第5話 失態

「…………いいかしら」

「はい……………ですね」


(ふぅぅぅ…すぅぅぅ…ん…だれの…こえだ…)


まどろみの中、リアンの耳に女性の声が入ってきた。

しかし頭がぼんやりしていてよく聞き取れない。


(はぁ…はぁ…あつい…うぐっ!んぁ…うぅ…)


股間と肛門からの刺激に身をよじる。

しかしいまいち体が言うことをきかない。


(はぁ…はぁ…ん?…あれ…おれいつのまに…寝て…え!?あれ!!?)


リアンは今の状況にやっと気づいた。

任務があるのにもかかわらず、疲れてそのまま眠ってしまったことを。

一気に目が覚め、立ち上がろうとする。

しかしうまく立ち上がれない。


(やばい!俺あのまま寝ちゃって…くそ!立てない!どうなってるんだ!)


相変わらず体液まみれのピチピチバニーガールに密封され、床に横たわっている。

しかし、寝落ちした前と違うのは後ろ手にされ手首を縄で縛られていることだ。

そして足首も縄で縛られてしまっており、これでは丸太のように転がることしかできない。


「むぐぅぅぅぅ!」


猿轡を入れられた口で叫ぶが唸り声しか出ない。

体をゴロン!と反対側に回転させる。

すると二人の女性が目に入った。

一人はオーナーのノエル。

マスクはもう脱いでいて、肌タイツのフードを顔の前に垂らしており、首から下はまだ着ぐるみメイド服ままだった。

そしてもう一人はなんとあのピンク髪の着ぐるみメイド、桃花だった。


「あら?紫苑起きたみたいね?」

「そうみたいですね♪どうしますかノエルさん?」

「ふぅ!ふぅ!ふぅ!うぐっ!」


マスクの狭い視界から周りを見回す。

そこは男子更衣室ではなく、店の裏の倉庫だった。


(桃花!?まさかノエルとグルだったのか!?やばい!逃げないと!)


必死になって手首と足首の縄を解こうとする。

しかしギチギチに縛られていてびくともしない。

のたうち回っているリアンを見てノエルはお腹を抱えて笑っている。


「きゃはははは!無様な恰好ね!私の周りを嗅ぎまわってたみたいだけど全部無駄だったみたいね!桃花にぜ~んぶ教えてもらったわ!」

「カメラもマイクも全部取りました♪素人だったみたいですね?」

「!!!」


ノエルは悪魔のような醜い声で笑い、たいして桃花は相変わらず可愛らしいアニメ声で口に手を当てクスクスと笑っている。

リアンはこの状況に絶望した。

今までリアンがしてきたことが全て無駄になってしまったのだ。

これでは現場を押さえるどころか、逃げられるのが関の山。

その上身動きできないこの状況…リアンの脳内に最悪の光景が浮かぶ。


(はぁ!はぁ!どうしよう!失敗した!このままじゃ俺…消される!)


マスクの中で青ざめるリアンのもとにノエルは歩み寄り、腰を下ろす。

そして無駄に整ったその綺麗な顔を歪め、ニタァ…と気色悪い笑顔を浮かべながら淫具のリモコンを見せびらかす。


「このまま消してもいいけど…最後にちょっとだけ虐め倒したいわね?いいかしら桃花?」

「ノエルさんもお好きですね♪ちょっとだけですよ?」

「ふぅ…ふぅ…ふぅ…うぐ!」


マスクの中でノエルを睨みつけるリアン。

しかしそれは全く意味のないことだ。

そのリアンをあざ笑うかのようにノエルはリアンを仰向けにし、補正下着に包まれた股間を靴のヒールで踏みつける。


「うぐぅ!」

「くっくっく…いい反応ね?じゃあ今度はこれよ」


ノエルは手に持ったリモコンのボタンを押す。


ヴィィィィィィン!


「むぐぅ!!!」


忘れかけていたあの感覚を無理やりその身に刻み込まれる。

刺激から逃れようと身をよじろうとする。

しかし動くとノエルに股間をヒールでなじられてしまう。


「ぐっ!!むぐ…!」

「ほらほら動かないで?痛くされたくないでしょっ!!」

「うぐぅ!!!」


ヒールがリアンの股間をグリグリと刺激する。

それに補正下着の中に入れられている小柄ローターからの刺激も加わる。

さらにノエルの体重がかかっているせいで余計にアナルディルドが深く刺さってしまい、前立腺が刺激される。

マスクの中でドバっと涎を出してしまう。


「ぶふっ!うぐ…うぅぅ!!」

「情けない声ね!それでも男なの?あぁ違ったわ、こんな恰好してまで潜入した女装趣味のあるド変態だったわね?きゃはははは!」

「うぅぅ!!!」


(はぁ!はぁ!やめろ!俺は変態なんかじゃ…な…いぃぃ!!)


今まで散々虐められていたせいでこんな屈辱的な状況でも感じてしまっていた。

リアンに限界が近づいていた。

それを見透かしたようにノエルはまたリモコンのボタンに手をかける。


「まだバイブの振動強くできるのよ?上げてもいいかしら?いいわよね!」

「!!?むぅむぅ!むぐぅ!」


(いやだ!やめてくれ!もう…無理なんだ!とめて!)


リアンはお尻をビクつかせながら情けなく首を必死になって横に振る。

そんなリアンの姿を見せられたノエルはさらに燃え上がってしまい、顔を真っ赤に染めながら自分の頬に手を当てうっとりとした顔をする。


「むぐぅ!むぅむ!むぅぅ!」

「はぁ…はぁ…やっぱりあなた超好みだわ…ここで消すのがもったいないくらい…だから最後は盛大にイかせてあげようかしら…ね!!」


ノエルが力強くリモコンのボタンを押し込み、ヒールでグッ!っとリアンの股間を踏みつけた。


「いぎぃぃぃぃぃぃ!!!」


ドピュッ!!!


今まで感じたことのないくらいの快楽がリアンを襲う。

大量の精液が補正下着内にぶちまけられ、全身をビクンビクン!と痙攣させる。

マスクの中で涎を大量に吐き出し、白目まで剥いてしまった。

何も考えられない。


(あっ!あが!い…いぎ…いぐ!!)


淫具の振動は止まっていない。

ノエルにグッ!グッ!っと股間をヒールでなじられる。

何度も小さく絶頂させられ続ける。

その度にお尻をブル!っと震わせ、股間からドクドク精液を垂れ流す。

意識が飛んでしまっていた。


そんなリアンを見てノエルは顔を真っ赤にしながらリアンの被っているマスク、紫苑の唇に口づけをする。


「はぁ…はぁ…よかったわよ紫苑…大好き…本当に惜しいわね。でもね、貴方が私の裏の顔に気づいたから悪いのよ?残念ね」

「ぐっ…うぐ!ぐぅぅ…くふっ!」


リアンの耳のはもうノエルの汚い言葉は届いていない。

やっと淫具の振動が止まった。

しかしそれはリアンの利用価値がなくなったことも意味していた。

いつまでも痙攣しているリアンから離れないノエルを見て、しびれを切らした桃花が喋り出した。


「ノエルさん?もうそいつは放っておきましょ?例のモノを見せてもらえますか?」

「はぁ…はぁ…えぇ…ごめんなさい。あまりにも昂ぶってしまったから」


ノエルはやっとリアンから手を離し、足元に置いてある小型のアタッシュケースをテーブルに置き、桃花の方に向ける。

桃花も自分の足元にあった大きなアタッシュケースを重そうに抱え上げ、同じくテーブルに置いてノエルに見せる。

お互い交換したアタッシュケースの蓋を開けて中身を確認した。

桃花はうんうんといつものような可愛らしい仕草で頷いている。

しかしノエルは少しだけ不満げな顔をする。


「ちょっと金額が少ないんじゃないかしら?結構渡したんだけど?」

「いえ、十分だと思いますよ?」

「はぁ?どこの相場でもの言ってんの?ふざけてんのかお前?」


ノエルはあからさまに喧嘩腰で喋っている。

しかしそんなノエルに一切桃花は動じない。

それどころかとんでもないことを言い出した。


「だから言ってるじゃないですか?そのお金、貴女にはもう使い道ありませんからね」

「何言ってんだ?………まさか!?」


ノエルは何かに気づいたのか、貰ったアタッシュケースを持たずにドアの方に走りかける。

その時だった。


ドン!ダダダダダダ!


数人の黒服の男たちがドアを蹴り破って倉庫内に侵入し、ノエルを取り囲んだ。

しかも銃まで所持している。

ノエルの顔が一気に紅潮し、桃花を鬼の形相で睨みつけた。


「ハメたな…この糞アマァ!!!!」


それに引き換え桃花は全く動じず、黒服の男たちに指示を出していた。


「麻薬所持の現行犯です。連行してください」

「ハッ!」


男たちはノエルを取り押さえ壊したドアから出ていこうとする。

ノエルは屈強な男たちの拘束され無駄だとわかっていても怒りが収まらず醜く喚きほざいている。


「その女も連れてけよ!なんで私だけ…離せ!この野郎!!」

「………」


心の醜さが滲み出ており、ノエルはその綺麗な顔をひどく歪ませながら罵詈雑言を桃花に言い放っていた。

こうしてノエルは部屋から連れていかれた。


部屋には2人の黒服の男と桃花、そして床に転がっているリアンが残された。


(はぁ…はぁ…あぇ…なにがおこって…るんだ?)


ノエルの大声で意識を取り戻したリアンは状況が掴めずにいた。


(なんだ?男が…いる…え!?やばい!消される!!)


「むぐぅぅぅぅ!」


リアンは大声でうめきながら芋虫のようにドアの方に這いずっていく。

部屋の中を調査していた男たちはその声にビクッと反応し、リアンを見る。

そしてゆっくり歩み寄ってきた。


(やばいやばいやばい!いやだ!死にたくない!助けて!助けて!!)


リアンはマスクの中でギュッと目を瞑り、膝を折りたたんで丸くなる。

股間から精液ではない液体を漏らしてしまった。

スーツの股間の部分が生暖かくなっていく。

失禁してしまったのだ。

恐怖でビクビク震えるリアンを見て男たちも困ってしまい、桃花の方を向く。


「どうしますか?え~と…とりあえず」

「いえ、大丈夫です。お二方は引き続き調査をお願いします。この子は私が介抱しますので」

「わかりました」

「ふぅ!ふぅ!むぐぅ?」


(はぁ…はぁ…え…カイホウ?なんで?え…え?)


マスクの中でゆっくりと目を開くリアン。

目の前にはあの桃花が腰を下ろし、リアンの体を縛っている縄を解いてくれた。


「ごめんね騙しちゃって…今助けてあげるから」

「ふぅ…ふぅ…ふぅ…?」


いつも可愛らしく喋る桃花とは全く違う声がマスク内から出てくる。

そしてこの落ち着いた凛々しい女性の声にリアンは聞き覚えがあった。


(この声…まさか!?)


桃花は後頭部に手を回し、ゆっくりとチャックを上げてマスクを外した。

むわっとした蒸気の中からリアンの見知った顔が出てくる…同じ麻薬取締官の憧れの先輩、ルナだった。


「ふぅぅぅ…暑い…それに…汗臭いわね」


桃花を昼から夜まで着ていたせいで、顔中汗まみれで肌タイツがびっちょりになっていた。

桃花のマスクをそっと床に置き、肌タイツをうなじあたりまで開け、フードを顔の前に垂らす。

いつもは艶のあるロングの黒髪が頭にへばり付いていた。

そしてルナの言うように少し汗の匂いがする。


いつもと変わらないクールなルナとは対照的に、紫苑の中のリアンは困惑していた。


(ルナさん!?なんでここに?桃花がルナさんだったのか!?どうなってるんだ!?)


「いつまでもその恰好じゃ可哀そうだし…シャワー室行きましょ?脱がせてあげる」

「………」


そんなリアンの気も知らず、ルナはリアンに肩をかし、シャワー室まで一緒になって歩いていった。

リアンは歩くたびにグジュ!グジュ!っとスーツ内の液体が鳴ってしまい、マスクの中で顔を真っ赤にしていた。

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