事は止めて他の場所で違うパートナーを探して幸せになった方が良いんだぞ。 今だって彼女達は客を取らされているんだろう? しかも金を多くとる為に避妊もしないから中絶までしたそうじゃないか? 」


「ああっ、一番少ないリタで3回中絶しているよ……性病だって何回も掛かってさぁ……笑えるよ……俺が幾ら頼んでもやめてくれないんだ……」


「だったらもう諦めた方が良いんじゃないか? なんなら俺が良い奴隷を紹介してやるよ」


「駄目なんだ……昔のあいつ等の笑顔を思いだすとどうしても捨てられないんだよ……」


「そうか……」


「ああっ、それになあいつ等偶に正気に返って泣くんだ。 寝ている時に『リヒトごめんなさい』って泣くんだよ……」


「そうか……なら待つしかないな。だが逃げ出したくなった俺に相談しろよ。今のお前が逃げた所で誰もお前を責めねーよ」


「ありがとうな……しかし女神イシュタスはなんであんな奴を勇者に選んだ……あいつ共々、殺してやりたい」


「その辺にしておけ……幾らクズでも勇者や女神の悪口はまずい」


「ああっ、すまない」


あいつ等が汚れてしまっているのは知っている。


それでも、俺は取り戻したいんだ……


あの日の笑顔がもう一度見られるなら……この地獄の日々も耐えて見せる。



◆◆◆


リヒト......確かにこの方法なら彼女達を救えるかも知れない。



事実、俺はお前の幼馴染程じゃないが似た環境の女を救った事がある。


だが、彼女は後に命を捨てた。


壊された心は治してもガラスの様に脆いんだ......


一生、気を張って生きるしかねーんだぞ。


それでも......お前は幼馴染を選ぶんだよな。


頑張れよ......





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る