第7話 春色のキューピットが来る時、葵の恋は沈む
ビーコン…ビーコン…ビーコン…
カチャカチャカチャカチャ…
次葉南高校の地下の何処か…
いかにも古めかしいコンピューター…
いや、この場合電子頭脳というのが
正しいだろうか…
そんな感じの分厚い電子機器が壁にビッチリと並べられた、
怪しすぎて逆に怪しくない暗室があった。
光源は少なく、電子頭脳のランプを除けば
緑だとか紫色の照明が極めて緩やかな明滅を
繰り返すばかりであった。
「桐子…仲村康介攻略作戦の進捗は
どうなっておる?」
「はっ!作戦を実施いたしましたが、
成果は思わしくございません…」
「なんだとぉ‼︎」
「しかし、大首領様!
必ずや奴の堕落しきった姿を
真夏のお天道様の下に晒して
ご覧にみせます‼︎」
「…うん、お主が言うのであれば…
うん、信じましょう!」
「ありがたき幸せ‼︎」
「だが!もし失敗するような事があればぁ‼︎」
「わかっております…
ソー活でございますね…」
「その通り!高血圧にならぬよう
精々励むが良いぞよ‼︎」
「ハハァ‼︎」
「それでは春色キューピット定例報告会
終わり!解散‼︎」
「似てた…確かに似てた…」
「なんの話です?
相変わらずいやらしい顔をして…」
「いやらしいはやめろ!いやらしいは‼︎」
「……はっはーん…」
「なっ…なんだよ…」
「さては昨日の女の子の事でしょぉ〜」
「そ、そ、そ、そんな…」
「隠さなくてもわかります、
鼻血が出てますもの」
「え‼︎」
咄嗟に鼻の下に手を触れる。
「嘘です」
「や、やめんかそんな嘘ぉ‼︎」
「まぁ…確かにわかりますよぉ〜、
美少女の…しかも純白の下着なんて拝みたくても拝めませんからなぁ〜」
「お前と一緒にするな‼︎変態ッ‼︎」
「お腰につけたミサイルキャニスター…」
「ハッ‼︎」
「嘘です」
「…バカッバカッ、このスケベェッ‼︎」
「痛い痛い…」
「大体!そんな事を気にしていたわけでは…
ゴニョゴニョ……」
「じゃあ、なんです⁈
思春期爆発以外のなんだと言うのです⁈」
「…アンタにだけは知られたくない……」
「フッフーン…いいですかい?
そんな事言っちゃって」
「良いんだよ言っちゃって…」
「そうですか…」
「そうだとも…」
「ところで、ぶつかられた方の女の子の素性を知ってるんですけど……興味あります?」
「な…ななななんて?」
「転んだ方の女の子がどこの誰か
知りたくありません?」
「……それはぁ…というか、
なんでいきなしそんな事をぉ⁈」
「顔に書いてありますよ」
「そ、それも嘘だろ?」
「こればかりは本当です、額にビッチリと
“あの日、交差点で転んで尻餅付いてたあの子…
中学最後の夏に出会った天使にそっくりだったなぁ…”
とか書いておりますです。」
「…クゥゥゥン………」
「どうです?教えてあげましょうか?」
「……………教えてください」
「…聞こえませんなぁ〜」
「…………教えてくださいぃぃぃ‼︎」
「ようがすよ、ようがすよ」
胸ポケットから紙を取り出す。
「涙と汗の密書です…
頃合いを見て使ってください…」
「……ゴクリ…」
「そこに載ってますけど、名前は烏野桐子、
2年B組の容姿端麗、品行方正、健康優良、
不良少女担当です。」
「おい!最後の四字熟語おかしいだろ‼︎」
「本当の事ですよぉ、彼女は春色キューピットの一員なのですから」
「それは己の妄想の産物でしょうがぁ‼︎」
「まぁ、私には関わり合いのねぇこってすから、お好きなさるがよろしいです…」
「言われずともそうさせてもらう!………」
隅から隅まで情報を取り込もうとする康介に
妙吉が思い出したように一言呟いた。
「そうそう、それ落とさないでくださいよぉ〜
校内ウォーターゲート事件に
なりかねませんからねぇ」
「どういう………‼︎」
あまりに個人的な情報に気づいて、
一筋鼻血が垂れる。
「そういう事です…」
「…………返すよ…」
「えぇ!いいんですかぁ⁈」
「素性がわかったからいい」
「でも、攻略ポイントも載っとるんですよ」
「そんなんに頼らずに落とす!
それが男という者だ‼︎」
「あらやだ、カッコいい……
志之くんもそう思わない?」
「………うん」
「ふぉぉ‼︎いっつの間に‼︎」
「さっきからいましたよぉ、ねぇ〜」
コックリと頷いた。
「…コホンッ、とにかく先輩であろうと
仮に魔女であろうと、
私は落としてみせるっ‼︎」
青年の決意に総勢2名の熱い拍手が贈られた。
声高に愛を叫んだ康介!
だが、運命の悪戯か惚れた方は葵ではなく、
悪魔の手先、桐子であった‼︎
焦れ!葵‼︎
呑気にやってる場合じゃないぞぉ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます