第2話 元貴族の少年、平原の街道を自力で走る

 無能スキルを理由に、貴族である家族から追放を言い渡されたクリス。

 そして、家を出る朝が来た。


 頂いたアイデアを使わせていただいての更新です。

 ありがとうございました!



 ――――――――――――――



 翌朝、まだ陽も出ないうちに、

 クリスは屋敷を出た。


 首から垂らした母マリアのペンダント。


 布地の厚い旅用の服に外套をはおり、リュックを背負う。


 腰のベルトにはショートソードを帯剣し、

 リュックからは使い慣れた木剣の先が、いつでも出せるようにはみ出ている。



 正門を出ると並木道が伸びている。


 父ゴネルの治める領都は真っすぐこの先だ。


 だが、クリスはそこへ立ち寄る気はなかった。


 家を追い出されたことにより、

 クリスの中にあった家族を盲目的に信じる気持ちは消えていた。


 そして冷静に、

(もしかしたら、父が刺客を差し向けてくるかも・・・)

 くらいの想像ができるようになっていた。


 だから、一刻も早く父の領内から離れるべきだと判断したのだ。


 真っすぐの道を選ばず、

 分かれ道を選び平原の街道を進めば、

 その先は別の領。


 先月、クリスが『洗礼』を受けた街がある。


 外套の上からリュックを背負ったクリスは、

 ただひたすらその街を目指す。


 あの時のような馬車ではない、

 自力で走ってだ。


 生活の必需品を押し込んだリュックが軽いはずがない。


 だがクリスは、

 ほぼ全力疾走に近い速度を維持したまま、

 陽が昇る時刻になっても走り続けていた。


 これが先の『洗礼』により、

 クリスが自覚したスキル、

『走行』である。


『走行』・・・、ペースとフォームを崩さず維持する事により、

 走る際の体力消耗を最小限まで抑え、長時間の疾走を可能とするスキル。


 だが、劇的に速度が増すわけでも、どんな重い荷も抱えて走れるわけでもない。


(無能スキル・・・か)


 異母弟アーモンは言った。

「ただ走るだけのスキル~?はっ!

 外ではしゃぎ回るガキじゃあるまいし。

 ま、平民のお前にはピッタリなスキルかもな」

 と・・・。


 継母ビデルは言った。

「家畜の馬ですら、馬車を使ってもっと早く、

 人や荷を運んで走るというのに・・・。

 嫡男のくせに、家畜以下の価値もないのね」

 と・・・。


 父ゴネルは言った。

「同じ走るスキルでも、

 世界には『神速』や『縮地』といった、英雄となりうる能力も存在するというのに・・・。

 貴族としての自覚が全くないお前の性根が、スキルにも反映したのだ」

 と・・・。


 スキルには、本人の人間性、生き様、環境、血統など様々な要素が関係するらしい。


(僕は今まで・・・)

 走りながらクリスは思った。


 ――ただだけの毎日だった。


 父の言葉を、家族の絆を信じて、

 考える事を放棄するように・・・。


(ちゃんと考えよう・・・、これからは)

 分かれ道、領都への並木道を横目に、

 クリスは平原の街道に脚を踏み入れた。


 そうだ・・・、考えて走ろう。


 スキルの事を考えて走ろう。


 街までの道を考えて走ろう。


 街でどうするかを考えて走ろう。


 どうやって食べていくかを考えて走ろう。


 不測の事態を考えて走ろう。


 強くなるために考えて走ろう。


 居場所を手に入れるために考えて走ろう。


 生きるために・・・、

 一人でも生きていくために考えて走ろう・・・。


 汗か、涙か・・・、

 母の形見のペンダントに零れ落ちたそれは、

 陽の光の反射でゆらゆらといびつなきらめきを描いていた・・・。


【つづく】



 ___________________


 ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

 そして・・・、


『果たして、これからクリスが道中で出会うものは!?』


 あなたの連想されたアイデアをコメント機能でお贈りください。


 簡単なもので全然結構です。

『盗賊』とか、『商人』とか、『裸の美女』とか・・・。


 どうぞ物語の続きを紡ぐためにも・・・、


 神々よ、その声をおきかせください・・・!


 ――というお願いをお聞き届けくださり、

 本当にありがとうございました!!


 最新話では常にアイデア募集中です。


 よろしくお願いします!!








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