第11話 限定解除
『限定解除を実行しました。五分ごとに10000円が消費されます。また限定解除中は残高を消費することでダメージ値を上昇できます。上限は攻撃力の10倍です。命を賭して対象を殲滅してください』
「ダメージ値の上昇?」
いまの俺の素の攻撃力は相も変わらず200だけれど、スキルツリーで色々とったおかげで3000くらいにはなっている。まあそれもレベルが上がらないせいで頭打ちなんだが。木刀もいまや木っ端と化してしまったので、その攻撃力がいま出せる最大値。そこから10倍だから30000か。
レベル1にしては相当な攻撃力ではあるけれど当たらなきゃ意味ないんだよな。敏捷が十倍って訳じゃないし。
っとヤバい。
鎧熊は屈伸の姿勢からぐんっと突進を始めた。接近戦では避けられない攻撃も、これだけ距離があればそりゃ避けられる。トラックが遠くから来たって横断歩道くらい渡れるのと同じだ。
たたっと距離をとって止まり振り返る。鎧熊はブレーキというものを知らないらしく、そのまま突っ込んで行って壁にぶつかった。自損事故。積み上がっていた魔物の骨が散る。部屋全体が振動する。上階の罠が誤作動を起こしたのか、俺たちが落ちてきたのと同じように魔物が次々と振ってきた。
敵を増やしてんじゃねえよ。
哀れなゴブリン二体、スライム二体、コボルト三体、それから、そこそこ大きなオークが二体。鎧熊に比べれば小ぶりだが地下牢の近くじゃ見なかった魔物だ。落下時のダメージはないらしい。何かがクッションになったのかうまく着地したのかは知らない。
ともかく、鎧熊を避けるのに邪魔なので排除しとこう。
「ジェリコ。小さい奴ら頼む。俺はオークをやる」
『わかった』
言った瞬間、ジェリコはぴゅぴゅんと消化液を飛ばして、ゴブリン二体をあっという間に消化する。命中率はお察しなので、マシンガンみたいに乱射していたが。
俺はチラチラと鎧熊の方を見ながらオークと相対する。まずは一体目。身長は二メートルくらい。猪の頭で鋭い牙が口から生えている。落ちてきた瞬間から俺を睨みつけて突っ込んできた奴だ。
俺お前に何かしたか?
トラップにかかって落ちてきたのは俺のせいじゃねえぞ。
突っ込んできた勢いそのままにオークは拳を大きく振りかぶる。はっきり言えば鎧熊より随分遅い。さっと半身になって拳を避けると、そのまま軽く屈伸して跳び上がり、顔面に三万円分のパンチをお見舞いした。瞬間、オークの首がガクンと後ろにのけぞって明らかに骨が折れる、膝から崩れ落ちる、びくともしない。
おいおいまってくれよ。怖いよ三万円パンチ。
自分の拳を見下ろして、大切なものを壊してしまった力を制御できない怪物の気分でいると不意にピコンとステータスが表示されてぎょっとする。
==========
レベルが上がりました。
レベル :1→4
攻撃力 :200→400
防御力 :400→600
魔法攻撃力:100→300
魔法防御力:100→300
敏捷 :300→500
==========
「は?」
今まで病院に行くと言われた犬くらいびくともしなかった俺のレベルが急に三つも上がった。何でだ。散歩に行くとでも言われて騙されたのか。いや、まて、ふざけてる場合じゃない。
「俺、もしかして、魔物を倒さないとレベルアップしないの?」
『魔物を倒したときのみ、レベルアップが可能です。攻撃成功のみではレベルは上がりません。また戦闘スキルのレベルアップも魔物を倒した時のみ可能です。非戦闘スキルに関しては残高でレベルアップできます』
ジェリコも他の魔物も攻撃を受けるだけで経験値溜まってレベルアップするのに、なんで俺だけ倒さないといかんのじゃ。いや、それも結局は命を賭けるってことなんだろうな。
命を賭けなきゃ先に進めない。
ダメージ0で残高を稼ぎ、魔物を倒してレベルを稼ぐ。俺がただ生き延びるためなら、レベルを上げる必要なんてない。現に俺はいま一千万を超える残高を有している。十回死んでもおつりが来る。ただ、あのむかつく『
レベルアップの道を。
俺は振り返るともう一体のオークを指さした。
そいつの手にはどこから持ってきたのか金属の剣が握られている。
「それ、もらおうか」
三万円でな!
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