第5話 元貴族の少年、冒険者登録をする(冒険者ボック、受付レナ初登場)

 貴族の家族から追放され、ひとり街へと向かうクリス。

 道中、魔物の群れと遭遇したが、何とか勝利。


 その後、出会った女商人フィラと意気投合し、

 街まで彼女の馬で一緒に行くことに・・・。


 ――頂いたアイデアを使わせていただいての更新です。


 ありがとうございました!



 ――――――――――――



「や~、無事到着っスね」

 女商人フィラは、馬上で緊張が解けたように言った。


 彼女とその馬のおかげで、日暮れ前に街へと着いた、クリス。


「うん、助かったよフィラ」


「いや~、お互い様っスよ。

 護衛お疲れ様でした、クリス君」


 そのまま問題なく検問も通過。


 通関料は少々高かったが・・・。


 約ひと月ぶりの街。


 地面がしっかりと整備され、

 建物も全体的に清潔感がある。


 街ゆく人たちの顔も明るく見えるし、

 日暮れ近くにもかかわらず、大通りには活気ある店が切磋琢磨せっさたくまするように並んでいる。


 街全体が明るい雰囲気に包まれているようで、

 そこにいるだけで気持ちが前向きになれる・・・。

 そんな感覚をクリスは味わった。


「さて、ウチはこれから商人ギルドに向かうつもりっスけど、

 クリス君はどうするっスか?」


「冒険者ギルドに行こうと思う。

 無事に登録できるといいけど・・・」


「あはは、大丈夫っすよ、クリス君なら多分」


「多分・・・ね」


「だってウチ、商人っスから。

 冒険者ギルドは専門外っスよ」

 そう言って、首から紐でぶら下げたプレートを見せるフィラ。


 全国に支部を持つ、商人ギルドに登録している商人という証である。


「ま、家なしのクリス君が生活するには、冒険者ギルドに登録するのが一番っスね。

 登録証があれば、身分証明にもなるっスから」

 そんな歯に衣着せぬフィラの物言いに、クリスは苦笑した。


 だが、気持ちは軽くなった。


「ありがとう、フィラ。

 ・・・また会えるよね?」


「ええ、しばらくはこの街で露店でも開くつもりっス。

 きっとすぐに有名になるから、探しやすいっスよ」

 どこまでも前向きなフィラ。


 たった半日の関係だが、

 クリスはこの二つ上の女商人に友情を覚えていた。


 そのまま二人は笑顔で別れた。




 ~~~~~~~~~~~~~


 冒険者ギルドは大通りの先、

 噴水のある広場に面して存在していた。


 見た目は三階建ての、木製建築だ。


 入り口の自由扉スイングドアを開いて、クリスはギルドの中に入った。


 日暮れという時間帯のせいか、中にいる冒険者は少ない。


 鎧のヒゲ、ローブの厚化粧、長い槍を持ったモヒカン頭等々・・・と、

 目視で数えられる程度だ。


 皆、クリスより一回りは年上だ。


 とりあえず、受付の女性に声をかける。


「すみません、冒険者登録はこちらでお願いできますか?」


「はい、承っております。

 まずは、こちらの書類に必要事項を・・・」

 そう言って、カウンターに記入用紙とペンが置かれる。


 名前、年齢、出身、職歴、スキル等々・・・、

 書ける所は全て正直に書いて、クリスは用紙を提出した。


「はい、確認します。

 クリスさん、13歳。

 出身は・・・、割と近いのですね。

 職歴は特になし・・・と」

 一つ一つ内容を確認していく受付嬢。


 その時、それまで見ていた一人の冒険者が、

 二人に近づいてきた。


「おいおい、13にもなって職歴なしかよ?

 どこの貴族の坊ちゃんだよ」

 革鎧に身を包んだ、ごつい男だ。


「冒険者ってのはな、魔物退治が基本だぜ?

 これまでロクに鍛えてもこなかったガキが通用するほど、

 甘い世界じゃないんだよ」


「・・・」

 どう答えたら良いものか、クリスは迷った。


 ガラの悪い男だが、言っている事はもっともだと思ったからだ。


 受付も、

「ボックさん、人にはそれぞれ事情があるのですから」

 と、軽くいさめる程度にしている。


 だが、ボックと呼ばれた冒険者は止まらなかった。


「はん!だったら、もっと楽に稼げる店に行けよ。

 顔だけは需要がありそうだし、貴族の変態共をたらしこめばいい思いが出来るかもしれないぜ、ひっひっひ・・・」

 そう言って、下卑た眼でクリスを笑ってきた。


「ボックさん!」

 さすがに言葉が過ぎると感じたか、

 受付が強い口調で注意する。


「・・・」

 クリスは、運がいいと思った。


 ここに来るより前に、あのフィラと出会えていて。


 彼女と過ごして、すさんだ心が洗われていなければ・・・、

 間違いなく、このボックという男に挑みかかっていただろう・・・。


「参考にしておくよ」

 とだけ言って、もう相手にしない事に決めた。


 受付もそれに合わせて、二人で登録の手続きを進める。


 それでもしつこく突っかかってくるボックだったが、

 クリス達が暖簾に腕押しのような態度を崩さないので、

 やがて、


「チッ!態度の悪い新人だぜ。

 こりゃ絶対早死にするな~」

 と、捨て台詞を残して離れていった。


 それを確認すると受付は、

 クリスにだけ聴こえるように言った。


「立派でしたよ」と・・・。



 ――全ての手続きと説明が終わり、

 クリスは新人のE級冒険者となった。


 証明となるプレートを、

 紐を通して首からかける。


(フィラとおそろいだな・・・)

 と、そんな些細な共通点が嬉しくなる。


 E級冒険者・・・、

 これが自分に与えられた新しい肩書。


(ここからだ・・・)

 ここから頑張ろう。


 クリスは改めて強く思った。


(頑張って働いて、強くなって、何かになって・・・)

 そして本当の自分の居場所を・・・!


(そのためにもまず・・・)

 働かないと。


 クリスはそのまま、

 受付に仕事がないか聞いてみた。


「ありますよ~、おすすめの依頼が」

 待ってましたとばかり、受付は一枚の依頼書を取り出した。


【つづく】





 ――――――――――――



 ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!


 そして・・・、



『冒険者となったクリス。

 受付の提案する依頼内容とは?』


 あなたの想像・・・いえ、創造されたアイデアをコメント欄にてお贈りください!


 簡単な一言だけで結構ですので・・・!


『薬草採取』とか、『ゴブリン退治』とか、『老人ホームの介護』とか・・・。


 物語の続きを紡ぐためにも、

 どうぞよろしくお願いします・・・!



 ――というお願いをお聞きくださり、


 本当にありがとうございました!



 最新話では新たなお題を募集中ですので、


 どうぞよろしくお願いします・・・!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る