第28話
「ふむ」
顎に手を当て考え込む素振りをさるアスト。やはり無理か、と思った瞬間に笑顔で返された。
「勿論大丈夫ですよ。丁度私も施設へ備品を届けようと思っていたところなので。是非ご同行をお願います」
「そうなのか!?本当にいいんだな!」
……しかし魔族を殺してまわっていたから、歓迎を受けるかどうかで悩むんだ」
「それについては仕方がありませんよ。丸いのは見境なく魔族を殺していたジコウ様、人間を襲い、奪っていた魔族。
どちらが悪いかと言われると‥……まぁどちらも悪いでしょうね
それを聞いて喉につっかえる感覚を覚えた。
確かに自分はさんざん魔族を殺害していきた。その後悔の年が今までずっと心の奥底に残っていた。
しかしこの前顔を合わせないとなればギスギスした関係やってしまう。覚悟を覚悟をきめ、アストの真っ赤な目を見据えた。
「そうだな、どっちが悪いとかそう言う問題ではない、
……ただ俺は。謝りたいだけなんだ。今まで成してきた悪行、それを伝えて。なんの解決にもなりはしないが、ただ……謝りたい」
「そうですか。心意気だけは見事です。今私は貴方をスカウトして良かった、と思っていますよ。
では二人で出発で宜しいで……
「ちょっとちょっと!なに二人で話し込んでるのよ!」
待ちきれなくなったのか。ネールが飛び出してきた。テーブルに飲食物が無いあたり、既に会計は済ませてしまったようだ。」
「これはネール様、お久しぶりでごさいます?
今がした、自身の救いたかった魔族を、訪問しようと話していた所なのですよ」
「なによそれ?アスト戦績はともかくとして、ジコウが行っても白い目で見られるだけだと思うけど」
全くの正論。だがそれでも、ジコウは拳を握りしめて言う。
「……それでも保護施設に行って謝りたいんだ。魔族達に、謝罪と、自分のケジメの為に」
「ふうん」
一瞬呆れたような顔をしつつも、切り替えは早かった。
「じゃあ私もいくわ」
「ネール様も?ネール様は特になにもないとお思いますが」
「行くったら行くのよ。それに女の子を放りだしてさっさと別の場所に行くわけ?そんなのマナー違反よ。それに保護施設にも興味があるし……私が一緒に行くのは問題ないわよね?」
「ええ。勿論。しかし保護施設に行くのはあくまで備品を届けるため。お二人には作業を手伝っていただきたいのですが……よろしいでしょうか?、
「ああ」
「力仕事は、私の分野じゃないんだけど……まぁいいわ、手伝って上げる」
「ご厚意感謝致します」
また深々と頭を下げる。顔を上げた頃、難しげな顔は少しだけ和らいでいた。
「では私の後についてきてください。結構入り組んだ場所にあるため、迷いやすいかと」
そう言い残して歩き出すアスト。早速大通りの裏道の様な所にはいっていくのをみて、ジコウとネールも後を追った。
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