閑話:人物事典「凶王アストラル」
【アース:0】
住人:凶王アストラル
旧名:アストラル・フォン・エヴァレンス
種族:人間
性別:女性 17歳
「外見的特徴」
エヴァレンス一族の先祖にハイエルフ族の女性がいた為か、アストラルもその血の恩恵を受けて容姿は整っていた。
しかし、ハイエルフ族とヒト族では寿命に差がある為、その容姿を磨く時間、もとい労力は無く、精神的な負担が多きかったアストラルの容姿は俗に言う「せっかくの美人が台無し」状態となっている。
髪はブロンド。長さはミディアムより少し長い。耳から上の髪をゆるくまとめて結び留め、耳から下の髪は結び留めずそのまま下ろしている。
精神的な負担が原因で年齢に反して白髪が多く、主に前頭部の髪に白髪が集中している。病み上がりという事もあって、髪もかなり傷んだ状態と言える。
体つきに関しては「恵体」の部類に入るが、ヒト族よりも亜人の数が多いアース0では「貧相」な体つきと言われていた。
貧相と言われる原因は、エヴァレンス一族が純血のヒト族ではない事が原因だ。
筋肉を始め、その他の肉体的要素がヒト族より優れている亜人から見れば、アストラルは「恵体」と呼べる状態ではない。
服装に関しては、足元から順に、黒のブーツサンダル、白の七分丈のズボン、黒のフレンチスリーブを着用している。
細かい装飾品として、右側の腰に錆びついた王冠を吊るしている。左側の腰には剣があるため、装飾品は身に着けていない。
その他、両手首の古傷を隠す為に黒地のスカーフを両腕に巻いている。
アストラルの服装は彼女自身が選んだ物ではなく、心の病に侵された王を心配した魔族達が人間界から拝借して着せた物である。
「性格的特徴」
エヴァレンス一族は全体的に利己主義の人間が多い家系だが、彼らの「己」は一族全体を対象としている。
エヴァレンスの血を引くアストラルも例に漏れず利己主義の人間だが、フォン・エヴァレンスの名を失ってからは従来通りの意味を持つ「利己主義」と化した。
アストラルが心の病に掛かったのは、魔族を狩る人間も利己主義な人間だった影響が大きいだろう。
大が付くほど嫌いな人間と同じ生き物に成りたくないと同時に、嫌いな奴の為に自分が変わるのは嫌だという考えが煮詰まった結果と言える。
宇宙全体の生物を絶滅させたアストラルの性格は「凶王」と呼ぶに相応しいが、そもそもの発端はアストラル以外の生物が完璧な平和を望み過ぎた事にある。17歳で魔界の統治者となった彼女は、絶対に辿り着いてはいけない答えに辿り着くまで追い込まれたのだ。
「黒き
アストラルが腰に吊るしている鞘を持たない両刃の長剣を模した鈍器。
剣先が地面に干渉する事が多く、腰に吊るした状態で走ると摩擦で火花が発生する。
粗末に扱われている剣だが、その耐久性は攻撃力と防御力が極限の状態に至るまで洗練されたアース0の世界で戦い抜くほど高い。
アース0では、耐久力に欠ける武器が最弱の武器に成り下がる傾向があった為、剣の形をした鈍器で殴り合うような戦闘が主流だった。
剣の形をした鈍器の威力は大槌など純粋な鈍器に劣るが、扱い易い点では大槌に勝り、様々な魔法を駆使して近接戦を仕掛ける場面では類を見ない強さを発揮していた。
剣型の鈍器は切れ味が皆無である為、威力に関しては技量よりも筋力に依存している。
剣の技術の方向性を示す流派に関しては、剣術もクソも無い筋力任せの攻撃が主体の【タイタン流派】が理由も無く強かった。
流派の名前にもなっているタイタンは、アース0に生息していた全長400メートル越えの大型生物全般の族称である。
タイタンは宇宙を縄張りにしている個体が多く、食事の時期に成ると近くの星に降りる習慣を持つ。
当然の事ながらタイタンは星の核を含む全ての資源を吸収し尽くすので、タイタンを倒せない星の住民に未来は無く、生き残っていた星は全長400メートル超えの大型生物を大気圏突破前に始末出来る者で溢れている環境に限られていた。
タイタンすら撲殺可能なアース0の武器は、聖剣や魔剣など異能付きの武器も含めて「戦術装備」に分類される代物だが、アストラルが手にしている黒き剣に関しては、アース0唯一無二の「戦略装備」に分類される。
黒き剣の正式名称は、【アンモラル・ウェポン:マルチバース・ディザスター】である。
この名称は、アストラル本人が「道徳的にお前の倫理観を破壊してやる」という想いを込めて付けたものだ。
「性質:凶王」
アース0には、生まれる前の世から定まっている運命を「性質」と呼ぶ文化があった。アース0では性質の事を「
性質は、子供が産まれた時に洗礼を授ける儀式に近いもので、信じる者にとっては抗えないものとして認識されている。
性質には様々な種類が存在するが、通常はその人物の言動から推測されるものであり、「悪人」という性質を授かったからといって、本当に悪人かどうかは分からない。
悪人の性にあるにもかかわらず善人を気取るから仕事が上手く行かないなど、そういった物事の捉え方が一般的だった。
そんな様々な性質の中で、最も恐れられているのがアストラルに与えられた「凶王」の性質。
これは、凶王の性にある者には細心の注意を払って接する必要があるという意味だ。
「ヘンドリックとの関係」
魔族を庇う前のアストラルは、若き王ヘンドリックの付き人にして友人だった。
各国の王が集う議会の場でもアストラルは付き人として参加しており、他国の王からも魔族に肩入れするその性格は認知されていた。
議会の場では魔族に襲われた人里の話題、襲われた人里周辺の魔族の討伐件数なども報告されていたが、この報告をヘンドリックと共に聞いていたアストラルがどう感じていたかは言うまでもない。
王都の若き王の付き人に相応しい言動を心掛けていたアストラルが戦争の発端となる例の言葉を口にしたのは、ヘンドリックが魔族と人間の共存実現に苦しむ姿に耐えきれなかったからだ。
「アストラルの魔法について」
アストラルには、人間の記憶領域を超えた数の魔法を保有している事が原因で、発作を引き起こしたように魔法を使ってしまう時期があった。
一度発作が起きると対象を選ぶ事が出来ず、時には自分に対して体の内側から爆裂魔法を発動させる事もあり、発作時の魔法はその時の感情に左右されて完全に制御不能の状態だった。
地球から来た少年「クサカベ・アキラ」と出会う事で一時的に発作は治まったものの、アキラと出会えない時間が増えると発作が起きる点は変わらなかった。
アキラとの面会は一時的な治療行為に過ぎない為、根本的な原因を取り除く事を相談し合った魔界の上級悪魔達は、アキラが七人の勇者に殺された事を機に、彼の死に耐えきれず昏睡状態に陥ったまま魔法を放ち続けるアストラルから魂を奪い取っている。
魔力を操作する為に必要不可欠な魂、感情を奪い取る事には成功したが、そこから再び魔法を使えるようにする術を知らなかった悪魔達は、七人の勇者が地球に帰った後に起きた天界の襲撃に対抗出来ず、魔法が使えなくなったアストラルを残して絶滅している。
そんなアストラルが再び魔法を使えるようになったのは、彼女自身の努力の成果と言える。
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