27 お家探索

27



 エディがお隣の公爵家にお出掛けしたので、私は鬼の居ぬ間に屋敷の探検に出る。


 大人しくしてろって五月蝿かったけどここは私のマイホーム。

 家の中を見てまわるくらい好きにさせてくれてもいいじゃないか? ということで。


「さあいざゆかん! 未開の地へ!」

 

 部屋の扉を開け放ち探索開始である。


 一応口煩いお世話係に見つかっても大丈夫なように鏡の前で寝癖をチェックして、適当に髪を手櫛で整えた。

 (これなら文句あるまい)



 そして無駄に広い廊下を歩き、手当たり次第に扉を開ける。

 だが特に二階じゃなにもみつからなかったので、一階に降りれば。

 

 どこからともなく美味しそうないい匂いと、人の声。


 ちょうど小腹も空いたしなんか食べるもんないかなと、そちらに向かえば厨房らしく。


「ねえ、おじさん? 私お腹空いちゃった! なんかつまめるモノない?」


「お、お嬢様!? どうしてこちらに?」


「ん? お散歩してたら美味しそうないい匂いがしてね? お腹空いちゃったから来てみたの。迷惑だった?」


「そんな、迷惑だなんて! 直ぐに、直ぐに何かお作りさせて下さい!」


 っと言ってテキパキと軽食を作ってくれた。


 お部屋にお運びしますとか、言われたけど。

 一人で食べるよりみんないた方が、賑やかなほうが好きって言ったら。

 厨房に椅子とか用意してくれてお喋りしながら美味しく食べていたら。


 ご近所付き合いから帰ってきたエディに、ため息をつかれた!


 (ため息つくとね? 幸せ逃げちゃうんだよ?)


 それに私、ご主人様なのになぜコイツにそんな残念なものをみる目で見られているんだろう?


 「……解せぬ」

 

 ――その後。

 『お腹も満たされたし、研究室行きたいと』と、私の事を馬鹿だと思ってそうなヤツに言ったら。


「まだ搬入作業はまだ完全に終わっていませんが、よろしいですか?」


 そんな返事が返ってきたので。


「よろしいですよ? ほら行こう! 今すぐ行こう!」


 探索の再開である!


 探索パーティーメンバーにエディが加わった!


 そして辿り着いた先は。

 大広間を大改装した、タイル張りの床に白い壁紙の研究室。


 その研究室には錬金術の材料を収納する棚や、お洒落な机と椅子等が一応だけど一揃え搬入されていた。


 中身はまだ空っぽだけど、仕方ないね。


「大広間をこんな風にするなんて、異例過ぎて業者が本当にいいのか何度も何度も私に確認してたわよ? 夜会はこの屋敷じゃ開けないわね」


「夜会なんて絶対に開かないから大丈夫、大丈夫!」


「えー? もったいなーい。みんなここで夜会開いたら、競って招待状欲しがるだろうに」

 

「私は貴族じゃなくて、平民ってやつなので大丈夫!」


「なにいってるの、国賓でしょ貴女?」


「国賓に、してくれだなんて一度も頼んでないよ? 私は辺鄙な田舎でスローライフがしたかったな? どうせならば」


「貴女まだそんな事いって、ほんとにもう……」


 エディが色々と文句言ってくるけど、生まれは公爵令嬢だったかもしれないけれど。

 イクスで身分制度もなく育った私には貴族とか、厄介な人達とは仲良く出来る自信がない。


 絶対に不敬とか何とか言われる自信がある。


「さぁーて! やるか」


「え、なにすんの?」


「ここに錬成陣をまた書くだけ! 次は大きいのだから、前よりかなりヤバいけどね!」


「……え?」


「前の時って……ナイフで腕を切った事よりも?」


「前はさ、簡易的なやつ。そして今回は古代式でこの場所に定着させるやつだからね。大きいから血いっぱいいるし? 前回とは比べ物にならないかな?」


「それはかなり危険なの、よね?」


「そうだね、今回の錬成陣は危ないね? けど何事にも危険は付き物だよ? 錬金術は。なのでエディは退室してもらっていいかな? 気が散る」


「は? 前回よりも危険なのに退室出来るわけないでしょ!」


「えー? 見るつもりー? えっちー! もう仕方ないなぁ? 、この椅子に座って動かないで? 邪魔だから! よろしくね!」


「……わかった」


 まあ、古代式の危険な錬金術やるやつなんて、そうそういないけれど、エディには黙っておこう。


 古代式は危険だけどこっちの方が効率がいいんだよね? 

 ……色々と。

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