第29話
「……本当に裏路地って感じだわ……」
「だからそう言ったじゃないですか。裏路地に清潔感を求めるなど、カエルに翼が生え、自由に空を飛べるぐらいありえない事ですよ」
「そうなのか。所で、あの倒れている人は一体なんなんだ?」
「あー……おそらく酔い潰れて寝込んでしまっている方ですね。まぁあの人も不老不死でしょうし放っておいてと解決すると思……
……ちょっと、ジコウ様?」
アストが気づいた時点でもう遅かった。ジコウは酔い潰れた人の前にかけより、背中を軽く叩く。
「なぁ、大丈夫か?お前随分と酒臭いけど……こんなところで寝たら風邪を引くぞ」
声を掛けながらポスポスと背中を叩いていると、五分くらい経ったあたりか、男が目を覚ました。
「ううーん……なんだぁ?お前は。ここはどこだ?」
「オグリシアタウンの路地裏だ。ここで一体何をしていたんだ?」
「そりゃあおめぇさん、大きな仕事があったから仕事終わりに酒を飲んでいた所さ。そしたらいつのまにか酔っ払ってて寝ちまって……」
「……酒の飲み過ぎには気をつけた方がいいぞ。
それに倒れるほど飲んでいるなら自室で休んだ方がいいんじゃないか」
「そうだなぁ、そうするよ。さっきから頭痛と吐き気が止まらなくてなぁ、部屋のベッドて寝たら治るだろ」
そう言っておぼつかない足取りで大通りに向かう男。肩を貸してやった方がいいのではないかと思ったが、今はそれどころじゃないと思い直し、アスト達の元へ戻っていた。
「あんたってほんっとーーーに根っからの善人なのね。どうせ死なないんだからほっといていいでしょうに」
「まぁまぁ。私はそこを見極めて管理者になってもらった訳ですから。優しさは美徳ですよ」
「ああ、うん、まぁな……」
突然褒められ、目を逸らす。勇者として喝采を浴びた事は何度もあるが、個人として褒められるのは慣れていないのだ。
「しかし……」
目をアストの方に向けると、鋭い目つきで此方を見ていた。
「あんなふうに道ゆく人全てを助けようとしたら手が回らなくなりますよ?
我々は生き物を守るのではなく、「世界」を守る為に戦っているのです。場合によっては幼児を手にかけるとあるでしょう。
そのあたり、覚悟は出来ていますか?」
「う……」
覚悟が出来ているかどうかは、今は分からない。助けを求める人には無条件で手を貸す。それがジコウだった。大をとり小を捨てるやり方は効率的だと思ってはいるが、それでも誰かの助けになりたい。それがジコウの持論だった。
「はぁ……まあ授業でおいおい習って行くでしょうが、その考えは忘れずに。さて、では行きますよ」
さっさと歩き出す(というより早歩きに近い)アストに、慌ててジコウとネールは後を追った。
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