24 一度目の国外追放 ガルシアside
どれだけあの時の事を後悔しても後悔しきれない。
舞い上がっていた。
双子なんて身体の弱い私では無事に出産なんて出来ないって、言われていたのに。
二人が元気に産まれてきてくれて、母になれた喜びで私は天に舞い上がりそうだった。
それにとても愛らしい二人に出会えて、夫も私もすごくすごく嬉しくて。
何度神様に感謝したかわからない。
貴女達が産まれてからの日々は、まるで夢のような日々だった。
ずっとこの幸せが続いて。
二人の成長を見届けられるって思っていた、だから娘達への将来へのプレゼントのつもりだった。
大公爵家同士の婚姻で産まれた子達だから絶対大丈夫って、なんにも心配なんてしていなかった。
王宮で行われた大々的な魔力鑑定式。
大公爵家や王族ではよく行われていて、なにかあったことなんてなかったから。
リュスティーナと、クリスティーナ。
愛しい私の娘達。
長女のリュスティーナが王子に嫁ぐことは産まれる前から決まっていたから、魔力鑑定式は異例だったけれど王宮で執り行われた。
その日は冷たい雨が降りしきっていた。
魔力鑑定式といっても、とても簡単なことで。
魔力鑑定の水晶に手を触れるだけ。
最初はリュスティーナの予定だったけれど愚図っていて、先にクリスティーナが触れた。
流石大公爵家という魔力値だった。
そして愚図っていたけど少し落ち着いたリュスティーナの番がきて。
リュスティーナの手が水晶に触れた途端、水晶が先程とは違う見たことのない赤い光を放った。
「どうしたの?」
……と夫を見れば、夫はなぜか青ざめた顔で
「あぁなんということだ……!」
と、苦しそうな顔で私を抱きしめた。
周囲の貴族達も王族達も、その赤い光をみて動揺しだして。
私にはいったい何が起きてるのかわからなくって、夫に聞けば。
「……リュスティーナには、魔力がない」
そう、夫は言うけれど。
なにを言われたのか理解ができなかった。
そして鑑定式からたったの二日で、リュスティーナのアルスからの国外追放が決まった。
それはアルスの法律で、その決定はどうしようもできず国外追放は明日になるって。
私は泣き崩れ夫を責めるしかできなかった。
「どうして! どうして! 魔力鑑定式などしなければ! せめて10歳までは公式的に鑑定なんて。ないのに! 一緒にリュスティーナと暮らせていたのに! まだこの子は赤ちゃんで! お乳をまだ、のんでて……なんでぇ……っ!?」
まさかこんなことになるなんて。
魔法が全てのこの国で。
魔法が使えないものに価値はなくて。
だからいっそ物心も貴族としての自覚もつく前に魔法のない国で新しい家族と過ごすのがこの子の為って、言うけれど……!
ずっとそばにいてあげられるって、おもっていたのに。
後悔して後悔して、泣いて叫んで。
リュスティーナを抱きしめて。
お乳をあげる事しか私にはもう彼女にしてあげられることなんて無くて。
いっそ私も魔力封印具を付けて隣国へ一緒にいこうとしたけれど、病弱な私が魔力の高い大公爵家出身の私が封印具をつければ。
私の身体はすぐに魔力暴走を引き起こしそばに居るだろうリュスティーナを巻き添えにして死ぬ未来しかなかった。
そんなのは私のエゴでしかない。
そして隣国で新しい生活をするリュスティーナに手紙を送ること、連絡を取ること、全てを禁止された。
新しい家族との関係に私達の存在は邪魔になり、もし私達に会いたいとリュスティーナが願っても魔力のないこの子ではアルスに入国することすらできず辛い思いをさせるだけだと。
そして。
私達が名付けたリュスティーナという名前も隣国にいけば、改名される。
国境門が開き、警告の鐘が鳴り響く
この日私は、愛する娘リュスティーナを
隣国の使者に奪われた。
リュスティーナの重みが、温もりが。
「リュスティーナっ! 愛しているわ、ずっと!」
冷たい雨が僅かに残ったリュスティーナの温もりを私の腕から消し去った。
それからの日々はただ息をしているだけだった。
毎日毎日リュスティーナの使っていた部屋でリュスティーナの事を思い祈る。
リュスティーナの誕生日にはプレゼントとケーキを用意してお祝いして、周りは私が壊れてしまったというけれど、どうしてリュスティーナの事を忘れられるというの?
どうして、どうして、どうして……?
そしてリュスティーナが国外追放されてから10年ほどが経ち、私はもう二度とあの子に会えないと思っていた。
だけど……!
あの子が世界を震撼させていた死病の特効薬を開発したと、そしてあの子は史上最年少で錬金術師になった天才錬金術師だと、遠隔映像装置水晶が10年振りにあの子の愛らしく成長した姿を、声を私達に届けてくれた。
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