第27話
「……ラメペン、使うのか……?」
「使わないなら使わないでインテリアになるからいいじゃない。使い道は……そうね、明日から始まる座学で大事なところに線を引くとか?」
「座学?実戦だけじゃないのか?」
「……あんた本当に何も知らないのね。無言詠唱とか、魔力のより効率的な運用法を知るため、あるいは頭しい魔法の構築を覚えるためにやるのよ」
「聞いてるだけで頭が痛くなってくるな……」
「大丈夫よ。ちょっとした数学とか理科みたいな物だし。慣れればわかるわ」
買い物も終わって近くのカフェで休憩中。時間がゆっくりと過ぎていく。大通りの賑やかさをみるだけで、ジコウは心が折れ温かくなるのを感じた。
コーヒーを飲み、ほっと一息つく。
「確かにこんな時間も重要かも知れないな。安らいでいくのを感じるよ」
「それは良かった。ここのカフェ、わたしのイチオシでね。コーヒーはもちろんケーキも美味しいのよ。」
確かにネールの前にはコーヒーの他にビスケットとラズベリーケーキが置いてある。昼はあんな事言ってたくせにまだ食べるのか、と思ったが口には出さないでおいた。女性に体重を聞くのはNGだと何処かで聞いたからだ。
「それにしても……まさか俺がこんなゆったりと過ごせるとは思わなかったよ」
「あんたの人生、そんなに波乱万丈なの?こんなことを管理者候補に聞くのもアレだけど」
「そうだな……最初は魔王退治の旅でそれどころじゃなかったし、その後も領地経営に忙しくなり、そしてその後の逃亡劇ではそもそも町にいることさえ難しかった。だからこういう所でのんびりと過ごせるのは小さい時ぐらいだったかな」
小さい時は小さい時で棒でチャンバラごっこを始めたり他人の靴にカエルを入れたりとかなりのやんちゃ坊主だったのでのんびりしていたか、というと怪しい部分もある。まぁそれは言わなくてもいいだろう、とジコウは思い、コーヒーを一口飲んだ。芳醇な香りと独特の苦味を感じる。
「あらそうなの、見てみたいわねその幼少期……あら?」
「どうかしたのか?」
「いいえ、さっきの小物店から教師が出てきたのを見ただけよ」
その言葉に思わず後ろを振り返るジコウ。
そして────電撃が走った。
「アスト!?」
「え、何?知り合い?」
その言葉も聞流し、慌ててアストの所へ向かう。アストもこちらに気づいたようで、足を止めて此方を見る。
「おやジコウ様。こんなところで奇遇ですね」
「ああ。まず最初になんだが……ここに連れてきてくれてありがとう。おかげで充実した生活を送れそうだ」
それは何よりでございます」
深々と礼をするアスト。そして立ち去ろうとしたのを呼び止めて、本題にはいった。
「ちょっと待ってくれ。俺の世界の魔族達は……どうなったんだ」
「おやその事ですか。大丈夫です、一日残らずオグリシアタウンの保護施設に転移させましたよ」
「そうか……それは……良かった……」
ホッと胸を撫で下ろす。この世界に来てからずっと魔族の事が気がかりだったのだ。
そして聞きたかったが勇気が無くて言えなかったことを、絞り出す様に言った。
「……その施設に、行ってもいいか?」
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