第3話 過去 それでも俺は......


勇者ライト。


回復師ソニア


剣士のケイト


魔法使いリタ


これが俺の幼馴染だ……


そして剣士の俺が加わり、ライトが真の仲間に出会う前の臨時パーティを組んでいた。


ライトは勇者だから、やがて真の仲間に会う。


聖女、剣聖、賢者に出会う前までの仲間……それが俺たちだった。


それなりに皆で仲良くやっていた筈だった。


それなのに……あの日から全てが可笑しくなった。


俺の婚約者のソニアは明るく清楚な女性だった。


それが……今は見る影も無い。


際どい紫の下着を身に着けマントだけを羽織っている。


街行く者たちは好色の目で見ている。


それでもお構いなしにライトに胸を押し付けながら歩いている。


ライトが求めるままに人気(ひとけ)も気にしないでイチャイチャし、良く胸を揉まれている。


凛々しかった姉の様な剣士ケイト。


ボーイッシュで男なんて寄せ付けなかったのに……今はビキニア―マーを身に着け露出狂の様に見える。


お尻の方なんてほぼ紐だ


しかも、偶にライトと青姦までしている。


木の影で口を使っている姿を見た時は涙が止まらなくなった。


そしてリタは……殆どベビードールみたいな下着みたいな服を来て、食事の時にはライトの膝に座るようになった。


求められるままに人前でもライトとキスをし股間に手を伸ばすようになった。


『なにかが可笑しい』


夜、ライトの部屋に自ら集まり、自分から求めている癖に……


偶に『ううっうっっ』と嗚咽の声や……『いやぁぁぁ』と叫ぶ声が聞こえてくる。


だが、気になって覗いたが……暴力等振るわれた感じは無く、自分から快楽を求めるように自らの体を使いいつも奉仕し快楽を貪っていた。


『もう嫌だ、こんなの見たくない』


だが……村の皆に頼まれた。


おばさん、おじさん達に......


此奴らに家事能力は無い……だから、最低限の義務だけ果たして宿屋を別に取るようにした。


顔も極力合わさないで生活していたのに……


「よう、リヒト! しけた顏をしてどうした?」


なんで此奴は笑顔で話し掛けてくるんだよ……


「あんな事して置いて良く俺に笑顔で話し掛けられるな」


「ソニアの事か? 女の心変わりって凄いな。今じゃ俺にメロメロだ」


「お前……」


「無理やりじゃねーよ! 誓ってな……彼奴から俺に惚れて体の関係になった。これで俺が悪いのかよ……」


「そうかよ……」


確かに無理やりされているようには見えなかった。


「ああっ、そんなに彼奴が良いなら、いつか返してやっても良いぜ」


「ライト貴様ぁぁぁぁーー好きなんじゃねーのかよ」


「面は確かに良いな……だが、俺は勇者だぜ! この先、本当の仲間に出会う……そうしたらお別れでポイだ。それまでの性処理便器だな」


ふざけるなよ……


「幼馴染だろう……」


「俺の幼馴染はお前だけだ! あいつらは只の性処理道具。 本当の仲間に出会うまでの只のオモチャ。 将来は貴族や王族との婚姻の予定すらある俺が、只の村娘に本気になるかよ……飽きたらお前にやっても良いぜ……その時はきっとお前も抱きたく無くなる位壊れているかもしれねーけどな」


「ライト貴様―――っ」


「俺は勇者だぜ……その拳を振り下げたらどうなるか考えるんだな」


「糞ッ」


俺は逃げるように立ち去る事しか出来なかった。


◆◆◆


喘ぎ声も聞きたくないし破廉恥な姿も見たく無い。


だから、俺は……夜は酒場に来ていた。


宿にいると偶にライトが三人を連れて来てマウントを取りにくるからな……


「ソニアの馬鹿やろう……エールのお代わりをくれ」


「リヒト、気持は解るが……もうそこら辺で止めておけよ……」


「お前みたいなハーレム野郎に俺の気持なんて解るわけねーよ」


「そりゃ『魅了』で婚約者を奪われたんだ、気持が解らないでも無いが……」


『魅了』……なんだ……それ……


「オークマン……なんだそれ……」


「お前気がついて無かったのか? ライトが『魅了』を使ってお前の婚約者達を奪ったんじゃねーか!」


「『魅了』なんだよ……それ……」


「勇者だけが持つエクストラスキル……そのスキルの前ではどんな愛も奪われる……心を捻じ曲げて自分が愛されるスキルだ」


「そんなスキルが……」


「あるんだ……俺は勇者に仕えていた次期がある。だからこそ知っているんだ」


「オークマン……『魅了』をとく方法はあるのか?」


それさえとけば、ソニア達が元に戻るのか?


それなら……


「ない『魅了』は決してとけない。だが、対抗手段はある」


「対抗手段?」


「奴隷紋だ。強い奴隷契約のまえでは恋人関係や親子関係ですら引き裂ける。流石の『魅了』も奴隷紋には勝てない」


「それじゃ、奴隷にすれば……」


「それは無理だ。『魅了』が掛かった状態の人間に奴隷紋を刻み引っ張り合えば、奴隷紋が勝つだろうが……だが恐らく心が壊れてしまう」


「それじゃ、俺はどうすれば……」


「本当に好きなら待つしかない。ライトが要らなくなり彼女達が捨てられる時までな……そして何とか『魅了』を解除して貰い。貰ったら、すぐに奴隷紋で縛るんだ。本当の気持を取り戻した時、後悔の念が走り自我が壊れたり、自ら死ぬ者も多いんだ」


「そんな……」


「だが、それには膨大な時間が掛かるし、お前の心が折れてしまう……俺としては忘れて他の人間と幸せになる事を薦めるよ」


そうか……あれは本当のソニア達の心じゃない。


それなら俺はソニアを諦めない。


例えどんなに汚れてしまっても......最後に俺の横に居てくれれば良い......



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