第6話 元貴族の冒険者、ウマの合った女商人と初依頼をこなす

 【前回までのあらすじ】


 貴族の家族から追放され、ひとり街へと向かうクリス。


 道中出会った女商人フィラと意気投合し、


 街まで一緒に行くことに・・・。


 生活のために、冒険者ギルドに登録をした彼に、

 ギルド受付が勧めてきた初依頼の内容は・・・。



 ――頂いたアイデアを使わせていただいての更新です。


 ありがとうございました!




 ――――――――――――



「それで、明日は薬草採取っスか?」


「うん、採取場所は草原や森になるから、

 今夜はもうまずいかなって」


 同じ席で夕食を食べながら話すクリスとフィラ。


 ちなみにここは、冒険者ギルド提携の食堂だ。


「冒険者カードがあれば、大盛りサービスなんですよ」

 と、ギルド受付の女性レナに勧められて、クリスは食事に来たのだが。


「あ、早くも再会っスね」

 と、さっき別れたばかりの女商人フィラとばったり。


 せっかくなので一緒に食事を、というわけである。



 会話の内容は、クリスが先ほど受けた依頼についてだった。


『薬草採取』、

 新人の冒険者にはおすすめの依頼らしい。


「ま、定番っスね。

 薬草を見分ける鑑定能力。

 周りの魔物を察知できる索敵能力。

 何より地味な作業を延々とこなす根気と、冒険者としての素質を見る試金石みたいなものっスから」


「はぁ・・・、そうだったんだ」


「ま、あくまでウチの想像っスけど」


「さいですか・・・」


 冗談まじりの何気ない会話。


 クリスにはそれがやけに楽しい。


 果実水をちびちびやっていたフィラが、ふと思いついたように言う。


「あ、ならウチもついて行っていいっスか?」


「・・・はい?」


 ちなみに、この後クリスが泊まる先は、

 フィラの紹介で同じ宿となった。



 ~~~~~~~~~~~~


 ――で、翌日。


 穏やかに晴れた空。


『平和』な『原っぱ』と書くにふさわしい、緑あふれる平原。


 クリスはフィラと共に薬草の採取にいそしんでいた。


 本で得たつたない知識を頼りに、

 クリスは眼と鼻、さらには舌を使って薬草を判別していく。


「いいの?商人の仕事は」


「店を持っているわけじゃなし、

 一日くらいどうってことないっスよ」

 フード越しにケラケラと笑うフィラ。


「それに、クリス君と一緒にいれば、魔物の素材とか沢山そうっスから」


「さいですか・・・」


「あ、クリス君。

 その薬草は育ちすぎっス。

 葉の緑色が濃いっスから」


「あ、ありがと」


 ひょっとして、フィラは自分の事を心配して一緒に来てくれたのだろうか。


 うぬぼれと思いつつも、クリスはそんな気がしてしまう。



 ――ちなみに、昼休憩までにクリスは、六匹のホーンラビット、

 十匹のビッグビーに襲われた・・・。


『平和』な『原っぱ』のはずだったのだが・・・。


 短剣と木剣を駆使して、何とか倒したクリスに向かってフィラは言った。


「ポーションと毒消し要るっスか?

 倒した魔物半分と交換でいいっスよ」


「ありがと・・・」


 いやフィラさん・・・、

 あなた自分だけ何か魔物よけの道具を使っていますよね、絶対・・・。



 ~~~~~~~~~~~~~~~


 昼になり、宿で作ってもらった弁当を食べる二人。


 食べながらフィラは、質の良い薬草の基本的な見分け方や効果について説明してくれた。


「日当たりの良いところで育った薬草は、茎も日陰の薬草より太くて、葉っぱも分厚く育つんスよ。

 出来たポーションも、日陰より日向のもののほうが効果が上になるっス」


「じゃあ、日陰の薬草は使えないってこと?」


「いいえ、日陰の薬草で作ったポーションは若干効果が弱い反面、日向のものより刺激が弱いんスよ。

 血を流しすぎた場合やヨボヨボのお爺さんの怪我に使うなら、身体への負担が少ない日陰ポーションがおすすめっスね」


「そうなんだ・・・!」


「ま、普通はそんな風に分けてポーションを作ったりしていないんスけどね。

 取った薬草は全部まとめて、ごった煮って感じだそうっスよ、あはは」


「そうなんだ・・・」


 ――などという、『薬』にならなくもない会話をしながら、二人は昼食を終えた。


「ところで、クリス君いいっスか?」

 口元をふいたフィラが言う。


「さっき倒したビッグビーなんスけどね、

 あれって一つの巣にいるのはせいぜい十数匹程度らしいっスよ」


「そうなんだ。

 まあ、普通の蜂と違って、一匹一匹がネズミ並みの大きさだからね」

 と、クリスも話題に乗る。


「さっき十匹の群れを倒したっスよね。

 つまりあの群れの巣には、もうほとんど蜂がいないって事っスよ」


「・・・そうだね」


「ちなみに、ビッグビーのハチミツってすごく美味しくて貴重なんスよ。

 商人ギルドか薬師ギルドに持っていけば、高額買い取り間違いなしっス」


「へ~・・・」


「・・・」


「・・・」


「巣、獲っちゃいましょうよ」


「やだよ!」

 即座に拒否するクリス。


 先ほどの戦闘で死ぬ思いをしたからだ。


 それに対してフィラは、

「まあまあ、サービスで『毒よけ』をあげるっスから」

 と、収納ボックスから薬瓶を取り出した。


「これを飲んでおくと、しばらく毒が効かなくなるんスよ。

 これでいくら刺されても大丈夫!」


「でも痛いじゃないか!」


「『痛みよけ』もあるっスよ。

 飲んでおくと、しばらく痛みが感じなくなるんス。

 これで死ぬまで戦えるっスよ!」


「・・・」


 結局、毒よけに痛みよけ、さらに戦闘後にポーション提供を条件に、

 クリスはフィラと一緒に巣を探すことになった。


「大丈夫。

 戦闘になったらウチも援護するっス」


「本当に~・・・?」


 平原を抜け、一番近い大木の群生地へ入る二人。


 ビッグビーの巣は、特定の大木に造られるからだ。


「でも、ここから巣を見つけるのは大変だね・・・。

 どうするの?」


「まずクリス君。

 この『魔物よけ』を身体にふりかけてください」

 と、粉袋を取り出すフィラ。


「やっぱり使っていたのね、魔物よけ・・・」

 と、ぼやきながら、服にその粉を付けていくクリス。


 フィラはさらに、

 先ほど仕留めたホーンラビットとビッグビーを一匹ずつ取り出す。


「ビッグビーは肉食で、仕留めた獲物の肉片を巣に運ぶんス」


「うん」


「そして、仲間の『匂い』に敏感なんスよ。

 ビッグビーをつぶすと、その『匂い』は強く周りに広がるっス」


「分かった!

 その『匂い』で仲間のビッグビーをおびき寄せて、

 ホーンラビットの肉片を巣まで運ばせようっていうんだね?」


 そして、巣まで道案内してもらおう、という作戦である。


 という事で、木剣でビッグビーの死骸をつぶすクリス。


 そして、その横にホーンラビットを並べて、

 二人は『道案内』が訪れるのを待った・・・。



 ~~~~~~~~~~~


「まさか、こんなスムーズにいくとは思わなかったっス」

 たった今、数匹のビッグビーを倒したクリスに向かって、フィラは言った。


 そして、二人は目の前の大木を見上げる。


 かなり高い位置にある幹と枝の付け根には、牛一頭に相当するサイズの蜂の巣が出来ていた。


「あれが、ビッグビーの巣・・・」


「いや~、初めてみたけど・・・でかいっスね」


「中にまだ蜂が残っているかな?」


「どうっスかね・・・よっと!」

 と、いきなり巣に向かって石を投げつけるフィラ。


 カツン、と音がして巣に当たったが、中からビッグビーが出てくる気配はない。


「大丈夫みたいっスね。

 じゃ、クリス君、お願いするっス」


「よし!」

 と、クリスは『走行』のスキルを発動した。


 大木の幹を垂直に走って登り、巣のある枝へ。


「じゃ、落とすよ~」

 と、枝にまたがった状態で、クリスは巣の先端部、すなわち大木に張り付いている部分を短剣で斬り始めた。


 ゴリゴリ・・・、

 硬い・・・。


 これは、下から石をぶつけるくらいでは、到底落とせなかったろう。


 ボウガンの矢でも果たしてどうか・・・。


 しばらくして、


「フィラ!」

 と、クリスの合図と同時に、先端が斬り終えられ、巣は真下へと落下した。


「はいっス!」

 と、そのまま巣は、待機していたフィラの『収納ボックス』にすっぽりと入り込む。


「やったっス!

 こんな完璧な状態でビッグビーの巣が手に入るなんて・・・!」

 と、興奮気味のフィラ。


 それを見て、クリスも嬉しくなる。


 静かな大木の群生地の中、二人のハイタッチの音が響いた・・・。


【つづく】





 ――――――――――――――



 ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!


 そして・・・、


『思わぬ臨時収入を得たクリス。

 その使い道は?』



 あなたの想像・・・いえ、創造されたアイデアをコメント欄にてお贈りください!


 簡単な一言だけで結構ですので・・・!


『装備品購入』とか、『教会へ寄付』とか、『個室付き浴場へ』とか・・・。




 物語の続きを紡ぐためにも、


 どうぞよろしくお願いします・・・!


 ――というお願いをお聞きくださり、

 本当にありがとうございました!


 最新話では新たなお題を募集中ですので、

 どうぞよろしくお願いします・・・!

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