第32話 番外編 連城夫妻の休日
読者の皆様、こんにちは。
今回はとある新婚夫婦の休日について書いてみたいと思います。
私事で恐縮ですが、先日義弟(私とは血のつながりが無い弟なのです)が結婚いたしました。
それと共に私に可愛い義妹が出来たわけです。
仮に彼女をNちゃんと呼ぶことにしましょうか。
彼女は私の小説を全部読んでくれていて、私の大ファンだと公言してくれています。
そして私にとっても、(詳しいことは省きますね。少々立て込んだ話なので)彼女は感謝してもしきれないほどの恩人なのです。
さて前置きはこれくらいにしましょう。
義弟とNちゃんは現在、都心にあるマンションに居を構えています。
将来的には、子供をのびのびと育てるため郊外に戸建て住宅を購入する予定だそうですが、新婚の間はNちゃんの長年の夢であったデザイナーズマンションに住むことにしたそうです。
Nちゃんは不動産関係のお仕事をしているので、義弟は契約から設備のチェックまで全て新妻に任せっきりです。
先日義弟とNちゃんが私の自宅へ遊びに来ました。
私の息子もハウスキーパーのKさんも、Nちゃんが大好きなので大喜び。
ふたりはしょっちゅう手作りのスイーツをせっせと作ってはおみやげに持ってきてくれます。
そのスイーツは広いシステムキッチンでふたり並びながら、仲良く(?)作っているみたい。
「ねえ、お義姉さん聞いてくださいよ。M(義弟の名前です)ったら、すぐに私の仕事を取っちゃうんです。私が生クリームを混ぜているのに『貸せ。俺の方が力あるんだから任せろ。』って。それじゃあ苺でも切ろうかなって包丁を出すと『指を切ったら大変だろ。』って。ちょっと過保護すぎません?」
「お前には大切な役目を与えているだろうが。」
「それって味見のこと?」
「そうだ。Nの舌に合わせて作ってるんだから、Nが美味しく感じなければ意味がない。」
「そんなの・・・Mの作るスイーツはいつだってすごく美味しいわよ。他とは比べものにならないくらい。」
「だろ?俺のスイーツには『愛』というスパイスが入ってるからな。」
「・・・もう。Mったら・・・」
はいはい。ご馳走様。
こんなこともありました。
義弟が深刻な顔で私に相談があると言ってきました。
何事だろうと聞いてみると・・・
「Nがなにか隠し事をしている。最近なんだかよそよそしいし・・・。この間も友達に会いに行くといって休日に出掛けたが、あれは絶対に嘘だ。あいつは嘘が下手だから、顔を見ればすぐにわかる。」
私は少し考えたあと「もうちょっと様子をみてみたら?Nちゃんに限って悪いことはしないはずよ?」と助言しました。
すると一週間後・・・
義弟とNちゃんが一緒に我が家を訪ねてきました。
見ると義弟はぴったりとNちゃんのそばにくっついて離れません。
Nちゃんは口を尖らせ
「お義姉さん・・・はっきり言ってMがうっとおしいです。」
と不満を口にしました。
「おい。夫に向かってうっとおしいとはなんだ。口を慎め。」
「うっとおしいものはうっとおしいの!ずっと私のあとを付いて歩いて、片時も離れないんだから。せめてくっつくのはベッドの中だけにして!」
「当たり前だろ?お前はもうひとりの身体じゃないんだぞ?もしNが転んだりしたらと思うと心配で仕方が無い。」
そう、Nちゃんはご懐妊したのです。
休日にお出かけしていたのは、義弟にそのことをサプライズ報告するために、ひとりで病院へ診察に行っていたのです。
今、義弟の頭の中は、ベビーグッズのことで一杯だそうです。
「Mったら・・・最高級品のベビーカーやベビー服のカタログを山ほど持って帰ってくるんです。私は赤ちゃんの時期なんてあっという間に過ぎるんだから、量販店のものでいいって言ってるのに・・・」
「お前な、赤ん坊の時期は短いからこそ、可愛いものを着させてやりたいだろうが。」
「その分を教育費に回したいの!」
「教育費は教育費でちゃんと預金がある。俺の財力舐めんなよ?」
「あら?私だって家計には貢献してるわよ?M以上にね。」
ああ、また始まった。
でも、結局最後には・・・
「でもそんな子煩悩なMが好き。」
「俺も将来をしっかり見据えているNが好きだ。」
そして義弟はNちゃんのおでこにキスを落として二人の世界に入ってしまう。
ほんと、見てられないったら・・・
そうそう。そんなふたりに触発されてしまったのか、我が息子にも可愛い彼女が出来ました。
学校が終わると彼女と待ち合わせして、公園で仲良く本を読んだりおしゃべりをしているそうです。
今回は珍しく身内ネタになってしまいました。
甘い幸せを読者の皆様にお裾分けできたのなら幸いです。
けれどこのエッセイ、無事掲載されるかしら?
なんせ栄文社出版の担当鬼編集者は私の義弟ですから・・・。
それでは皆様ごきげんよう。
また次の号でお会いしましょう。
※栄文社出版 女性雑誌strawberry moon
木之内惣エッセイ『ひだまりのエブリデイ』より
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