29 煙草の匂い

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「あれ、エディ? どうして泣いて……大丈夫?」

 (私なんか泣かせるような事したっけ?)


「この、馬鹿っ!」


「お、起き抜けに罵倒とかひどっ!?」


「もう、ほんと……無理」


 そう言ってエディは私の身体を抱きしめる、その手は微かに震えていて。


「え、エディ……?」

  

 いったいどうしたのかとエディの様子を窺うが、よくわからない。

 ただ言えるのは起きたらエディに抱きしめられていて、自分の心臓の音がやけにうるさい事だけ。


「カレン……」


「どうしたの、なんかエディ変……」


 エディは私の身体を抱き締めたまま名前を耳元で呼ぶから、耳に熱い息がかかって変な感じがする。


「どれだけ俺が心配したか、お前にわかる?」


「あ、それはごめん……だけどちょっと離して」


「……絶対に嫌だ」


「え、嫌だってなに!? この状態は流石に困るんだけど! ほんと離して」

(エディの手が直接肌に触れて、なんか身体が熱い)


「俺は全く困らない」


「わ、私が困るの! もう、離して! エディのえっち」

(しかもオネェ言葉じゃなくなってるし!)


「はぁ? なにが『えっち』だよ」


「だ、だって私! 服とか……着てないし? 下着姿だし……なのに抱き締められたら」


「……あ、ごめん」

 

「だーかーらー! いい加減もう離して、き・も・い! エディの馬鹿!」


「……はい」



 

 

◇◇◇




 

 部屋に連れ戻されて、ようやく一人になった私は一息つく。

 ……ドキドキし過ぎて心臓が壊れるかと思った。


「それにしても……治癒魔法はすごいな!? 肩こりとかも解消したような気が……」

(私にも魔力があるってことは、私も治癒魔法とか使えるのかな……?)


 攻撃魔法は怖い。

 けど治癒魔法くらいなら、使ってみたいような気もする。


(でも今回はかなり不味かった。ここまで血をもっていかれるなんて想定外)


「いやでもさすが、騎士というやつだな? 意識ないやつにポーションを飲ませるなんて、どーやってんだろ」

(……それになんで抱きしめられてたんだ?)

 

 だが私の思春期め。

 あんな顔がいいだけの、オネェにドキドキするなんて一生の不覚である。


 まぁ悪いやつではないと思うけど?

 心配してポーション飲ませてくれたっぽいし?


「あ、またポーション作ってエディに渡しとこ……」


 でも口に瓶突っ込むだけで、意識ない人間が嚥下できるもんかな?

 

(……いや、なーんか出来ない気がするぞ?)


  じゃあ、どうやって?

 私の口の中から煙草の匂いがするんだよね、あの五月蝿いやつの。


「えー……まっさかぁ?」

(いやいや、さすがにそれは……)


「……っエディー! この変態! 鬼畜! ロリコン! オネェ詐欺! 変態! ばかー! チェンジー!」

(私のファーストキス! あの野郎絶対殺す!)


 

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