第22話

「よーっす!何だ、俺が二番目か」


 聞こえてきた元気な声に意識を浮上させる。目をやるとそこには黒髪の少年とついていった新入り達が居た。


「遅かったな。何かあったのか?」

「なんにもねーよ!お前達が早すぎただけだろ!まーたお前面倒な事になったからって空間ごとぶった斬ったりしたんだろ?」

「ぐ‥…悪かったな、面倒事が嫌いで」


 一見言い合いしながらも仲良く喋る二人を見て、ジコウはグディに聞いた。


「先生、あの二人は?随分と仲良さそうにしていますが、友達か何かでしょうか?」

「あー、あの二人‥…というより最初の四人だな、あいつらはパーティを組んでいてな。普段は個人個人で動いてもらっているんだが人数が必要となると、あの四人で行動してもらうようにしてるんだ」


 成程そういうやり方もあるのか、と納得するジコウ。てっきり一人で仕事に当たる物だと思っていたから、その方法は意外だった。


「では数人で当たらなければならない仕事もある、と?」

「あぁ。今戦った『敵』より数段強いものもいる。その場合は人数を組んで対処する事になるな。勿論お前達がそんな大掛かりな仕事に対応する事になるのは当分先の話だが。

あとは、そうだな……あまり大っぴらに言える事ではないんだな……」


 グディがそこまで言うと、ばたばた、という足音が聞こえた。


「あー疲れたー!バッサバッサ上に飛んで逃げやがって面倒くさかったよコノヤロー!」

「僕の担当よりマシでしょ……すばしっこいわ雷落とすわで本当に倒すの大変だったよ……」

「だから僕たちの中で最弱って言われてるんでしょ」

「戦いは僕の専門外なんでーすー」


 同時にうんざりした様子の少年、疲れ果てた様子の煌びやかな服を着た青年がやってきた。選ばれたグループの新入り達もぞろぞろとついてくる。


「おお、全員揃ったか。どうだった?最初に見た仕事は」


 新しい敵と戦えると喜んでいる者、これで世界のために動く事が出来ると感謝している者、反対に怯えている者、無表情な者、落ち着きなく目を走らせている者、様々だった。怯える者、落ち着きがない者に関しては、まぁそうだろうという感想がある。

 あれほどの敵を前にしたのだ、そうならない方がおかしいのだ。現に自分も怯んでしまっている。魔王と対峙した時もそんなことはなかったのに、だ。それ程までに『敵』というのは恐ろしい物だと理解していた。


「うむ、思うところは色々あるだろう。自分では力不足だ、と感じている者も心配はない!明日からの授業と特訓で必ずや欲しい力が身につく筈だ!

では今日はここまで……と、その前に」


 グディはぱちんと指を鳴らす。その瞬間、新入り達の目の前にノートと鉛筆と呼ぶには妙にパーツの多い……というか透明な……字を書く何かが降ってきて、その場に止まった。

 手に取ると同時に魔法は解け、ノートと鉛筆?

の重さが腕に伝わった。


「俺からの選別だ。今日の出来事を書くなり、明日から始まる特訓の内容を書くなり好きにすればいい。あとそのペンは上の突起物を押すだけで書けるようになるぞ。書かない時はもう一度押せ。

なくなったら事務室に来い。何も書かれていない銀色の扉が目印だ」


 そう言い残し、グディは扉を開け、その隣に立った。


「では解散!午後からは自由行動だ!

ただ間違っても今回のADGP-0235のような英語と数字のナンバーのついた部屋には入らないように!ではさっさと部屋から出るんだ!」


 言葉に気押されたようにドアを潜っていく新入り達。グディもそれに紛れるように部屋から出た。

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