第5話 まさに彼女の
◇同日 放課後 部室
「いやー何ともスッキリしましたね」と、今日の出来事を振り返る。
「まぁ、そうだな。すっきりはした」
これからの注目は完全に俺たちであり、今更あいつらどんだけイチャイチャしようと、女としての格がレベチであるリノアの前ではただのバカップル同然で鼻で笑われる存在でしかないのだ。
「ですよねー。んじゃ、そろそろ本格的に部活始めますか」
「...てか、リノアも幽霊部員になると思ってたんだが?」
「何言ってんすか?彼女が幽霊になるわけないじゃないですか」
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093078935809137
「彼女って言っても仮だろうが」
「だからそれは先輩次第です」
「...彼女とかは当分いらないから」
「そうですか。それは残念です。てことで、まずは先輩の実力を測ってもいいですか?」
「んだよ、実力って」
「探偵としての実力です。だってここ探偵部ですよね?それではクイズです。デデン。
『A~Dの中で3人は正直者で、1人が嘘つきです。嘘つきはだれでしょう?
A:Dはうそをついている。
B:僕はうそをついていない。
C:Aはうそをついていない。
D:Bはうそをついている。』」
「...それ探偵用のクイズなの?」
「探偵に大事なのは推理力です。物事の整合性とか誰が矛盾にしてるとかそういうのが大事ですよ」
「...」
AはDを嘘だと言ってて...Bは嘘をついてなくてCはAが嘘をついてないって言ってて...。
紙とかなしで考えるのきっついんだが。
それから15分ほど考えて、「...Dかな?」
「正解です。A〜Cの言ってることが本当だとしたら辻褄が合いますから」
「よ、よし!それ見たことか!」
「いや、先輩、、、遅いっすよ。これくらい3分もかからないですよ」
「...別に探偵ものの小説とかが好きなだけで...別に推理力があるわけじゃないし...」
「はぁ、がっかりしました。もう少しできると思ってました」
「何を期待してんだよ。勉強は得意だけどそういうIQとかそういうのを試されるの苦手なんだよ」
「それでよく探偵部の部長を務めてますね」
「俺しか居なかったからな」
「じゃあ、私と代わりますか?」
「変わらねーよ。乗っ取ろうとするなよ」
「いいじゃないですか。てか、探偵部って実際何してるんですか?」
「まー、そうだな。基本的には...何も」
「何ですか?彼女とイチャイチャするために入ってただけですか?私はちょっと探偵ごっこに期待してたんですよ。てことで、まずはSNSのアカウントを作りましょう」
「...アカウント?」
「はい。お悩み相談というか、探偵らしくいろいろ調査したりとかやりましょう」
「意外とモチベ高いんだな」
「はい」と、携帯をぽちぽちといじり始める。
「アカウントできました。明日までにチラシ作って、まずは校内の掲示板に貼りまくってみますね」
めっちゃやるきだなぁ...。
俺は別に探偵は目指してないんだが。
その日はクイズを出し合いながら、迷いなくほぼ即答する彼女のその天才っぷりに驚嘆しつつ、一緒に下校する。
もちろん手を繋いで。
「...なぁ、もう誰もいないし、手離して良くないか?俺、手繋ぐと汗ばんじゃうタイプだし...汗だくの手を握ってるの嫌だろ?」
「別に良いですよ。私は先輩の手汗なら喜んで舐められます」
「いや、ちょっとそれは普通にきもいぞ」
「好きな人の汗くらい誰でも舐められますよ。普通。それに離したくないですし」
「...おう」
家に帰ってからも電話をしたりとそれはまさに彼女のようだった。
◇
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