第4話 困惑!謎の男子高校生‼︎

肝試しから半年以上が過ぎ、僕にも春が来た。

恋焦がれているあの娘とは再会できていない…


新しい学校生活の期待と不安が彼女の残像を

より強く思い起こさせているのだろうか…


動悸と溜め息、

そして白昼夢に悩まされるのだった。


「とぉくを見つめて、

なんかあるんですかい?」

突如として背後から

猫撫で声のような気色の悪い男声が

飛び込んできた。


「んあぁ?」

「ほんのりニヤついて…」

「……そうか?」


「その感じだと恋煩いか

妄想かのどちらかと言ったところですかね?」

「うるさいなぁ、ほっとけよ」

甘い夢から醒めた上に半分当たっていたので余計に腹立たしかった。


このむかつく男、名前を名護妙吉という。

この高校に入学して初めてできた友人だ。


ヒョロッとした長身に丸眼鏡、

髪も後ろで括っているという

小洒落た風貌だが、中身はそれと一致しない。


人を揶揄っては怒らせ、

その気のない女の子を惑わせる許し難い男だ。

事実、その被害者数は僕の知る限り、

ここ1,2カ月で1クラスを構成できる程である。


「そんないやらしー顔をしておったら、

春色キューピットに狙われてしまいますよ…」

「なんだよ?その春色なんちゃらってのは?」


「ご存知ないですかねぇ?

年頃の青少年少女を誑かし、

恋愛という名の堕落に走らせる

恐るべきキューピット達なのです」


「なんだ、お前と同じ穴のムジナか…」

「なんか言いました?」

「いぇ、なんでもぉ〜」

「言っときますけど、

私はそんな暇人ではねぇですよぉ〜」

「よく言う…」


「まぁ、精々気をつけておいて損ないですよ」

「全く役立ちそうにない話をありがとう‼︎」

「どういたしまして…おっ‼︎」

「どした?……あ!」


目の前には妖艶な…というかなんだか妖しげな雰囲気を持った1人の男が立っている。

細身でまっすぐと伸びた髪に加えて、

男性な顔立ちは少女を思わせる。


彼こそ名護が連れてきた2人目の友人、

堂守志之だ。


「どうも……」


「どうもじゃないよ…一緒に帰ろうや」

「そうですよ〜、

それが友達というもんではないですかぁ〜」

「オマエの言う友達は忘れた宿題を

見せてもらう人間の事だろぉ〜?」

「あれ?バレました?」

ニヤニヤしながら名護が答えた。

「図星かよ‼︎」


この時まで僕は女っ気もなく平凡だが、

楽しい高校生活が始まりそうと

胸躍らせていた。


ヤツらがやって来るまでは…

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