第12話 レベルアップアップ
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
オークから奪い取った剣でコボルト三体とスライムを切り裂いて駆け抜け、鎧熊の突進を避ける。さっきより簡単に避けられるのは敏捷が倍以上になっているからだ。またもや壁に激突した鎧熊は部屋を揺らして、新たな犠牲者を上階から降らせる。
それを繰り返す。
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『《剣術》のレベルが上がりました』
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実績〈オーク狩り(剣術)〉を解除しました。
解放条件:オークを一〇体討伐する
剣を使用した場合の攻撃力が微増加(0.01%増)します。
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呼吸は荒い。マラソンをしながら攻撃を避けて、重い剣を振っているようなものなんだから当然か。いや、重いと言ってもさっきよりはかなり軽くなっている。
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やっぱどのゲームでもこの初期のレベルアップ祭りは気持ちいいな。ゲームじゃなくて現実なんだけどさ。とは言いつつも、すでにレベルアップしづらくなっているのは確か。ゴブリン数体倒したところで全くレベルアップしない。そのうえ、すでに体力もキツい。そろそろまた一秒に10円ずつ減る死の行進が始まってしまう。
俺は立ち止まり鎧熊に向き直る。
すでにステータスは十分育っている。
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レベル :8
攻撃力 :2000
防御力 :4000
魔法攻撃力:1000
魔法防御力:1000
敏捷 :3000
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残高はもう少しで一千万を切る。すでにこの場所で三百万近く使ってしまった。残機三つ分だ。レベルアップだけを意識してやってきたが、これからは戦術を考える必要があるな。
それも当然か。
いまや、剣を一振りするだけで、攻撃力は30000。鉄の剣だから木刀よりもずっと高い。限定解除をすれば十倍、つまり、一度振ると最大で300000円になる計算だ。そりゃ残高も減るよな。
その上レベルアップした影響か、限定解除の値段も5分で30000円にまで跳ね上がっていた。ふざけんな。ってことはなんだ、もしかすると体力なくなったとき訪れる死の行進も10円どころじゃ済まされないかもしれないってことか。
ヤバい。
けりをつけよう。
剣を構える。鎧熊もかなり疲れているようで全身汗まみれで湯気すら立っているけれど、戦意は全く喪失していない。ぐっと屈伸して、飛び出す。その動きはもう随分見慣れている。が、今度の俺は逃げない。
迎え撃つ。
駆ける駆ける。鎧熊のにおいがむっとキツくなる。その皮膚の熱さまで伝わってくるようなそんな距離。鎧熊が咆吼する。また、大きく腕を振りかざす。
全部見えてるよ。
新たにとったスキル《跳躍》で俺は思い切り地面を踏み切って、跳ぶ。本来なら避けるためのスキルだろうが、俺はコイツを使って攻撃力を底上げする。突撃ばっかりしてる鎧熊をみて思いついたんだよ。振り下ろされる腕から逃げるように跳んで、そして、胴を切り裂く。
残高が310000円減る。
スパン!
手入れもしていないだろうオークが握っていたなまくらの剣は鎧熊の胴体をいとも簡単に両断した。背中にはまだ金属の鎧がくっついていたはずなのに、それすら切り裂いて、鎧熊はずしんと倒れる。
『レベルが上がりました』
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実績〈ジャイアントキリング(小)〉を解除しました。
解放条件:レベル差が50以上ある強敵を討伐する。
限定解除の値段が半額になります。
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「だああ、やっと倒した」
広がる血を避けるようにふらふらと離れてから俺は地面に腰を下ろした。遠くでずずずと扉が開く音がする。やっぱりコイツはボスだったらしい。これで地下牢に戻れるな。ちょっと休んだらすぐに戻ろう、と思っているとジェリコが上から降ってきて、俺の残高を減らした。
『ますたー! ますたー! しなないでー!』
「おいやめろ! 生きてるっつうの! 話聞け!」
『うううう! ますたー! ますたー!』
ぶよぶよとそのわがままボディを押しつけてくる。これが太ももだったら歓迎するんだけどな。不定形のコイツに太ももの概念はない。そもそも足も尻もないし。ジェリコを押しのけて立ち上がるとあたりを見回した。ゴロゴロと魔物の残骸が転がっている。
「餌がたくさんあるからな。ジェリコ、レベルアップするか」
『わかった』
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