第6話 登場!予告なき挑戦者‼︎(caution)
「スンスンスン……」
「「「本当にごめんなさい…」」」
メソメソと泣く葵に三人?で
声を合わせて謝った。
「それにしてもどうするよぉ?」
「大丈夫…まだ方法はあるわ‼︎」
「メソ……ほんとぉ?」
「安心して!必ず彼を虜にできるはずよ!
多分‼︎」
「なんか、中途半端な確信だのぉ…」
「一体、何するんだよ?」
「通学途中を装って、
彼に激突して意識させるのよ!」
「……なんかどっかで聞いた事が
あるような…」
「そういうのはどう?」
「わ…わかった……やってみる」
「よし!そうと決まれば…」
葉子が直立二足でスックと立ち上がった。
「あおちゃん、行くわよ!」
「行くってどこ行くんだよ」
「この作戦の趨勢を決める
決戦兵器を渡すのよ…」
「変にはぐらかすなよ、なんでここで…」
言葉を繋ごうとする団吉の鼻っ面に
葉子の鼻先が突き刺さして、優しく囁く。
「……鈍いわねぇ…
あとでゆっくり教えたげるわよ…」
ドキッ!
ボッーと佇む団吉をよそに
葵と葉子は森の闇へと消えていった。
その様子を木の上の鳥爺はニタニタと見つめるだけだった。
「作戦開始」
「生徒番号確認、当該人物次葉南高校所属、
氏名、仲村康介」
「そのまま進んでいきそう?」
「通常の通学路を北上中!変更ありません!」
「よし!そのまま頑張ってねコーちゃん‼︎」
「了解‼︎」
「大丈夫ぅ?こんな事して」
「大丈夫よ!多分……
あおちゃん!準備いい⁈」
「う…うん」
セーラー服に身を包んだ葵が
お尻の辺りをもじもじさせながら
ぎこちなく答えた。
「警報‼︎友人と思しき人物が接近中‼︎」
「何…」
「目標会敵予想時刻1組目、08:48!」
「回避よ!全力を持って回避‼︎」
「回避できない!既に友人と接触‼︎」
「やぁやぁ、お兄さん…ご機嫌麗しゅう」
「そんなに麗しくないかなぁ…」
「おやおや、どうなされたんですか?」
「朝から気疲れる人間に会えばそうもなるよ」
「そんなイケズなこと
言わんでくださいなぁ〜」
「ひっつくな…堂守なんとか言ってやれ!」
「…嫌がることは良くない」
「進路変わります!」
「まずい!どっちに行ったのコーちゃん‼︎」
「右、右の方に行きました‼︎」
「了解!あおちゃん場所変えるわよ‼︎」
「えぇ⁉︎ちょっと待って…」
腕を急に引っ張られ、
もつれ気味の足で待機地点へと急いだ。
進路上の交差点の左側から
急いで出る事にした。
「ここなら間違いなく迎撃よ!
急いであおちゃん‼︎」
「はぁ…はぁ…はぁい…」
「警告!警告!進路上に
接近中の人物あり‼︎減速せよ‼︎」
「見えたわよ!進むべき道がぁ‼︎」
「…まっ…待って‼︎」
「さぁ!いってらしっしゃい‼︎」
葉子が思いっきり葵の背中を押した。
「ひゃぁぁぁ‼︎」
ごっっつ〜ん‼︎‼︎どっってぇぇん‼︎‼︎
衝突の後、転倒した。
作戦は見事に成功した。
ただ1つ、真正面から来た女子高生に
激突した事を除いては…
…………………〈切り取り線〉…………………
激突の衝撃に若干頭がボッーする。
「……うぅ…」
唸り声を絞り出し、
ゆっくりと顔を左右に首を振る。
ムニィ…ムニュムニュ…
こめかみの辺りにとても柔らかくて
暖かい物が当たる。
「……あのぉ……すいません…」
頭上から躊躇いと恥じらいが混じり合った
囁きが聞こえた。
「はい…………ハッ‼︎」
声の源に目を向け、ようやく状況が飲み込めた葵は顔から火が出そうだった。
それもそのはず彼女の顔に当たっていた
心地良い小山の正体は
「……お…おっぱい…」
動きたいのは山々なのだが、
恥ずかしさに頭がグラグラ煮え、
目が回って動けない。
そこにそっと手が差し伸べられた。
「大丈夫ですか?」
「へぇ……ふぁい…」
差し伸べられた手の方に目を向けると
あの日唇を交わした愛しの彼がいた。
心の準備が出来てないところに
広がる夢の様な光景にウットリする
よりパニックである。
「はぁぁ…………はいぃぃ‼︎」
バクバクと鼓動を刻み、
それでも平静を装って、
彼の顔見つめ腕を伸ばそうとした。
だが、その顔は真っ赤になり心ここに在らずという感じだった。
ハテナ?と頭に疑問が一瞬浮かんだが、
その理由はすぐにわかった。
お尻がなんだか涼しい…
前に転んだせいで、
お尻を突き出す体勢となってしまった。
さらに悪いことにスカートが捲れ上がり、
葉子の用意した決戦兵器が露わとなった。
決戦兵器…それは純白のパンツである。
しかも、それは黒いリボンを装飾した
ただ白いパンツでは無い。
お股とお尻を包む布面積は
一般的なそれと比べ小さいのである。
つまり、葵は今…
股下から腰にかけて急角度の
逆二等辺三角形を形作る
布に包まれた可愛いお尻を突き出す形で
地に伏している。
「‼︎………ひゃぁぁぁぁ…‼︎‼︎」
…………………〈切り取り線〉…………………
素早く上体を起こし、正座の姿勢になる。
顔を真っ赤にして、
ゆっくりと膝を伸ばし立ち上がる。
右手を差し出し、
押し倒された少女が手を取った。
それを支えにゆっくりと立ち上がると
葵は小さな声で
「……怪我してませんか…」と呟いた。
「…うん、大丈夫!ありがとう」
と微笑みながら言葉を返した。
葵は蒸気を噴き上げながら
「ど……どど…ど…」と言葉に詰まった。
「……どうも!すいませんでしたぁぁぁ‼︎…」
と叫んだ瞬間、
顔を掌で覆いながらそのままの進路を
暴走していった。
しばらくそれを見守っていたもう一人の少女は
何かに気づいて左腕の時計に目をやった。
「もうこんな時間‼︎急がなきゃ‼︎」
右折し、左腕を前後に振りながら、
学校の方へ走っていった。
そして遂に交差点には野郎3人しか
残らなかった。
「なぁかさん…ナーくん…」
名護が呼び掛けたが、仲村は手を伸ばしたまま
完全に放心している。
「……なかむらぁ!」
「ハッ!サンをつけろよコンニャロウ‼︎」
「やっと目が覚めましたか…」
ヤレヤレという様子で尋ねる。
「あれ?あの二人は?」
呆れた事に記憶がすっぽりと
抜け落ちているらしい。
「走っていってしまわれましたよぉ、あと…」
「あと…なんだよ?」
ニッコリと満面の笑みを浮かべこう言った。
「我々はかんっぺき遅刻です」
「……はぁぁぁぁぁ⁈‼︎」
「10分以上もフリーズとはなんとも…」
「言っとる場合か!走るぞ‼︎」
「今更ジタバタしてもどうしようも
ありませんのにぃ〜!」
ほぼ同じ頃、葵と正面衝突し尻餅をついた少女は学校の下駄箱でスリッパに履き替えていた。
「……あと、もう少しだったのにぃ」
そう呟く唇には悔しさの色が滲んでいる。
スリッパを突っかけ、プラスチックのスノコを踏みながら言葉を繋いだ。
「まぁ…まだまだこれからよ…」
企みを秘めた目を光らせ、
教室へと歩き出していった。
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