22 屋敷

22



 ここ数日。

 エディが過労死しそうなくらいに慌ただしい。


 どうしてエディがそんなに忙しいのかと、理由をいくつかあげれば。

 

 私が選んだ屋敷はとても広く。

 エディ一人では維持管理ができないので、使用人が必要になったらしくその選定作業だったり。

 その屋敷の改装工事依頼だったりと、なにかとやる事が山積みで忙しいらしい。


「……ほんと、ご苦労なことで」


 私なんて王都に来てから宿でずっとゴロゴロ、自堕落で幸せな生活を送っているというのに。 

 ああゆう真面目で責任感があるやつはなにが幸せで生きているんだろうね?

 


 そして。

 慌ただしくしていたエディが五日目にして。


「屋敷の改装がやっと終わったわ」


「え……早すぎね? 欠陥工事じゃ……」

 

 私の想像では、最低でも一ヶ月以上はかかるだろうと思っていた。

 なのにたった一週間で終わったとか、それ絶対欠陥工事だと私は思う。


「なにを言ってるの、貴女は国賓なのよ? そんな長期間、宿なんかに住ませられる訳がないでしょう? そんなものお金の力でどうにでもなるのよ」


(なにこいつお金持ちのボンボンか? 私、成金だけどお金を使うの嫌いなのに)

 

「いやいや、ならんでしょ?」


「なるわよ? 朝も昼も夜も休みなく改装すれば。まぁ普通の六倍ほどお金かかるけど仕方がないわ」


 なんというブラック労働……!

 大工さん達過労死してない!?


「えー……馬鹿なの?」


「とりあえず、すぐにでも行けるから準備なさいな。頭ボサボサじゃない、女の子なんだから髪の毛くらい……とかしなさいな?」


「うわ、めんど……」


「それと、今日の服はこれ」


 エディが取り出したドレスは本日もフリフリで、淡いピンクの総レースで。 

 デコルテが大胆に開いていて恥ずかしいし、靴はヒールが高くて歩きにくくて。


「これむちゃくそ歩きにくい! しかもなんかエロい……」


「……とりあえず貴女は、ハイ、イイエ以外は喋るの禁止ね?」


「は? なんで? 嫌なんだけど?」


「……イメージがね? 皆、貴女は賢く聡明で気品高く、慈愛に満ちた英雄っていうイメージあるの!」


「だから?」

 

「それなのに貴女、打ち砕く気?」


「そんなもん知らん。勝手に人で妄想して期待してんじゃねーぞ? ま、私は賢いし聡明だし? あながち間違ってはないけど」


「ああ……絶望する人々の顔が、目に浮かぶわ」


「アルス国民に絶望をお届けしてやんよ?」

 

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